シングルルーム

僕は、君に抱かれた。

酔いにまぎらわせて(これくらいの言い訳は許してよ)。君を僕の中に受け入れた。

僕を見知らぬ赤の他人だとしか思ってない君を。僕の奥深くまで。


裸でベッドにもつれこむなり君は、強引に僕の体の鍵をこじあけようとしたね。

それが僕の望みだと決め付けてるように。それを僕に思い知らせようとするように。

僕も、そう思い込もうとしたけど。

君の乱暴な抱擁を悦んでみせようとしたけど。

自分自身ですら知らない内側をさぐられることは、予想以上に衝撃だった。

アルコールで弛緩しかんした体にさえ。


僕のぎこちない身じろぎで、それが僕にとって初めての行為だということを、君はすぐに察した。

一瞬の戸惑いの後の君の愛撫は、とても優しく、辛抱強かった。

君に身を任せて。貫かれる苦痛を快感が乗り越えるのに、僕は、ただひととき歯を食いしばれば良かった。


僕の内側を調べつくすような丹念さでじっくりと……

その紳士的な緩慢さにじれて、もどかしさを覚えるほどに僕が溺れるまで、あっという間だった。

僕は、あっという間に溺れた。君に。君の熱、君の愛撫、君の吐息、君のキス……


13年前より、ずっと長くて深くて。メマイがするほど淫靡なキス。

とろけそうな甘さは13年前と同じ……


だから僕は、忘れてしまったんだ。

君が、「あの日の君」じゃないことを。

君が僕のことを忘れてるってことを。忘れてしまって。

夢中で君にしがみついて、

「君はひどい。僕はずっと君を想ってたのに。想い続けてたのに。君はひどい。ひどい」

ウワゴトみたいに何度も何度も。ひとりでに唇からあふれ出た。とめどなく。


君にとっては意味不明な僕のとりとめのない陳腐な繰り言をあやすように、君のキスは熱を増した。

もつれあう肌がドロドロに溶解して、焼けつくようで。

僕と君は、このまま繋がりあって離れられなくなるんじゃないかなんて。

恐ろしい妄想? ううん、このうえなく甘美な夢想。僕にとっては。


僕の中で弾ける君にシンクロする瞬間、僕は、このうえない満足感に包まれて。

そのまま、甘美な夢想と溶け合うように、意識をうやむやにした。

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