第5話・オフクロの悩ましき日常(18歳未満・閲覧OK)

「あっ……待って、アニキ! そこは、触っちゃ……ダメっ」

 兄のすべらかな長い指で敏感な部位をつままれて、真司は思わず鼻にかかった吐息をもらした。

「そんなに広げたら……っあ……っん」


 敦司は、怜悧れいりな頬にフッとツヤヤカな微笑みを浮かべて、アデヤカに色づいた肌を執拗しつよういじる。

「引っぱって広げなきゃ、中に入れられないだろ? 真司のアナは小さいんだから」


「だ、だって……! ふぁ……っんぅ」


「もう、先っぽが入っちまったぜ。……痛い思いしたくなかったら、じっとしてろよ」


「ちょっ! そんな、急に……っ」


「ほら、動くなって。……ちゃんと、良く見せろよ」


「あ……っん……ヤダっ……汚いから……」


「大丈夫。キレイだよ、スゴく……ほら、奥まで突っ込むぞ」


「はぁ……っ……あ……っん」


「ココか? ココが、気持ちいいのか?」


「ん……。スゲェ……いいっ……ん」


「もっとコスってやるからな」


「ア、アニキぃ……先っぽのトコが奥にひっかかって……もう、たまんねぇ……早く……っ」


「待ってろ……もう少し……」


「あっ、あっ、あっん……スゲぇ、コスれてる音がする……っ……も……早く出して……ぇっ」

 真司は、切なく声を震わせて、必死で兄にネダった。



 その瞬間、リクライニングチェアーに腰かけながらミルクをタップリ加えたクイーンメリーをたしなみつつ膝の上に開いたファッション誌を眺めていた上泉家かみいずみけの夫人は、お気に入りのオールドノリタケのカップをソーサーに叩き付けるように「ガチャン!」と置くと、大声で叫んだ。

「ちょっと、アンタたちっ! 耳カキは、自分たちの部屋でやんなさいって、いつも言ってるでしょ!!」



「えー? 別にいいじゃんかよぉ」

 兄のヒザを枕にしてソファに横ざまに寝転んでいた真司は、ダラダラと身を起こした。

「チェッ! もうちょっとでデカい耳カスが取れそうだったのに……また奥にもぐっちまったじゃん」

 ハデに舌打ちしながら、小指の先で耳をほじくる。


「いいから、もう二度とママの前で耳カキはしないでよっ!」

 上泉夫人は、次男坊の真二に面影の良く引きつがれた華やかな白い顔を真っ赤に上気させてしかりつけた。


「はぁー? 意味わかんねーよ、……クソババァ……」

 語尾はコッソリ声をひそめてブツブツとボヤきつつも、真司は、兄をせかして素直にリビングルームを出て行く。


 1人残った夫人は、ティーサーバーに残った紅茶をカップに注ぎ足してズズズッとすすりつつ、フーッと長いタメ息をついた。

「まったく……どうして、ウチのコたちの耳カキは、あんなにもイカガワしいのかしら?」



 だが、夫人は知らなかった。

 母に追いたてられ2人っきりで兄の部屋にこもった兄弟が、耳カキなんぞソッチノケで、もっとイカガワしい行為にフケるに違いないことを。

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