第12話 ララと幼なじみ 五

お風呂事故の誤解が解けたのか?わからないまま夕食は終了し、話題は寝る場所へと移った。

「さてと、夕食も済んだことだし、寝るところだけど昴の部屋の隣って、まだ空いているよね」

「もちろん。あそこの畳部屋は客間として空いているよ」

「あの部屋に泊まるの久々だわ。幼稚園のとき以来だったような……」

「たしかにそうかもね……家が近所だし」

「ねぇ昴。あの時って私と昴の二人だけじゃなかったような気がするんだけど」

「俺も同じこと考えてた。もう一人いたような気もしなくない……だけど思い出せない」

先日、キーマカレーを食べて時に父親から昔のことを聞かれたときから、何か引っかかることがあっても思い出せないでいる。

幼稚園の時、美晴ともう一人誰かいたような……。たしか女の子だったかな。

「──る、昴ってば聞いてる?」

「ごめんごめん、なんだっけ?」

「私が掃除して布団を敷いてこようかって話だよ」

「あぁ、それなら俺にやらせてくれ。ご飯も作ってもらったしこれくらいは任せてくれ」

「じゃあ、私は食器を片付けておくわ」

「美晴。私も手伝いますね」

三人は分担して準備に取り掛かった。

俺は客間に布団を敷くべく二階へ上がる。階段を上がるとすぐに姉の彩星、隣に俺の部屋があり一番奥に客間の順番に並んでいる。

客間というぐらいだから普段は誰も使っていないわけだが、洗濯物を干すベランダへの入口にも使っているため比較的きれいに保たれている。

なので掃除と言っても軽く掃除機をかけておくぐらいにしておく。

二人分の布団を敷き終わるとララが入ってきて部屋を見回す。

「昴。布団終わりましたか?わぁ、ここも懐かしい感じがします!」

そういえばララは玄関を入った時から、この家を懐かしがっていたな。

初めて来たはずなんだが、

「御覧の通り敷き終わったよ。なあ、ララは家に入ってきた時から懐かしい言ってたよね」

「えぇ……そう言えばそうですね」

「もしかして、うちに来たことがあるのか?」

「いゃ、わからないのです。昔のことは思い出せなくて……でも、なぜか懐かしい感じがするんです!」

この家なんて日本全国のどこにでもある日本家屋と大して変わりはない。

昔に一度だけ来たララにはとっては、もしかしたらどの家も懐かしく見えるのかもしれない。外国に行って田舎の風景を見ると、懐かしく哀愁を感じるのと同じなのかもしれない。

「そのうち思い出すよ。俺だって幼稚園のことのことなんてほとんど覚えてないしさ」

「ですよね。そのうちに……そうだ美晴がゲームでもしようって言ってました」

「ゲームいいね。まだ八時で寝るには早すぎるから、ちょうどいいや」

俺たちは客間の電気を消し、リビングへと向かうのだった。

美晴が用意したテレビゲームは、赤と緑のブラザーコンビとゆかいな仲間たちがレーサーになるゴーカートレースゲームだった。

ララは初めてプレイするゲームと言っていたものの、最初はビリであったが、もちろんここでも器用なプレーが輝いて、終盤はぶっちぎりの一位を連発するのであった。

これもビギナーズラックってことでいいのかな?

「ララってコツをつかむと強すぎ、あそこでカメを投げてくるとかもう無理!」

「まぐれですって、選ばれるアイテムはランダムなんですから」

「ここまで来たらビギナーズラックの域を超えてるぜ」

その後もリベンジしたが二人とも完敗であった。ララ、この子ったら恐ろしい。

時間は二三時を超えたためゲームは一旦終了し、明日の行動も考え寝ることにした。

ララは「三人で寝ましょう。なんか学校の旅行みたいで楽しそうですよ」とか言ったが、さすがに美晴は「男女七歳にして席を同じゅうせず」として止めた。

俺もどこまで自制心を保てるかわからなくなるので、丁重にお断りすることにした。

当の本人は不服のようではあった。

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