第32話 軟禁場所への先入
一方その頃、セレスシスさんとララは、西棟に作られた仮想空間の秋葉原にある女子寮として使われている高層マンション三二階に居た。
監禁されていると言うよりかは軟禁されている状態にある。
このフロアは1室丸ごと住居になったいるため、退屈しのぎに隠れんぼができるほど広いのだ。
廊下には二四時間、女性の黒服たちに監視されている。
試しに玄関を開けると、カッカッカとヒールを鳴らして。すぐに近寄ってくる。
「買い物に行きたい」
「では、私が代わりに行ってきます」
「結構です。なら散歩に出かけたい」
「室内のフィットネスマシーンをご利用ください。もしよければインストラクターを派遣しましょうか」
「それも結構です」
玄関を出ればこんなやり取りの繰り返しだ。
どうしても二人は外に出してくないらしい。
食事は専任のコックがフロアに作りにやってくる。
もちろんコックも黒服の中から選ばれた人物なので、料理の腕だけでなく武術や銃器を装備してい抜け駆けがける隙がない。
「ララ、今日でここに軟禁されて何日目になるかな?」
セレスシスさんはソファーに寝そべりながら語りかけた。
「えっ、まだ一日ぐらいじゃないですか。はぁはぁ」
ララはエアロバイクを必死に漕いでいる。運動不足の解消するに散歩に出かけたいが、塩対応の黒服が相手では話にならない。
そのせいで仕方がないのだ。
「セレスシスもやってみたらどうかな。いい汗かけるよ」
「あぁそれパス。だって疲れちゃうじゃナイの」
「運動不足は体重の増加につながりますよ」
「だって運動したら疲れちゃうモン」
ララは困った顔をしてエアロバイクを降りた。
「三食食べて昼寝していたらぷくぷくになりますよ」
「これくらいらいじゃぷくぷくになるまで太らナイわよ。私はこれくらいじゃ太らナイ体質だしさ」
「それは羨ましい体質度だこと」
「私は汗だくなので、シャワーを浴びてきますので」
「ほほーい」
相変わらずソファーに寝そべりながら手を振っている。
ララはお風呂場に向かった。
「下着以外の着替えを忘れたけど、どうせセレスシスしかいないしいいか」
その頃、昴とエレナちゃんは、縄梯子を降し始めていた。
「高けー、三三階といえばどれくらい高いだ」
俺はベランダから下を覗き込む
「ざっと一五0メートルほどになりますね」
「一00メートル走よりも長いじゃんか」
「落ちたら一00メートル走の世界記録になるのでは」
「いやまて走ってないから、落ちてるだけだからさ」
「それはそうと、昴からどーぞ」
「じゃんけんで先頭を決めないか」
「女の子である私を先に行かせる気ですか? 昴はチキンですね」
なんかチキンと聞くと、確かにとも思う。俺よりも年下の女の子を先に行かせるのはいいのだろうか。
「俺をチキンと呼ぶな!とは言わないけど、とりあえず俺から行く」
「どうぞどうぞ」
何処かのお笑い芸人じゃないんだから。そうやって進めてくるなよ。
俺は覚悟を決めて縄梯子に手を握り締め一段一段確かめながら降りていった。
「昴、命綱を付けるのを忘れているよ」
恥ずかしい思いをしながら付けてもらった命綱のカラピナをベランダのサッシに引っかけた。
命綱をつけたとしても眼下は約一五0メートル。全てがミニチュアサイズに見える。
「昴。下を見たら恐いからさ。上を見てみたら」
「ありがとう。少しだが怖さは下がった気がするよ」
俺は上を向きつつ一歩一歩下っていく。
ある程度降ったところで、エレナちゃんが降り始めた。
上を見ていると白くすらっと伸びた足が見え、さらに下がると、スカートが風で靡くたびにピンク系の布地が見え隠れしていた。
俺は慌てて下を向いた。
「昴。下を向いたら怖くなるから、上を向か……見えたよね」
「いや、見てません……」
「見るな! 上を死んでも見るな!!」
下を見るのは怖いし仕方なく真正面を見ながら降りる事を学んだ。
「最初からこうなる事を目的にしていただろ!」
「いいえ事故だから、というか見てませんから」
『すいませんが、バッチリと見えてしまいました』
ピンク地にバックプリントでネコさんでした。
徐々に下の階が現れ始めた。相変わらず上では覗くなよと喚いたいる。
だがそんな事よりもこのフロアのどこかに二人はいるのだろうか。見え始めた三二階に注力した。
するとついに見つけた。セレスシスさんだ。ソファーに寝そべっている。
しかしララはこのリビングには居ないようだ。
こっちは苦労して、危ないおもいをしてここまでたどり着いたのにすごく寛いる。
なんか安心したのか力がふわりと抜けた。
すると、縄梯子の手を離してしまった。
────落ちる!
ふわりと体が浮き上がり重力に逆らう事なく、体が落ちて行く。
だがスグにピンと体が支えられた。命綱のお陰だ。
「昴! 大丈夫、何があったの」
「ごめん。二人のうち一人を発見したよ。のんびりしている姿を見たら、つい力がぬけっちゃってさ」
なるべく上を見ないように答えた。
スグに縄梯子に両手足をかけて、体を安定させた。
「あと少しで下の階のベランダにたどり着くよ」
足がベランダの淵に着地した。
途端意外な人物が話しかけてきた。
「よう昴。こんなところで何してるんだ。夜這いをするには少々時間が早くナイか」
「わっ、おっとと」
突然ベランダから話しかけられて、またしても縄梯子から手を離かけた。
「セレスシスさん脅かさないでくださいよ」
「悪い悪い、知っての通りここに軟禁されていルンだが、暇でいたらお前さんがベランダで暴れているカラさ」
「よく俺だって分かりましたね」
「私が渡した
「やっぱりそうなんですね」
「他にも秘密はあるが、ここで語るのは心地が良くナイだろう。よく一人でここまで来れたね、こっちへオイで」
セレスシスさんは手を出してベランダに招いてくれた。そのおかげでなんとかベランダに着地できた。
俺は再度リビングを覗き込んだ。
「あのララは一緒じゃないんですか」
「安心してくれ、ララも同じフロアにいるよ。ちょっと席を外しているだけさ」
「よかった」
俺は疲れと緊張から床にヘタレついてしまった。
「ちょっと昴。エレナのこと忘れたないでしょうね」
ベランダの外には小さな体のエレナちゃんがビル風にふからながら揺れている。
「君も一緒だったんダナ。エレナ」
セレスシスさんはそう言うとエレナちゃんに手を差し伸べていた。
「数日ぶりねセレスシス。あんたに助けられるとは思ってもみなかったわ」
「たまにはそんな日もアルさ」
どうやら二人は知り合いのようだ。
「エレナは小学生体型だカラ軽くて助カルわ」
「誰が幼児体型だって、大酒飲みババア」
「酒の飲めないお子ちゃまじゃないモンね」
「きぃーーーーー」
エレナちゃんは地団太を踏んで悔しがっている。二人はあまり仲は良くないらしい。
俺はそれよりララはどこにいるんだろうか気になっっていた。
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