第8話

「じゃあ、先にシャワーでも浴びようか?」


 その言葉に薙は頭を頷かせる。


 何だか昔とは違う修斗。 だけど昔と変わらずカッコいい。 だからホストなんて仕事が出来るんだろうな。 と思いながらも薙は修斗と一緒にお風呂場に向かう。


 昔話は後にしといて今は昔恋人だった人と今という時を楽しもうか。


 そしてこのマンションはお風呂の方も広かった。 ラブホ位の広さはあるんじゃないかと思う位だ。


 脱衣所で服を脱ぐと薙はお風呂場に足を踏み入れる。


「あ……広い……。 僕の家のお風呂なんてさ……共同だし、シャワーもないし……」

「じゃあ、これからは家のお風呂に入りに来たら?」


 その修斗からの提案に薙は目をキラキラとさせながら修斗のことを見上げる。


「ほ、本当に!?」

「ああ……。 あー、気が早いのかもしれないんだけど、もう、一緒に暮らしちゃえばいいんじゃね?」

「あー、そうかぁ」


 薙はその修斗の言葉に変に納得してしまったようだ。


「……って、今時、お風呂共同のアパートに住んでるって、何処に住んでるんだよ」

「へ……? ってか、修斗の家からそんに離れてないとこに住んでるよ」

「はい?」

「多分、このマンションから見えると思うんだけどなぁ」

「ま、いいや……そういう話は後、後……今はお前と離れていた時間を埋めたいんだからさ」


そう修斗は甘い声で言うと、いきなり薙の体を後ろから抱き締められる。


 それだけでも薙は反応してしまったのか、


「っ……」

「そんなんで反応しちまうのか?」

「あ、いや……それは……ずっと……修斗とのことしか考えてなくて……未だに修斗の事を考えるだけで胸がドキドキして……本当に僕は修斗に恋してるっていうのかな? ってか、今でも修斗の事を忘れてなかったって事なんだよ」

「本当にそうだったら、俺の方も嬉しいかな。 ま、俺の方も……薙の事を忘れた事はなかったけどな……」


 更に修斗は薙の後ろから強く優しく抱き締めるのだ。 そう二人の鼓動が聞こえて来る位に……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る