第46節 お互いを知れば相手を信じられる【FW11 松下湊騎】

元々もともと、監督はミーティングが好きみたいで、毎日の練習の他に、雨の日とか、試合前、試合後、とにかくよくミーティングをやった。

試合のことを振り返ったり、相手のスカウティング(分析ぶんせき)の話だったりもあるが、たまにそれぞれに意見を言わせたり、何人かで話し合いをさせたり、ゲームしたり、内容は多岐たきにわたる。


試合の話ならまだしも、自分の意見を言うとか正直しょうに合わなくて、面倒めんどうだと感じていたこともあった。ボールをっている方が数段楽しいしな。早く練習始まんねぇかなぁ、なんて思ってた。


でも自分が3年になった時、見え方が一気に変わった。

話をしてみることで、みんなのそれぞれの個性が見えてくる。特に、普段ふだん遠慮えんりょして話さない1年生とか、こいつ結構しっかりした考え持ってんなーとか、話してみると気づくこともある。


そして相手のことがわかってくると、ピッチの中の関係性もちょっと変わってくる。俺はフォワードだからパスを出してもらうことが多いが、どう伝えれば相手がパスを出しやすくなるかなとか、考えられるようになったし、出す方も俺のことがわかっていると、信頼してボールをあずけてくれるようになった、気がする。


俺だって、全然知らないやつより、よく知ってるやつにボール渡したいもんな。仕掛しかけは単純だけど、そういうことなんだ。

監督はそういうねらいでミーティングやってんのかな。俺は最近、ミーティングも少し楽しみになっている。今日はどんなことやんのかな、と。


俺は3年になるまで、このミーティングの意味に気づけなかったけど、今の2年や1年にはもっと早く気づいて楽しんでもらえたらいいなって思う。もちろんこういう意味があんだよ、と直接言ってしまうのは簡単だが、それはなんか先輩面せんぱいづらって感じでいろいろ面倒めんどうくさい。後輩たちだって先輩からドヤ顔で言われるのはうざいだろうしな。


なので、俺はミーティングをり上げることにした。やり方は俺らしく。みんなが話しやすくなる雰囲気ふんいき。みんながリラックスできるように。その時によってやり方はいろいろだけど、俺がしょうもない意見を言えばみんなも言いやすくなるし、なごめばみんな話しやすくなる。ま、いつも教室でやってるのと変わらない。結局そっちの方がしょうに合っているからな。

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