第18節 ミスコミュニケーション
今日の練習の時、監督の指示に
いや、
「お疲れさまー!」
いつものように
「
やはり、
「言いたいことの半分も伝わってないんじゃないかしら」
「えっ、でもさ。監督の指示が伝わってないって、マズくない?」
「うーん。それはねぇ……」
「じゃあさ、私のいう通りにやってみて?」
と立ち上がり、翔の後ろに回ると背中同士をくっつけて座る。
柑那の温度が背中越しに伝わってきて、翔は着替えの時しっかり汗を
「ね、私が今から言う通りに、
「まず小さな丸と、その中に小さな点を描くの。
それから、ちょっとだけ
翔は言われるがままに丸と点を
その後も
「どんな絵になった?」
と言いながら翔の描いた絵を
翔の紙に出来上がっていたのは、この世のものとは思えない
「正解は、これ!」
柑那が手にしたノートには最近はやりのキャラクターが
「どうして翔くんのは、こうならなかったのでしょうかー?」
「でもね、多分10人いたら10人とも違う絵になると思うから」
と軽くフォローした。
「私は完成形が分かってる状態で描いているから、当然出来上がりはこうなるんだよね。
だけど、翔くんは何を描くか聞かされていなかったでしょ。
だから、今自分が描いているのが目なのか、それとも鼻なのか、はたまた生き物なのか、
柑那は右手の指を翔の絵に、左の指を自分の絵に
「例えば目の位置。私のよりも翔くんのは
「ちょっと
「つまり?」
「僕のちょっとはこのくらいで、望月のちょっとはこのくらいで?」
「そう! その『ちょっと』の感じ方が私と翔くんでは
そういうちょっとしたズレが
同じものを描いたはずなのに、出来上がりが違う。それって、翔くんと私の、言葉の
自分がわかっているからって、相手もわかってるとは限らないし、わかっているようでも、実は違うように思ってたってことは大いに考えられる。もしかしたら全然、伝わっていないって可能性もあるんだよ。
実際やってみたら、わかるでしょ?」
「うん」
翔は
「ましてやサッカーなんて一つのプレーにたくさんの人が
と柑那は続ける。
「例えば、こういうシチュエーション、想像してみて。
翔くんが
そんな時、翔くんは次にどんなパスを出す?」
「前に伸びすぎたってことは、もう少しゆっくりのパスを出すか、
うんうん、と何度も
「翔くんは
そしたら、次のパスは今と同じでいいってことになる」
「確かに……お互いに自分が合わせようってなると、またずれる可能性があるって事か」
「そういうこと! 逆に、お互いが次は合わせてくれるだろうって思ってたら、また同じ失敗の
どっちが正しいかは相手や試合の
そういう時に、ピッチにいるメンバーで少しでもコミュニケーションをとり合うことって、少なからず大切だと、私は思うのよ。
次は俺が合わせる! なのか、合わせてくれ! なのか、もう一度同じように欲しいとか、そういったジェスチャーや
「うん……
「そう、それ! うまくいっている時には、何となくうまく回るの。でも、一度
その時に、どっちが正解とかじゃなくて、次はこうしよう! っていう
もちろん、
「確かにな、僕は
「その通り! それは選手同士だけでなくて、当然、選手と
「僕たち、
「いくらいつも一緒にいたって、お
最後は自分に言い聞かせるように
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