第28話 この街《西棟》で二人を探せ 二
「この無の空間なら、東京二三区をすべて作ることも可能だけど、さすがに必要ないでしょってことで要所のみを作ることにしたのさ」
なんてことだ。西棟なんて外から見れば六角形の小さな体育館ぐらいしかないというのに……そんな場所に東京二三区を作れるだと。考えているだけで頭が変になってくる。
「ちなみに二三区すべてが無いとして、どれぐらい作られているんだ」
「ここの渋谷駅周辺、新宿駅と副都心周辺、池袋駅周辺、秋葉原駅周辺、東京駅周辺の五カ所」
「そんなにもあるのか」
まったくディラックの海ってどんな素材で作られているんだよ。
「全部が一分の一サイズだからリアリティも抜群でしょ。お店のほとんどは稼働しているから、この
「らしいな、ほかの街に行くにはどうしているんだ」
「空飛んだりとかいろいろあるけど、電車の山手線が便利よ。要所だけをグルグル回っているんですもの」
空とか飛べるんだ。でもなんか方法は聞かないでおこう。どっかの惑星の特許技術とか言われるといやだし。
「話は戻るが二人が居そうな場所はどこなんだ」
エレナちゃんは、顔をにやつかせて、ある場所を指した。
「秋葉原ね」
「どうして秋葉原なんだ」
「寮があるから」
ずこっとこける俺。
寮があるのが秋葉原? 拉致されたんだよな。
「一応さ、二人って監禁してるんだよな」
「だって変な部屋には連れ込めないでしょ。女子寮があるのが秋葉原だし、セオリー通りならば間違いないわ」
「渋谷やのほうが色々あって便利そうだが」
「えー、一応ここの街は出入り口になっているからね。ちなみに男子寮は反対の新宿東口です」
男子寮とが別々なのはちょっとホッとしたかも。
「それでね。秋葉原エリアの再現度がすごいの。地下には幻の帝都高速度交通営団銀座線の旧万世橋駅まであるんだよ」
「えっ、帝都? 万世橋駅? 秋葉原の地下にはそんな駅があるんだ」
「地球人も知らないのね。個々の空間はマニアックに再現されているんだから」
「さらにあの水瀬真奈美が、秋葉原勤務時代に食事や休憩をしていた屋上もいい感じで残されているのよ」
「ちょいまった、水瀬って誰のことだよ」
「まぁ、話がだいぶそれてしまったんだけど、彼女たち二人は秋葉原エリアにいるってこと」
「なるほど要するにそれが言いたかったんだな」
「ほい!」
「その秋葉原へ行こう、エレナちゃんどう行けば」
「それなら電車が早いね。山手線てやつ。銀座線もあるけど終点の浅草がバグってるのか、虚無のエリアに行ったきり戻ってこないのよ」
いきなり何言ってんだ。
「なにですその罠!」
「実は浅草エリアもあるんだけど、虚無空間の制御がうまくいってないみたいで、現在閉鎖中なんだ。だから電車も行ったきり帰ってこないの」
おっかねーなー。
「地獄行の片道運行の電車で運を試してみないかい?」
「絶対ヤダ。虚無の空間なんかに放り出されたら、人生が終わりじゃん」
「そうだよね。無駄なことはやめとこか」
エレナちゃんと俺は、秋葉原を目指すため渋谷駅の改札まで来た。
「ちょい待って、切符は買わなくていいの?」
「パスを持ってるでしょ。それがこの
「こうやってパスを自動改札の読み取り機にタッチしてみて」
ピッ、パタン。
エレナちゃんがタッチした自動改札機のゲートが開いた。
「さぁ、昴もゲートイン!」
俺も同じとようにパスを読み取り機にかざした。
ピッ、パタン。
あっさりと改札機が開いた。
実に便利なパスだ。これさえあれば、大抵のことはできてしまうのか。
ある意味便利で恐ろしいかも。宇宙人カエルがこれ手にした日には、ガンプラをしこたま買い漁っていくだろうな。
ケッロロロロロロロロ。叔父様、それって公私混同。
「昴もゲートイン完了」
ゲートインと聞くと、つい出走馬を思い浮かべてしまうがな。
ホームに着くと人はまばらだが何人かいた。エレナちゃん曰くすべてアンドロイドだそうだ。
『まもなく恵比寿、品川、東京方面の電車がまいります。危ないので黄色い線の内側でお待ちください』
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