第18話 電波天文台へ

俺は二人がいるのかを確かめるべく、電波天文台へ向かった。

だがその前に一度電波天文台内に居る、姉である彩星に電話をしてみたが、電源が切られているのか電波が入らないからなのか繋がらなかった。

連絡を取ることはあきらめ、長い長い上り坂を自転車で駆け上がる。

太陽は俺の体力を奪うかの如く、灼熱の熱波を浴びせてくる。

だが負けるわけにはいかない。二人が助けを待っているかと思うと足を緩めることは許されないし、何より一晩寝ていたことで、どこか別の場所に移されるかもしれない。そうなっては手遅れだ。

俺はもう一度ララに会いたい。宇宙のことをもっと聞きたい。ララの生まれた惑星のことなんて何一つ教えてもらってないんだ。

それにセレスシスさんも一緒だ。プラパティス星出身だって。

全く知らない惑星だ。ちょっと扱いに困る人ではあったけど、こんなことで別れたくない。

天文学者としてはすごい知識を持っていたし。教え方は丁寧で、もう一人の姉とも思う。

灼熱に耐え、ついに天文台入口と書かれたバス停に到着した。

あと少しだが、ここからは自転車を駐輪して歩いて進むことにした。

普段から関係者以外が近寄ることもない施設のため、少しでも目立つ行動は避けたい。

施設の入口近くまで来たところで、森の中に入る。

ここからは森の中を進み、入口が見まわせる場所へと向かった。

施設の出入口はガタイのいい警備が門番として立っていた。

回りを見ても有刺鉄線で施設は囲われており、素人が用意に入る隙間なんてない。

それは前回の合宿のときに知っている情報だ。

リュックの中から双眼鏡を取り出した。もしかしたら二人につながる情報があるかねしれない。

あった。車だ。あの黒塗りの高級車。ララをさらっていった入国管理局員が乗っていた車に違いない。施設の駐車場を見ると複数台駐車してあるぞ。

またもやヒントが見つかった。

あのチンピラ風の運転手が煙草を吸っている。

点と線がつながった。二人はまだこの施設のどこかにいるに違いない。


とは言え正面玄関から二人のことを尋ねても、確実にガタイのいい警備員に門前払いされる。

そうなると潜入するしかない。

どうやって。

考えろ。何か策があるはずだ。どんな施設にも弱点がある。

俺は双眼鏡で施設内を隅から隅まで探した。

有刺鉄線と施設の間には、あのウサギたちが居るだけで特に変わった様子わない。

金網をよじ登っても、警備員や対人センサーに引っかかるだろうし

怪盗ルパンの様に空から……さすがに空は飛べないわ。

俺は夢中になって施設に別の入り口がないか調べていた。

すると何か足元が暖かいことに気づく。それもモコモコした何かがあたっている。

ネコでも居るのかと思い双眼鏡を外して足物を見ると、そこにはウサギが居た。

「なんだウサギか……」

このやけに大きいウサギに見覚えがあった。電波天文台のウサギだが、なぜ塀の外側にいるのか?

しかもこのウサギ、首輪をしておりそこには懐中時計を持っている。

緊張していたからウサギを見て心が和む。

少しだけとウサギを撫でた。

鼻をひくひくしてウサギはぴょんぴょんと歩き出した。

しばらく見ているとウサギが振り返り、花をひくひくさせながらこちらを見ている。もしかしたらと思い後を追うことにした。

ウサギは有刺鉄線の塀まで来ると、突然消えていった。

驚きウサギが消えた場所まで行くと、そこには小さな穴が開いていた。

穴の先にはなんと有刺鉄線の塀に向かっているではないか。

しばらく塀の中の様子を見ていたら、先ほどの懐中時計を首に着けたウサギがぴょこんと穴から飛び出した。

これだ。ウサギの穴を使って中に入ろう。

だが大きめのウサギとは言え、穴は人が入るには少々小さい。やっと見つけた突破口ではあったがダメだ。

落胆していポケットに手を突っ込むと、ビー玉サイズの球体が入っていることに気づいた。

「これはセレスシスさんが渡してくれた球体」

ララが持っている球体とは機能が違うといっていたが、特別なことができるらしい。球体に向かって念ずることで、なんらかが機能するらしい。

まさかと思うがウサギになりたいと念ずれば……いくら何でも変身することができるとは思えないが、自動降下装置や四次元ポケット的な機能を作れるのであれば可能性はありそうだ。

俺は目を閉じ。念じてみた。強くウサギになりたいと念じた。

体が熱くなるのを感じたが、念ずることを止めることなく、さらに強く念じた。

目を開けると視界が地面すれすれと、やけに低いことに気づく。

もしやウサギになっているのか?手を見るとそこにはもふもふの白い毛並みが生えそろっていた。

セレスシスさんがくれた球体は念ずることで、物質を変化させることができるらしい。

これならこの塀を超えられるぞ!

方法を編み出したが、昼間の潜入は危険と判断。潜入するのは夜になってからだ。一度元の体に戻り夜を待つことにする。

念の為もう一度、彩星に電話をしたがやはり繋がらないや。

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