第11話 ララと幼なじみ 四

お風呂から出てきた二人はしっかりと茹で上がり、白い肌はほんのり桃色を帯びて、うっすらと漂う湯気からは甘い香りを漂わせる。

これは入浴剤やシャンプーの香りだけではない、女の子独特の甘い香りは、俺の鼻孔を刺激し、同時にある部分へと血液が集まりだしていくのを感じた。やめろ自重してくれ俺の体。

二人とも部屋着姿に着替え、美晴は薄手のネコ柄Tシャツに短パンからは健康的な美脚とともに、ピンク色の着圧引き締め効果のあるオーバーニーを履いている。合宿時よりも露出が高く、生地も薄いため、下着のラインがまでもがすけてしまって、男心も体をも刺激してくる。目のやりどころが辛い……。自重にも限界が……。

一方のララは、美晴が持ち込んだ半そでシャツにファンシーなクマがプリントされた幼げなパジャマ姿。

体の凹凸が少ない分、プリント柄も相まってロリ成分がさらに増され、そっち系お兄さんならば、『俺の妹、マジ最強!』と絶叫しているに違いない。

ツインテールでわからなかったが髪の毛を下した姿は、腰をも超えるピンクロングヘア。まるで塔の上に幽閉されていたお姫様を思わせるとほどに長い。

俺は目の保養には十分すぎる美少女たちの夕べを堪能していたが、美晴だけが俺を見るときだけ不機嫌でジト目でこちらを見ている。

悪気がなかったとはいえ、少し見てしまったものは事実だし、誤っておくか。

「さっきはごめん。本当に悪かった。ただしこれは事故なんだ」

「ほんとかな?」

美晴の疑いの眼差しをこちらに投げかけるが、その状況をララが救ってくれた。

「昴は私たちのためにお掃除してましたよ。美晴だから許してあげましょうよ」

「うぬぅん、ララがそういうなら……いいけど、もう絶対にダメなんだからね。次こんなことしたら、私お嫁に行けなくなっちゃうんだからね!」

またしても泣きそうな顔をしているがジト目は変わらない百面相。。

「本当にごめん。金輪際、美晴がお嫁に行けなくなるようなことはしません」

「うぁん、そうなんだけど、そうじゃなくて……覗きはしない以上。終了」

美晴は頬をパパンと叩くと、吹っ切れたかのようにエプロンを取り出す。

「さぁ、夕ご飯の続きをするから、昴もお湯が冷めないうちにお風呂に入ってきてよ」

「そうだな、折角だしそうさせてもらうな」

美晴に笑顔が戻りホッとして風呂へと向かうことができた。百面相な幼なじみを持つと大変だ。

事故は言えど美晴を傷つけてしまったことは事実として、好きなアイスである雪見だいふの期間限定イチゴ味でも買ってきてやるか。あれは裏返すとハートの形をしているの知ってた?

改めて湯船に入ると思うことがある。このお湯は二人の入った後のお湯だと考えてしまうと……まてまて、それ以上はやめとけ自分。この先を想像してしまったら待っているのは変態街道しかないのだぞ。自重。

俺の入浴が終わったところで夕食タイム。二人とは対面で座る配置になった。

風呂上がりからしばらくたってはいるが、微弱に残る熱気から二人分の甘い香りが、テーブルの反対からでも漂って、くらくらしてしまう。

それに負けじと料理のおいしそうな香りもリビングに混じってきた。

今日の夕食はビーフシチューにポテトサラダ、ロールパン。美晴の作るビーフシチューは、得意料理で実に逸品だ。

「いただきます!」

早速、熱々のビーフシチューをいただくとするか。

圧力鍋で調理しているから、スプーンでジャガイモやニンジンも切れてしまうほどにしっかりと煮込まれている。しかもお肉は贅沢に厚切り牛タンではありませんか。

美晴曰く冷凍庫にあったらしい。うちの冷凍庫はいつの間に高級食材を入りておくようになったのだ。

牛タンを口に頬張ると、ホロホロに溶けた牛タンは噛まなくても舌の上で崩れるほどに柔らかい。

「おいしい、さすが料理長の美晴」

「美晴って料理がお上手なんですね。私なんてほとんど見ているだけでした」

「そんなことないよ。ララにはサラダまかせっきりでしたし、このマヨネーズは手作りなんだよ。ララの地元の味で、日本のマヨネーズよりもコクがあるのね」

「二人ともすごい、料理の天才だね。お嫁さんになったら絶対に喜ばれるね」

「おっお嫁さんだなんて──」

「なんだか照れますね」

二人とも顔を赤く染めてあたふたしている。俺、変なこと言ったかな。

「昴は時々ずるいよ……」

「そうですね。時々ずるいの……わかります」

「はぁ、すみません。なにか時々ずるくて」

俺は訳もわからず謝るしかなかった。ずるいのはともかく、さっきのお風呂の出来事をまだ根に持っているのか。困ったな。

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