第13話 ララって宇宙人!?

翌日、食欲をそそるいい香りとともに起きた。

ご飯が炊ける香りに、優しいみそ汁の香りとだしがこんがりした香りが漂う。

これはだし巻き卵だろうか。朝に嗅ぐ和食の香りはなんとも心地よい。

こげのにおいに混じって脂っぽい香りまでした。アジの開きの干物が冷蔵庫にあったから、それに違いない。

ウキウキしながら一階へ降りると、美晴とララがキャッキャと女子トークを繰り広げていた。

この中に入るのはこっばつがしいが、勇気をもって扉を開く。

「おはよう」

「「おはよう」」

二人は同時に答えた。二人とも昨日の部屋着にエプロン姿と、着替えは済んでいないらしい。

「昴、完全に寝起き顔だね。顔を洗ってらっしゃい、もうすぐ朝食だよ」

俺は「ふぁーい」と気の抜けた返事で答え、洗面所へと向かった。

その後も女子トークは続けられた。

「「「いただきます」」」

三人が席に着き朝食スタート。朝起きたときに予測した通り、白いご飯に豆腐とわかめの味噌汁、だし巻き卵、アジの開きと完全無欠の和食だ。

「さすが美晴料理長。今日もおいしいご飯をありがとう」

「今日は手間をかけて、普段はやらない出汁を取るところからやってみたんだよ。一番出汁は卵焼きにして、二番出汁はお味噌汁にするの。どう、一味も二味も違うでしょ」

前のめりになって自慢げに話す美晴。

「出汁って大切なんですね。出汁を入れる前と後では味が全然違ってしまうんですもの」

「そうなのララ。出汁を甘く見てはだめなの、和食は出汁で決まるといってもいいわ」

いつになく力説する美晴は料理名人だと思う。

「でさぁ、今日はこれからどうする?」

お味噌汁を啜りつつ答えた。

「そうだな。ララの目的地だが、もう少し詳しい話を聞きたいんだが」

「私も地球ここへの旅行はほとんど初めてで、入国をしなければなせないらしいのです」

「ふむふむ、ということは今のララは密入国者ですな」

「……密入国者。となると私は犯罪者なのでしょうか」

「美晴、物騒なこと言うなって。厳密にいえばそうなってしまうかもしれないって仮の話で」

すでに泣きそうになるララ。

「おお、そうだ。パスポートとか持ってないか、それがあれば大使館に行って事情を話せば何とかなるかも」

「冴えてるね昴」

「パスポート……ですか?」

「外国に入るときに自分や国を示すことのできる物だ。もってないか」

「う~ん、それならこれはどうでしょうか」

ララがポケットから取り出したのは、ビー玉サイズの球体でできた美しい玉だ。

「ビー玉?だよね」

「いえいえ、自分を証明できるものと言えばこれしかないです。結構大事なものなんですよ」

ビー玉を眺めて?する二人を横目にララは、呪文のような言葉をつぶやいた。

するとビー玉は輝きだし、何もない空間に映像を投影した。

「うぁ」

「なにこれ、すごい」

ビー玉から照射された映像には、何語だかわからない言語が書かれており、ララの写真も入っている。恐らくララについての情報と、本人の顔写真を入れた個人情報だと推測される。

「もしかて、ララの本人確認書類ってやつかな」

「あぁ、そうですそうです。それになります」

最新型のパスポート?なのだろうか。

「紙以外のパスポートなんて初めて見たよ。すごいね昴?」

これはパスポートどころの騒ぎではない。現代の科学はこのようなものは見たいことがない。

それにこの言語は何語だろうか、フランスやロシア、ヘブライ語?とも違うし、アジア圏でも使われている感じがしない。

「ちなみにララはこれを読めるんだよね」

「そうですが……あっここが名前で……ここに住所や生年月日はこちらです」

空間に投影された映像に指をさしながらスラスラと答えていく。

「次のページは行った外国に関する記述になります」

スマホのスワイプの様な動作でページをめくった。

「これが火星に立ち寄った際のものです」

「「火星!?」」

俺と美晴は驚愕した。今、火星とかって言っていたよな。

「もう一度聞くけど、このスタンプみたいな模様は火星に行った際に着けたものなのか」

「はいそうです。それが何かしましたか?」

ララは不思議そうに二人を見つめていた。

ちょっとまて、待てよ。ララは火星に行ったって言うことなのか。

「火星なんてどうやって行くんだよ」

「それでしたら、定期便の惑星間光速旅船プラネットライトニングボヤージュに乗りました」

なんだその惑星間なんちゃらって。聞いたことがないぞ。

「昴も美晴もぽかんとして、どうかしましたか?」

そりゃぽかんともするさ、だって宇宙から来たんだぜ。俺はてっきり外国から来たとばかり思ってたわ。

「ララってさ……・もしかして外国は外国でも宇宙から来たの……かな?」

「うーーん、そうなりますね」

「えぇっーー!!」

美晴は近所にも聞こえんばかりに発狂した。


驚愕の事実が今朝になって発覚してしまった。

ララは地球外知的生命体だというのだ。

落ち着いて話を聞くとララの母星は、地球のちょうど真裏にある軌道上に存在しているらしい。

いわゆる反地球ってやつだ。しかし反地球理論はケプラーの法則や制限三体問題の直線解によって存在されないとされていたが、この理論が間違っていたことになる。

しかしララがこうしてここに居るのも事実、今の科学では解明できない天体現象があったとしても不思議ではない。

「あれもこれも聞きたいけど、まず火星について聞いていいか?」

「私も詳しくは知らないですよ。地球ここへ向かう便のトランジェットとして三日間しか滞在しませんでしたし」

「地球へ向かうトランジェット?ってことは地球ここ行きの便があるのか?」

「火星以外にも土星とか木星にも地球ここ行きの直行便がありましたよ。私が行くのには火星経由が一番早く着く日取りだったので、火星観光したかったわけではないんです」

「スケールが広大きすぎてわけわからん……」

「?」

ララは不思議そうに俺を見つめていた。

「私ってば何か変なこと言ってしまいましたか?」

「ごめん、整理が追い付かなくて……」

もう一度まとめると、地球の裏側にララの母星があり、地球へ向かうためには、どこかの惑星を経由して旅をする必要がある。

ララは火星を経由して地球への定期便で向かったってことか。

「なんとなく状況はわかった。ララは我々からしたら宇宙人でいいんだよね」

「うーーんと……そうなりますかね」

天使だと思っていた美少女ララは、宇宙人で……俺の混乱とは裏腹に美晴は楽しそうだった。

「いいなぁ、宇宙旅行か。地球人なんて月までしか言ったことないんだよ」

「月って地球環周回している衛星でしたよね」

「昔なんだけど、月へ行った宇宙飛行士が居て、当時はすごかったらしいよ」

美晴が話していたのはアメリカのアポロ計画。アメリカ航空宇宙局が月へ人類を送る計画で一一号にて初めて月面に降り立った。計六回の月面着陸を成功させ一二人が月面に降り立った。

最近でも各国が月面への有人飛行が計画されているらしい。

「その“月”でしたら地球への定期便の発着地になっていますよ」

「「なんですって!?」」

驚愕の俺と晴美は言葉が出ない。人類ってこんなにも遅れているのか。。。。

「あっ、でも月の発着所は、地球側と共同開発で用意したって話ですよ」

またしても爆弾発言。

「地球との共同開発?」

「私も詳しくは知りませんが、地球に直接発着所を作るよりも検疫とかしやすいよう衛星にて行うのは、他も惑星でもよくありますし、それに倣ったみたいですよ」

前言撤回。人類は遅れているのではなく、俺らの知らないところで宇宙人をちゃんとコントロールしているんだな。

「そうであれば、ララは月で地球の検疫も済んでいるんだろ」

「それが……私お尋ね者でして……月で私が来るのを待機している輩が居ると情報を入手しまして、惑星間光速旅船プラネットライトニングボヤージュを抜け出してきたんです」

お尋ね者……ララが?この天使なような美貌のララがお尋ね者だって。

俺は聞き間違いかと疑ったが、事実のようだ

「はい。私は捕まってしまうと、どこにも飛び立てない鳥の様にかごに入れられてしまうのです」

「そうはいっても犯罪者をかくまうわけには……」

「美晴。私は咎人ではありません。実はお家の事情なんです。もうすぐ許嫁と言いましょうか、見も知らない人と結婚させられてしまうんです!」

ララは今にも泣きそうになり、俺と美晴の手を握りしめ懇願してくる。

「事情はなんとなく分かったわ。無理やり結婚させられるから地球逃げてきたってことね」

「はいそうなんです」

「お家のためとはいえ、強引な結婚は私が許さないんだから!」

美晴さん、相手は宇宙人なわけで、そう簡単にはいかないのでは、と思ってはいたがやる気満々な状態を見ていると引くに引けませんな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る