第13節 ライバルとリスペクト
翌日の朝練に、
1年生のフロアに足を踏み入れると、新入生だらけの中で、翔の馴染んだ制服は明らかに目立ち、注目を浴びている気がして、翔は背中に汗をかき始めていた。
翔が服部のクラスを覗くと、先に同じクラスの
それでも服部はすぐに立ち上がり、
「朝練、どうした?」
恐らく昨日のことを言われるだろうと思っていたらしい服部はえっというような表情になる。翔は
「来づらかったか?」
翔が笑みを見せたので、服部も
「せめて連絡くらいしろよ。
あとさ、昼休み、部室に来てくれないか? 見せたい物があるんだ」
翔は服部の肩をポンと叩くと、心配そうに教室の中から伺っていた神山に気づき、頼むな、と目で合図した。
昨日はあんな
今は何かに抵抗しているだけで。
果たして昼休み、翔が部室に行くと服部は既に部屋で待っていた。
翔は服部を
「なんか言いたいこと、あるなら言えよ」
「俺自身、結構自信あったプレーで。シュートまでいけると思ったんです。だから、ダメ出しされてカッとなったというか。後から冷静に考えたら、
「うん」
元々、服部は中学でも県
「お前さ、
服部がまっすぐこちらを見ているのを感じながら、翔は話し続ける。
「その冷静さをさ、プレーの中で出せるようにしろよ。今の判断をあの瞬間に出せてたら、お前もっとよくなるよ。昨日の状態で、いいプレーできてると思うか? 違うだろ? プレー中に自分を見失ったら、終わるぞ。
もし自分の方が正しいと思うなら、言い返しても構わないよ。それは僕から
服部は大きな体を小さくしてハイ、と
「お前さ、どうしてうちに来ようと思ったの? 他にもっと強いとことか、
服部は少しためらったが、口を開いた。
「実は、
なんだ、それがきっかけだったのか、と翔は
「あの、この話、
「ああ、いいけど。
「そうでしょうか……」
目を泳がせていた服部は、あ、というように翔を見て、
「そういえば、見せたいものって……?」
と聞いた。
「あぁ、忘れてた。これ。お前置いてったからさ」
翔は立ち上がり、
「お前さ、いくら腹が立ってもスパイクは投げるなよ。毎日手入れして、大事に使え。そうじゃないと大事なとこで足をすくわれるぞ」
「はい。すみません。ありがとうございます」
服部は差し出されたスパイクを両手で受け取った。
「あ、そのスパイク
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その日の翔は忙しかった。
この時間なら
いた。席に
「んー……何? もう昼休み終わり?」
眠そうな声を出して
「
翔は空いている椅子を引き寄せて
「さっき服部と話してきた。ちゃんと反省してるみたいだったしさ、許してやってほしいんだ。頼む」
頭を下げた翔に、
「あいつ、生意気じゃん。先輩を先輩とも思ってないってかさ。最初っから態度悪かっただろ? 1年との顔合わせの時もさ」
「うん、確かにね」
翔は最初に会った時のことを思い出していた。口数少なく、
「でも、
「んー……でも、パス出さねぇで自分で行こうとする時あるじゃん、もちろんその方がいい時もあるけど、俺の方が絶対いいポジションなのに自分で行こうとしたりとかさ。なんか、
「確かにそうだけど、服部はまだわかってないだけだと思うよ。あいつはただ
だからさ、僕、もし納得いかないならちゃんと言い返せって言ったんだ。ただムカついて突っかかんじゃなくてさ、意見を言えって。
そしたら、
「やっぱさ、服部にとっては
「それからさ」翔は
「
「する。翔もそう思う?」
「うん、ここからは僕の想像だよ。
服部が入ってきてさ、
でも服部は先輩とか関係なく来るじゃん。
もちろん最後の年っていう責任感や進路のこともあると思うけど、3年になってからの
うーん、と
「認めてやれよ。お前ら意外にいいコンビだぜ。似た者同士だしさ」
翔は昼休みの終わりを告げるチャイムを聞き立ち上がりながら、服部にしたのと同じように
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その日の放課後。
翔は服部がちゃんと部室に現れたのでほっとしていた。
昨日のこともあり、部室にはなんとなく緊張感が漂っていた。みんな
と、スパイクの
「おい
服部だけでなく部員がみんな、えっ、というように顔を上げた。
「いいだろ、ケイで。試合ん時、
西や大竹がニヤニヤしだしたので、
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