第15話 もう一人の宇宙人

思いっきり高原観光を楽しんだ俺たちは、夕食の買い物をして家に戻ることにした。

ただ、家の前に見慣れた人影がぽつんと一人立っていた。

あれは、セレスシスさんだったよな。なんで俺の家の前にいるんだろう。

「セレスシスさんどうして俺の家の前にいるんです」

「待っていたわ。ララ・スー・フォーダストリア」

「あっ、あなたは……」

「ララとセレスシスさんってお知り合い?」

「ララの到着が遅れているから心配しましたデスよ」

「……あなたは、誰でしたっけ?」

「もぉ、大学の寄宿舎で同室のセレスシス。プラパティス星のセレスシスを忘れなイデ」

「おぉ、そうでした、そうでした。お久しぶりです。セレスシスさん二年ぶりだったものでつい」

どうもセレスシスさんとララは知り合いの様子……プラパティス星?

うそだろ、あのセレスシスさんも宇宙人なのか?

地球人離れしているとは思ったけど宇宙人といつの間にか交流していたとはね。

「あの、えぇっとララ……セレスシスさんも地球人ではなく別の惑星出身だったりする?」

「はい」

「そうなんデスよ、私のスバル。私はプラパティス星出身デスね。地球には宇宙倫理学の実習のために来ましたデス」

驚愕の事実をウィンクして答えるセレスシスさん。しかしすぐに険しい顔をしてララを見据える。

「ところでララ。どうして不正入国なんてしたんデスの。入国管理局が血眼になって探していましたよ」

「それは……」

「セレスシスさん、口をはさんで申し訳ないのですが、ララにはどうも事情がありまして……」

俺はララから聞いた許嫁の話や、月の発着所で待機していた使者について、概ね話し終えたとろこ。

「そんなの断ってしまえばいいじゃアリませんか。私なんかお見合いの話がありましたが、断固拒否して地球に来ちゃいましたカラね。そしたらスバルってかわいい男の子を見つけちゃいマシたし、てへっ」

セレスシスさんは俺の腕に抱き着くが、すごく柔らかい感触が腕に当たり、何とも言えないもぞもぞした感覚が……・。

「ちっちょっと、セレスシスさん昴から離れてください!ご近所迷惑です」

「減るもんジャないし、良いではありまセンか?」

「あなたがよくても昴が困っています。それにご近所迷惑です。公衆衛生上よくありませんから」

美晴に引っぺがされ俺へのセクハラを止めて話を続けた。

「ところで、ララはこれからどうするんデス」

「それでしたら、今は俺の家に泊まっています」

「なんですって!男女一つ屋根の下に二人っきりとはいただけマセん!」

「セレスシスさん、それでしたらご安心ください。私も昴の家に泊まっていますから」

「男女二人っきりだと、色々起きそうなので、私もスバルの家に泊まります」

「あのセレスシスさん聞いてますか、私も泊まっているので安心してください」

「ララが一肌脱ぐなら、私も一肌も二肌も脱ぎマスわ。なんなら今ここで服を脱ぎマス」

「止めてください!警察沙汰になりますし、そうしたら宇宙人だってことがバレますから」

服を脱ぎだすところだったセレスシスさんを美晴が間一髪で止めて、何とかその場は収まった。

だが、セレスシスさんも俺の家に泊まると言い出し全く聞かない。

味方になるどころか「ララがスバルの家にいるコトを入国管理局に通報されたくなければ、私を泊めるコトね」と脅迫する始末。

美晴とも話し合いの結果、放置するのは厄介なことになるだろうと予測し、俺の家に女性が三人も泊まることになった……。

「もう、どうにでもなれ!」

頭を抱えつつ、時は過ぎていくもので、あれこれしているうちに夕食の時間になる。

今日のメニューは、豚の生姜焼きに、ポテトサラダ、コロッケ、みそ汁と、セレスシスさん発注?の枝豆の塩ゆでと、イカの塩辛、ポテトフライが食卓に並んだ。

どうやら飲む気満々らしい。

「私が取り出したるは、知る人ぞ知る武蔵野の名酒“毛呂美酒もろみしゅ”デスね」

俺の家に来るまでは手ぶらだったのに、どこから持ち込んだのかこの一升瓶。

ララが持っていた四次元ポケット的な球体をセレスシスさんも持っているのだろうか。たしか毛呂美酒もろみしゅってい言ったっけ?武蔵野と言えば埼玉と東京の一部を指していたような……米所とは縁遠い地域に名酒があったんだね。未成年だからどうでもいい情報だけどさ。

「早速一杯!ぷはぁ、おいしいデスね」

上善如水じょうぜんみずのごとしの様に透き通った飲みやすいのど越しと、純米酒ならではの安定感ある飲み応えはさすが毛呂美酒もろみしゅデス」

俺たち未成年組三人は、セレスシスさんがまたもやどうやって持ち込んだのかわからない、一升瓶に入ったぶどうジュースを飲んでいた。山梨県民なら“ぶどう液”という呼び名で普通に飲んでいるんだけどね。

「この酒おいしいから、スバルも飲もう!」

「だめです。昴は未成年ですから、やめてください」

「えぇーいけずぅ、ほんじゃララならいいよね。一緒に飲もうよ」

「私も未成年ですからお酒は遠慮しておきます。それにこのぶどうジュースってすごく濃くておいしいですよ」

「むぅ、みんなしていけずぅ。いいよいいよ一人で一升全部飲んでやるんだから、分けてって言ってもあげないんだカラね」

「「「結構です」」」

こうしてセレスシスさんの一人酒盛りは、夜遅くまで続くのであった。

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/my/news/16817330662591504198

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