第20節 ケガしていてもできること
部活終わりに病院へ寄ったが、
「せっかく来てくださったのに、ごめんなさいね。まだ気持ちの
「
「そうだよなぁ。全国、行きたがってたもんな」
考えても考えても、
時間が
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新学期が始まっても、
「
「うん、先週な」
「やっぱさ。
「なんかな。物足りないよな」
部室で着替えながら、誰ともなく
「俺、先帰るわ」
そう言って部室を出た市川
職員室の前で息を
「先生!」
何から話そうか、と市川がもぞもぞしていると、監督は紙コップに冷たい水を入れて、「まぁ、
おそらく
市川はぐいっと水を
「
話し始めると、
自分にとって
「
このまま、
「もちろんだ。先生も杉山をこのままにしておこうとは思ってないよ」
「だけどな。多分杉山には、俺よりも市川の言葉の方が、ずっと伝わると思うぞ。今先生に言ってくれたことを、そのまま伝えればいい。そりゃ、すぐには伝わらんかもしれんが、必ず伝わるはずだ。大事な、友達なんだろ?
先生は、そうやって仲間のことを大事に思ってくれる市川の気持ちが
市川が
「立ち聞きしてた
俺も、と西がボソッと低い声を出す。
「だけどさ、
なっ、と言いながら西に
「ありがとな。
明日、
「うん。俺、毎日
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それから数日後の放課後。
窓の外から野球部の
部活に出ないとなると、なんと時間がたっぷりあることか。かといって早く帰ろうという気持ちにもなれず、
と、通りがかった
「杉山、ここにいたのか。ちょっと来てくれ。杉山にお客さんだ」
「やあ、君が杉山くんか! こうやって会うのは初めてだね」
「
杉山を
「僕の現役時代を知っているかな?」
えっ、と名刺をもう一度見たが、
はっはっは、と
「無理もないな、君はまだ生まれていないだろうし、僕はどちらかといえば
「
「まぁ、知らなくても無理はないよ。当時は日本人も外国人選手も、有名なスター選手がいっぱいいたからね。まぁプロのサッカー選手としては僕はそこそこだったけど、スカウトとしては
「君が
あの時、君は何を考えていたのかな? 教えてくれるかい?」
「時間がないって
「うん。そうだね。それは伝わってきたよ。どうして点を取りたかったの?」
「アピールしたかった。スカウトが来てるって聞いて……」
「僕に見せたかったのかな?」
「ゴール取るしかないって思っていました。だけど、今思うと、あの時の
ほう、というような表情を見せ、
「で、今はどうしているんだい?」
「怪我したこととか、全国に行けなくなったこととか、しばらくサッカーができないってこととか、
部活もずっと休んでて……どうせ行っても何もできないしって思って、みんな心配して毎日声かけてくれるんですけど、それがまた
なんか……
「誰のせいでもないのに。誰かのせいにして。心配してくれるみんなをうるさいって思ったりして」
「そうだね。君はいろんなことを
私はね、
君にはシュートへのアイデアがある。それに、
ただ、この前のような時は、一番大切なことを
「僕はね、君がそのポイントを
だから杉山くん、大学に行く気はないかい?」
思いも
「ここの
「
今やれることをやらなかったら、君はここに立ち止まったままだよ。
4年後、君が前に進めていたら、僕はまた君に会いに来よう。どうかな」
「ありがとう、ございます」
帰り
「僕も現役時代は同じ
その時お世話になったトレーナーがいるから、ここを
お前はここでいいよ、と
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「ライン
「
「
翌日のグラウンドには、
練習後に
「
「
杉山は
「僕は……
本当に、ごめん」
「翔のせいじゃねぇよ。俺自身の問題。
俺こそ、こんな大事な時に
そのかわり、
全国、まだ諦めてないぜ」
「うん。約束だ。早く
翔は差し出された
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