第12節 似た者同士
「やってらんねぇ」
そのつぶやきは小さかったが静かな空間に確かに
「は?」
杉山
1年生の
そんな
練習終わり、
こういう雰囲気は苦手だ。言葉に詰まった翔の横で
「お前、
「やめろ、
副キャプテンの西が
「
真剣にやれないんだったら、うちでやる必要はない」
言葉とは
翔は
「たまには俺たち3年でやろうぜ。用事があるやつは帰れよ。時間のあるやつだけ残れ」
「お、おい、翔!」
翔は何も言えなかった。西にフォローされなければ、この場をどうすることもできなかった。
翔は
他の3年も翔にならいボールを蹴り始めた。みるみるボールが集まっていく。集まったボールをネットにまとめていると後ろで声がした。
「あの……僕らも、やります」
帰したはずの1年生たちが、おずおずと立っていた。
「そうか、ありがとう。
じゃああっちのマーカーの片付け、頼むよ」
翔が言うと、硬い面持ちだった1年生はほっとしたように表情を緩め、はい! と元気よく返事をして走っていった。
「西、ちょっといいか」
片付けを終えて、部室で着替えながら翔は西に声をかけた。
西は制服のボタンを止めながらガッと翔の隣に座り、長い足を投げ出した。
「俺は自分の言ったことが間違ってるなんて思っちゃいねぇぞ」
翔は
翔らの会話に、部室内のみんなが耳をすましているのがわかった。
「なぁ、1年の時の僕たちって、どんなだったかなぁ」
翔は西に問いかけた。西は驚いたように翔を見て、うっすらと
「うーん、まぁ、
軽い口調で西が答えると、部室にほっとした空気が流れ、みんなが次々に口を
「確かになー、走り込みの後とか、ぶっ倒れそうなのに片づけかよーって」
「つーか、実際ぶっ倒れてたしな! あれで結構メンタル
「そういえばボール
そうだった。あれは翔たちが1年の夏だ。
練習が終わった後、どうしてもボールが1つ見つからなかった。見つかるまで帰さんと監督に言われ、グラウンドの中だけでなく、外まで、探しに行かされた。やっと見つかったのは、遅い夏の夕焼けがすっかり山陰に隠れた頃で、
翔らが用具室に最後のボールを片付けに行くと、監督は僕らを待ってくれていた。
「遅くまで大変だったな。見つかってよかった。ボール1個だって
と言いながら、一人ずつにスポーツドリンクを手渡してくれた。
またあんな遅くまで残されるのはごめんだと思った翔たちは、それ
翔らが楽しそうに思い出話をしているのを、1年生たちは着替えながら、
みんなの笑い声で
「
翔が手を合わせると、西はわかったというように翔の胸をグーでトンと
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今日も、
「その1年生?
翔が今日の出来事を一通り話し終えると、柑那はペダルをこぐ足を止め、身体を起こして翔を見た。
「まぁ本気で片付けが嫌だったって事もないだろうし。中学でも名が知れてた選手だから、プライドが高いのかちょっと
翔は考えながら話す。
「
柑那の問いかけに、翔はあれ、っと思った。確かに
「3年になってから、
「
柑那は意外に部員のことをよく見ている。
「あとさ、ちょっと気になったんだけど。みんなが
「え?」
翔は意外な
「例えばさ。監督にお前はどうせダメだって思われてたら、翔くんはどう? がんばろう! ってなる?」
「どうせダメなんだからやったって
「でしょ。監督が翔くんに期待してキャプテン
「
「うん、そういうとこあるんじゃないかな。生意気だ、態度が悪い、って周りから思われているからそういう態度をとってしまってる可能性はないかしら? 翔くんだけでも、そういう目で見ないであげたら、ちょっとは変わってくるのかも」
「そういうものかな?」
翔は先ほどの、
「
柑那はフフフッと、何かを思い出したように笑う。
「え? まさか、あいつが?」
「ホラぁ、言ったそばから! そういうとこだぞ!」
柑那は先生のように翔を指さして、今度は大きな声でアハハと笑った。
柑那がそう言うのなら、そうなのかもしれない。翔は、妙に確信ありげな柑那の態度に、そんなことを感じ始めていた。
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