第11節 声を出すことの本当の意味
数日後の練習中。
その日は
「
「ちょい待ち、翔」と大竹
「今は
「なるほど、そうだな。」
大竹は
「OK、わかった。次は
「いえ」
こういったやりとりが増えることで、翔は他のメンバーの特徴がどんどんわかるようになってきた。なにより大竹の分析やポジションの指示は的確なので、勉強になる。
「
「西サンキュー!!」
翔は次第に、声を出すのが楽しくなってきていた。大きな声を出すとスッキリする。自分の声で、誰かが動いたり、表情が変わったりするのも面白い。以前
「ナイスチャレンジ!! 次決めようぜ!!」
するとまた不思議なことに他のメンバーも翔を
特に
「ほんっと、負けず嫌いだよな」
「叫びすぎだろ」
と誰かが言い、
そんな様子を見ながら翔が汗を
「翔、最近変わったよな」
「え? ああ、うん」
翔は声出しのことか、と思って
ところが岳が続けた言葉は意外なものだった。
「翔ってそんなに周り見れるタイプだったっけ?」
「えっ??」
翔は岳の方をまじまじと見た。
確かに監督からもっと周りをよく見ろと言われることは減ったかもしれない。
再開の笛が鳴り、グラウンドに戻った後も、翔は岳に言われたことを思い返していた。
確かに見える。大竹の動き、
もちろん100%ではない。さっきのような思い違いやミスもある。
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その日の
「
でさ、他にも効果があるかもって言ってただろ?
今日思ったんだけどさ、声を出すためには、仲間がどう動くべきかを
うーん、うまく言えないけど、今まで受け身でやってたような気がしてたけど、今は自分でコントロールしてるっていうか、
伝わってる?」
翔が不安そうに柑那の方を
「ここ数日、翔くんは声を出すように
そしたら変わってきたことがいくつかあった訳だよね」
柑那は細く白い指を一本ずつ立てて、翔の話をまとめ始めた。
「まず1つめ、声を出すためには周りをよく見ていないといけない。
2つめ、声を出すと責任が生まれる。
3つめ、
4つめ、間違っていたらすぐにフィードバックされて修正することができる。
5つめ、受け身でなく主体的に練習に参加している。
ねぇ、こういう練習ってどうなの??」
柑那は広げた指を突きつけるようにして翔に
「どうって……毎日いろいろ考えることあって、頭は疲れるけど、練習は充実してるし、自分がうまくなってるような気がする。楽しいよ」
「ねえ、それってすごい効果じゃない?
声出した、だけだよ?
それにさ、最初、そんなことする余裕ないよっていってたじゃない? 今は、どう?」
「あ」
柑那のいう通りだった。今では周りを見る余裕すらある。
やることが増えたのに、以前より落ち着いている。不思議だ。
「多分一週間前の翔くんに比べて、
家が近い人ほど遅刻しちゃう原理に近い、のかな? 違うか」
言いながら柑那は笑って、投げ出した足をぶらぶらさせた。
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次の日、翔はある考えを持って部活に
練習を始める前、3年生を集めて、翔の考えを話してみる。
「いいんじゃねぇ?」
反対するかなと思っていた
「最近翔がよく声出してくれるからさ、みんなも動きやすそうだし、お互いのことが分かりやすくなってるよな。みんなで声出すことでもっと良くなるなら、それでいいんじゃないの」
西や大竹も、頷いてくれた。
「翔の声聞くと、なんか安心感があるっていうか。
上手くいってない時でもよしもう一回頑張るか! って気持ちになれるしな」
「うん、俺は声出すと元気が出るし、試合
実は声を出すことって柑那と話した以外にもたくさん効果があるのかもしれないな。翔は思い当たった。
「ありがとう!!」
翔はみんなに頭を下げ、ストレッチをしている下級生たちを呼び集めた。
「みんな、ちょっと聞いてくれ。
翔は
「今日から、全員プレー中はさん付けをやめてみないか。いわゆる、フィールドネームっていうのかな。僕たち3年が呼び合ってるみたいに、みんなからも呼んでほしいんだ。もちろん、レギュラーとか学年も関係なしだ。
1年でも
下級生たちはザワザワしている。そりゃそうだ、昨日まで
「もちろん、ただこんな
それに、呼び方を変えようと言うのが目的なんじゃない。学年関係なく、言い合える環境を作りたいんだ。こうした方がいいと思ったことは、上級生相手でも遠慮なく言って欲しい。もちろん、それで3年がむかついたりすることもしないように、それはみんなに言ったから。なっ、
笑いながら3年のみんなの方を振り返ると、
「もちろん、最初は
どうだろう?
自分から何かを提案するなんて、生まれて初めてだったかもしれない。
「初めてキャプテンらしいことしたな」
「何言ってんだ、お前十分キャプテンやってるよ」
真面目な顔をして、西が言った。
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