『敵強化』スキルを笑われて幼馴染に置いていかれた俺のレベルが有頂天でおさまる所を知らないので、助けたケモミミ美少女奴隷とイチャイチャしながら迷宮の最深層目指すことにした＿神魂のニルヴァーナカクヨム版

４の４１「戦士たちと門」

「俺たちが……？」

「キミたちは強い。そうだろう？」

「……神殿騎士たちのレベルは？」

　ミツキがニトロに尋ねた。

「高い者で８０といったところだ」

「なるほど」

「力を貸して欲しい。頼む」

「分かりました。俺で良かったら」

　ヨークは快く、ニトロの頼みを引き受けた。

　ヨークにとって、ニトロは命の恩人だ。

　それに事態は深刻なようだ。

　解決しなくては、多くの人に被害が及ぶ。

　放っておくことなどできない。

「ありがとう」

「鍵は？」

　ミツキが疑問を口にした。

　それに対し、ニトロは少し驚いた様子を見せた。

「えっ？」

　ミツキは質問を続けた。

「ラビュリントスの９９層には、

　鍵のかかった門が有る。

　神殿側は、それを把握しているのですか？」

「知っているよ。

　……実を言えば、大神殿は、

　迷宮をほぼ踏破している」

「団長……」

　サッツルが口を開いた。

「部外者に、そこまで話してしまって良いのですか？」

「ここでごまかしを言っても、

　良いことは無いさ。

　彼らの力は、迷宮の完全踏破に不可欠だ」

「申し訳有りません。

　私たちが、ふがいないばかりに……」

「話を続けても？」

　ミツキがそう尋ねた。

「どうぞ」

「あの門は、何なのですか？」

「封印……なのだろうね。

　あの門の奥に、最も邪悪なものが封じられている。

　そのはずだ」

「そうですか。それでは……。

　あなた方は、鍵のありかを

　把握しているのですか？」

「うん。

　実は既に、鍵を貸し出してもらう手はずは出来ている。

　だから、その辺りについては、心配しなくても良いよ」

「分かりました」

「それじゃあ、編成を発表する。

　私、……少年、ミツキ、

　サッツル、リドカイン、聖女トトノール、

　それと、大賢者様。

　この７名で迷宮を攻略する」

（大賢者？）

　ヨークの心中に、疑問が浮かび上がった。

　ヨークがその疑問を言葉にすることは無かった。

「準備が整いしだい、出発する。以上だ」

「待って下さい！」

　サレンが、なかば叫ぶように言った。

　その声には、抗議の色がこめられているようだった。

「何かな？　騎士サレン」

　ニトロは父親としてでは無く、騎士団長としての顔でサレンに尋ねた。

「たった七人で、深層に潜るというのですか？」

「そうなるね」

「お願いです！　私も連れて行って下さい！」

「ダメだ」

　ニトロはきっぱりと言った。

　そこに肉親への甘えは無かった。

「っ……！」

「邪悪なものとの戦いは、熾烈を極めるだろう。

　悪いが、未熟な者を連れて行くことは出来ない」

「そんな……」

　戦力外だと断言され、サレンは落ち込んだ様子を見せた。

「私は？」

　クリーンが発言した。

「私はヨークと一緒に、

　深層まで行ったことも有ります。

　足手まといにはならないと思うのですが」

「キミは聖女だ。

　杖が無い今、王都にとって、

　キミが最後の希望だ。

　そんなキミを、危険な戦いに連れて行くことは出来ない」

「……そうですか」

「指を咥えて待っていろとは言わない。

　キミたちには、大階段から魔獣が溢れないように、

　警備をしていて欲しい」

「……分かりました」

「さあ、戦いの準備を始めよう」

（なんだか急に、でかい話になったな）

　ヨークはそう考えた。

　クリーンと一緒に、試練を受けていただけだ。

　それが急に、大きな話になってしまった。

　重大な、王都の危機のはずだ。

　だがヨークは内心では、他人事のような気分を捨てきれなかった。

　ふわふわとした気持ちのまま、ヨークは戦いの準備を始めた。

　……。

　準備期間を経て、ヨークたちは、大階段の有る広場に向かった。

　迷宮を攻略する六人が、大階段前に集まった。

　一行の中でサッツルが、大きめのリュックを背負っていた。

　アイテムの用意は万端らしい。

　ニトロは普段とは別の剣を背負っていた。

　階段の周囲には、サレンたちの姿も見えた。

　神殿騎士の何割かは、大階段の周囲を見張ることになっていた。

「お父様。どうかお気をつけて」

　出発するニトロに、サレンが声をかけた。

「……うん」

　短い親子のやり取りの後、ニトロは階段に足を向けた。

　ヨークたちも、その後に続いた。

　階段に向かうヨークを、クリーンが呼び止めた。

「ヨーク！」

　クリーンの表情は、少し苦しげだった。

　死地に向かうヨークのことを、心配しているのだろう。

「……悪いな。一緒にあの扉の先を見られなくて」

「別に……そんなこと……。

　絶対に、生きて帰って来るのですよ！」

「ああ。約束する」

「絶対に、絶対ですからね！？」

「分かってるよ」

　ヨークは軽く手を振りながら、階段を降りていった。

「よろしく頼むぜ。ハーフのにいちゃん」

　大階段を下りると、神殿騎士の一人が、ヨークに声をかけてきた。

　体格の良い男で、肩幅も身長も、ヨークより上だった。

　その四肢は、がっしりと太い。

「えっと……」

「リドカインだ。

　一応、聖女の試練にも居たんだがな」

「イーバさんの、守護騎士をしていた方ですね？」

　ミツキがそう言った。

「ああ……そういえば……」

「レディスとの戦いは、見事だった。

　頼りにしてるぜ」

「がんばります」

　ヨークはかしこまって言った。

「ニトロさん」

　ミツキがニトロに声をかけた。

「何かな？」

「パーティは七人と聞いていましたが、七人目は？」

　今、パーティの人数は六人だ。

　ヨーク、ミツキ、ニトロ、サッツル、リドカイン、トトノールの六人。

　ニトロが言っていた七人には、一人足りない。

「大賢者様には、重要な仕事が有ってね。

　あとで合流する」

「分かりました」

（そもそも、大賢者ってのは何だ？）

　ニトロに質問してみようか。

　ヨークがそう考えた、そのとき。

「ヨーク」

「ん」

　ミツキに促され、ヨークは前方を見た。

　そこに魔獣の姿が見えた。

　赤狼だった。

「グルル……」

　気のせいか、ヨークの目に映る赤狼は、いつもより迫力が増して見えた。

「『戦力評価』」

　ヨークは魔剣を抜刀しながら、スキル名を唱えた。

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赤狼　レベル１０１

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「レベル１０１」

　ヨークは赤狼のレベルを、パーティの仲間に知らせた。

「マジかよ！？」

　リドカインは、素直な驚きを見せた。

「『聖域』を……」

　トトノールは『聖域』を広げ、赤狼を弱らせようとした。

　そのとき。

「氷槍」

　ヨークが放った魔術が、赤狼を貫いていた。

　氷の槍が、一撃で赤狼を葬り去った。

　後には魔石が落ちた。

「えっ……？」

　トトノールは絶句した。

「はい？」

　ヨークはトトノールを見た。

「お強い……ですね」

「まあ、鍛えてるので」

「レベルがヤベェ上がったんだが」

　リドカインが言った。

　次にサッツルが口を開いた。

「……同じく」

「これは頼もしいね」

　ニトロがそう言った。

「しかし、赤狼がレベル１０１か……。

　聖女の杖の力が無いと、

　こんなことになってしまうんだね。

　１体でも王都に溢れ出せば、

　甚大な被害が出る。

　これは一刻も早く、

　迷宮を踏破する必要が有るね。

　最短ルートで、最深層まで行こう」

「走りますか？」

　ヨークが尋ねた。

　それに対し、ニトロは気乗りしない様子を見せた。

「あまり急ぐと、

　後衛が奇襲を受ける可能性が有るけど……」

「氷狼、六連」

　ヨークは地面に魔剣を向け、呪文を唱えた。

　そして、氷狼を６体出現させた。

「こいつらに、周囲を守らせましょう。

　これで奇襲を受ける確率は

　減るはずです」

「分かった。走ろう」

「はい」

　ニトロの言葉にサッツルが頷いた。

　ニトロは言葉を続けた。

「治癒術師であるトトノールさんを、

　起点にして動く。

　少年とリドカインは、トトノールさんの前。

　ミツキとサッツルは後ろに立つこと」

「分かりました」

　サッツルがニトロに答えた。

「各自、彼女との位置関係を意識して、

　離れ過ぎないように」

　パーティの中で、神殿騎士たち三人のクラスは聖騎士だ。

　ミツキも同様なので、パーティに聖騎士が、四人居るということになる。

　ヨークは魔術師だが、周囲には暗黒騎士だと思われている。

　つまり認識上は、前衛が五人、後衛が一人のパーティとなっている。

　後衛は打たれ弱い。

　前衛が守ってやる必要が有る。

　それに足が遅いので、前衛が全力で走ると、置いていかれてしまう。

　トトノールのフォローが、このパーティの肝だと言えた。

「了解！」

　リドカインが、威勢よく答えた。

「出発！」

　ニトロの号令を受けて、一行は走り始めた。

　各人がトトノールに意識を向け、彼女から離れないように走った。

　……。

　９９層にたどり着いた。

　大量の魔獣と戦闘したが、大事には至らなかった。

　六人は、ほぼ無傷のままだった。

「おまえ、レベルいくつ？」

　リドカインは軽い調子で、サッツルに声をかけた。

「１９１です。あなたは？」

「１９３。俺の勝ち」

　深層の魔獣は、レベルが２００近く有った。

　神殿騎士たちにとっては、荷が重い相手だった。

　だが、ヨークとミツキのレベルは、３００を超える。

　ヨークたちが魔獣を倒すことで、神殿騎士たちはレベルアップしていった。

　神殿騎士たちは既に、深層の魔獣と、互角以上に戦えるようになっていた。

「前衛の方が、

　ＥＸＰを吸いやすいというだけでしょう」

「勝ちは勝ちだぜ」

「ヨークさんのおかげでしょうが」

「……まあな。

　けど、無事に帰れたら、

　騎士団の連中に自慢出来るな」

「そうですね。無事に帰れたら」

　そう言って、サッツルは前方を見た。

　六人の前に、大きな門が立ちふさがっていた。

　その姿は、前にヨークたちが訪れた時と、変わりが無いようだった。

「あの先に……邪悪なるものが……」

　真剣な顔つきで、トトノールがそう呟いた。