第34話 軟禁場所からの脱出
「思い出話はこれくらいにして、どうやってこのタワーを抜け出すかだ。すまないが俺にはこの土地の知識が乏しい。エレナちゃん何かいい知恵はないか」
「それについてはもう手を打ってあるよ」
「まさか縄梯子で下まで行くわけじゃないだろうな?」
「ビンゴ! でも縄梯子は使うけど、そんな危ない事はしないよ……おっと想定よりも時間が掛かりすぎているから、みんな急いで縄梯子で上の階へ急いで行こう」
「おい、本当にそれでうまく行くのか?」
「説明は後で、まずはこの密室空間を出ましょう」
一抹の不安を感じるが、今はエレナちゃんが用意している手段に期待するしかない。
「誰から行く、提案者の私からでいいかな」
「いや、俺から行くよ上からみんなを引っ張り上げることができる。それに俺が下だとさっきの事があるでしょ」
「そうね。覗き魔たる昴が下にいると私たちは安心できそうにないね」
俺は言われのない覗き魔に対してエレナちゃんへ、瓦割りチョップで答える。
「痛いなぁ、冗談だってばさ。でも上から昴にあげてもらえるのは助かるな」
これで順番が決まった。
まず先に俺が上がり、次にセレスシスさん、ララ、エレナちゃんの順番で脱出していく。
俺はさっきの経験からスイスイと上の階へ上がれた。問題は初体験のセレスシスさんとララだ。
命綱をエレナちゃんに装着してもらうと、縄梯子に手お掛ける。ビル風による突風に煽られなあがらも上へと進み上階にいる俺の手を握った。
「あと少しですよ」
「見なくてよかった、下見たら激こわじゃナイの」
「本当に落ちたら洒落になりませんからね」
そう言いつつ命綱を外し、下の階で待つエレナちゃんに渡した。
次はララの番だ。縄梯子によじ登ると、銀色の髪がビル風にフワリと靡く。
「きゃー、怖いです。地面があんなに遠くに……」
「ララ、下を見ちゃダメだよ! 上を、俺を見てて!」
「……うん」
「どう怖く無くなってきたでしょ。とにかく俺だけを見てくれ、さあ行こう!」
俺は下に手を差し伸べながらララに言い聞かせるように言った。
ララは上を向きビル風に煽られつつも、一歩一歩と上の階に上がってくる。
「あと少し」
一歩一歩は少しではあるが、登るたびにララの顔が近づいてきた。もう手が届く。
「ララ、俺の手を」
「昴」
ララのか細い手をキャッチした俺は、登る速度に合わせてゆっくりと引きあげていった。
もう片方の手をキャッチした俺は、グイッとララを引き上げる。
絶対に落とすまいと思いっ切り引き揚げたため、ララがフワリと浮き上がり折り重なるように倒れてしまった。
「ララ、大丈夫か」
「うん、大丈夫……昴ちょっと……さ」
俺の上にララが乗っているのだが、顔が近い近すぎる。
ララは真っ赤なりんごのような顔を赤らめて動けないでいる。
立てない原因は俺。手を離さない様にギュッとララの手を恋人繋ぎをしていた。
「ちょっとお二人さん、いつまでイチャイチャと抱き合っているの?」
声の先であるベランダを覗くとエレナちゃんがニタニタしながら縄梯子から見ている。
カシャカシャ
突然のシャッター音がしたと思ったら、セレスシスさんがスマホのカメラで撮影をしていた。
「昴、私にも熱い熱い抱擁をしてね。それまでこの写真はとっておくからね」
「ごめん。ララ」
もっと握っていたかった手を離すと、ララはまだ赤く染めたほの状態でゆっくりと立ち上がり
「昴……あの、ありがとう」
「ララが無事でよかっったよ……」
何を話したらいいのかわからなく気不味くて、甘い雰囲気が漂う二人に水を刺してくれたのはエレナちゃん。
「さて、作戦はまだ終わっていませんからね」
「ここに匿うだけでも良くナイか」
「甘い。甘すぎるから甘い空気になっちゃうんだよ」
「甘いを連呼するなって、何が甘いんだ」
「
黒服たちのしつこさを力説するエレナちゃんではあるが、俺には疑問もある。
「例えみんなでここを出てとしても、黒服たちは来るんじゃないかい。現に俺の家にいたところを黒服たちは突き止めてきたし」
そう黒服たちは何の前触れもなく現れて、ララとセレスシスさんを拉致していったのだ。
「地球外で作られた物をすべて置いていけば、追跡は不可能よ」
「そうなると、
「一00パーセントでは無いけどある程度のは可能だわ。反応があったことも事実だけど、今回は昴の家が彩星の実家であることから、特定に至ったのでしょうね」
なるほど、地球外の反応があった場所に彩星の実家があったため、居場所の特定に繋がったのか。それであれば納得できる。
──ピンポーン
「「「!!!!」」」
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