第32節 キャプテンなんて僕に務まるわけがない。【MF7 青島翔】

キャプテンなんて僕につとまるわけがない。


ずっと平凡へいぼんな人生を生きてきた。

学級がっきゅう委員いいんどころか、班長はんちょうでさえやったことがない。


誰かキラキラしたやつのかげかくれている

その他大勢おおぜいのキャラなんだよ僕は。


なのに、その日監督に呼ばれた僕は

「青島、お前を新チームのキャプテンにしたいが、どうだ?」

打診だしんされた。


咄嗟とっさになにも答えられなかった。

おどろきすぎてことわることさえできなかった。


「すぐ結論出さなくていいから、ちょっと考えてみてくれや」


そういわれて職員室を出た僕は、

すぐさま着替きがえてグラウンドへ出た。


考え事はしょうに合わない。

むしゃくしゃしたり悶々もんもんとする時には体を動かすに限る。


僕はグラウンドでひたすら走った。

いつもは走ればスッキリするのだが、この日はダメだった。

そんな時に目に飛び込んできたのが、柑那かんなの姿だった。


彼女に目をうばわれ、何者か考えているうちに

僕は少しなやみのことをわすれていた。


そして目の前に現れた柑那かんなから


「役が人を作るって聞いたことない??」


と言われるのだった。


最初は柑那かんなの言っている意味が分からなかった。

それに、いくら僕でも初めてあった人の言葉を鵜呑うのみにするわけじゃない。

家に帰って調べてみると、柑那かんなの言っている意味が少しわかってきた。

例えば古い実験だが、一般の人に囚人役、看守役などと役を与えると言動がより囚人ぽく、看守っぽくなっていくというのを見つけた。あまりにもリアルすぎて非人道的ひじんどうてき、とみなされ、現在ではこの手の実験は禁止とされているらしい。

他にも、アルバイトの時には仕事がそこそこだった人が、社員になって責任を与えたとたんに仕事ができるようになった、みたいな話も見つけた。


「キャプテンにふさわしい人だけがキャプテンになれるんじゃない。

キャプテンになった人がキャプテンにふさわしくなることもできるんだよ」


こんな僕でもキャプテンになれる?

キャプテンをやったら、あこがれていた誰かのようになれる?


僕も、変われるかもしれない。


そう思ったら少しだけ、ワクワクした。


だから僕は、キャプテンを引き受けることにした。


緊張きんちょう気味ぎみにその事をげた僕に、柑那かんなは笑顔で「いいんじゃない」と言ってくれた。

その日から、僕にとって柑那かんなは僕が進んでいくくらい道をらしてくれる、ともしびのような存在になった。



=====


いつも「メンタルコーチな彼女」お読みいただき、ありがとうございます!

“目立たない主人公”の青島あおしましょうです!(笑)


本編ほんぺんは前回で終わりましたが、今回から『解説編かいせつへん』が始まります。


それぞれのお話を、どんなメンタルからそれが起こっているのか? をその時の僕たちの心情しんじょうや考えをまじえながら、僕たちの言葉で解説かいせつしていこうと思います。

今回は僕、翔の立場から解説しました!


他のメンバーも週替しゅうがわりで参加します! 引き続き、応援よろしくお願いします!!


======本編はこちらから!======

第3話「キャプテンの役割」

https://kakuyomu.jp/works/16817330649112470710/episodes/16817330649539517579

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