第37話 ドライブはお好き二

「みんなシートベルとは閉めたか」

「「「はーい」」」

「ならば出発だ!」

重低音の響くエンジン音を奏でながら、前進していく。とてもゆっくりに……。

「何を身構えているんだ昴。駐車場では速度は出さないさ。床を擦ってしまうからな」

「ですよね。セレスシスさんの倫理が安定していて安心しました」

スピードを出していてないとはいえ、車高が低いからだろうか早く感じる。

エンジンは早くスピードを出したくて、ウズウズした感じの音が聞き取れ、運転手であるセレスシスさんを煽っているようだ。

そんな煽りにの屈することなく、あんなじゃじゃ馬を乗りこなしているだけはある。

駐車場のゲートに着くと

「昴、パスをかざしてもらえナイか。私のを使うと部屋を出たことがバレてしまう」

「それじゃあこれで」

俺はパスをセレスシスさんに渡すとゲートの機械にかざした。

ゲートはスゥーと開いていく。

「ありがとう、これで出庫できたよ」

そういうとパスを返してくれた。

外は夜の静かな秋葉原の街だ。モブのアンドロイドがウロウロしている以外は本当に静かな夜だ。

その静寂を掻き乱すように、セレスシさんの愛車であるポルシェ九一一カブレオが、重低音を街に響かせながら走行していく。

「セレスシスさんどこに向かうんですか」

「池袋さ」

「出入口は渋谷にあるんじゃないですか」

「あそこは警備が厳しいからな、緊急脱出口へ向かう」

「緊急脱出口があるなんてエレナは聞いてないよ」

「それは……お子ちゃまに教えると使いたくナルだろ……ごふごふ、席を蹴るのをやめろ、映画館だと完全にマナー違反だぞ」

座席を蹴られながら暗いでは運転が乱れないのもセレスシスさんの運転技術力があると言ったところだろうか。

「またエレナをお子さま扱いした罰だ。どこで知ったんだ」

「エレナは避難訓練サボっただろ」

「……うぐっ、たまたまその日は調子が悪かっただけよ」

「はいはい、でさ各街には緊急脱出口が設けられているわけよ」

「そうなると池袋まで行かなくても、秋葉原にも緊急脱出口がある訳ではないですか」

「さすがはララ。そうなんが秋葉原にもうあるのだが、使うと警報が鳴る仕組みになっているんだよね」

「だから少しでも遠い出口から出るのと、池袋口は車ごと出れるのよね」

「さすがセレスシスさん、酒呑な方だけでは無いんですね」

「昴まで、酒呑言わないでよ」

だれも走っていない道路を爽快に抜けて行く。

車は秋葉原を離れると国道二五四線の川越街道を走る。

電車と同じくあっという間に池袋のシンボルタワーであるサンシャイン六0の前に到着した。

本来であれば東京ドームやお茶の水女子大の脇を通って行くのであるが、空間が用意されていないため、ショートカットした形だろう。

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