第7話

「そういうことだよ……薙。 だから、さっき、一応確かめてみたんだ。 薙の名前をね」

「あ、そうかー、そうだったんだ……ってさ、さっきの話って、どういうこと?」


輝はあの小学校の時の友人だったことを知った薙は緊張もほぐれたのか、いつもの薙へと戻ったようだ。 しかも友人だったのだからタメ口に戻れたのかもしれない。


「だから、俺はずっと薙のことが好きだったのーって言ってるんだけど? 薙はどうだったの? 確かに小学校六年の時に俺達シちゃった訳でしょ?」


 それを思い出されてしまったのか薙は真っ赤な顔をする。


「あ……え? だから……それは……えーと……うん……僕も修斗のことは好きだったよ。 だから、僕もその……そういうことに付き合ってた訳で……」

「じゃあ、その時は俺のこと本気だった訳?」

「え……まぁ……うん……」

「良かった。 薙は俺の事が好きだったみたいでさ。 俺は今でも薙のこと忘れてなかったから、俺は薙のこと好きなんだけど」

「え? あ、そうだったの!?」


 と修斗のその言葉に顔を上げる薙。


「ほら、小学校卒業した後、俺は私立の中学校に行っただろ? その後も高校も名門校に行ったし、今は大学の方も有名校の医学部って訳だ。 だから、毎日、勉強漬けで遊ぶ暇さえなかったけど、今は大学にも入れたから、少し余裕は出来たのかな? だから、ホストなんてこともしちゃってるんだけどさ。 とりあえず、さっき薙に教えた名前はホストの名前。 だって、いつも、お前が働いているコンビニに行ってたのに俺のこと気付いてなかったんだもんな。 だから、ホストの名前を使ったんだけど」


 そうイタズラっぽく言うところは昔と変わってないようだ。


「で、ちょっと、面白かったから……脅かした訳さ。 まぁ、俺は何となく薙かな? って気付いてはいたんだけどな。 しかし、奇跡だよなぁ、運命っていうのかな? 俺達、東京じゃない所に住んでいたのに、東京でも再会出来るなんてさ。 な、薙……もう一度言うよ……。 俺は君のことが昔から好きだった……だから、もう一度、再会出来た訳だし、付き合ってたくれないかな?」


 薙は涙目で修斗のことを見つめると、


「修斗ー」


 と語尾にハートマークが付きそうな位な声で言い薙は修斗のことを抱き締める。


「うん……僕もずっと修斗のことが好きだったんだよ。 だから、その……女性と付き合うことも出来なかった。 修斗のことが忘れられなくて、忘れられなくて、本当に今まで付き合うってこと考えてなかったけど、修斗となら構わないよ。 確かにあの頃は好きって感情でしてた訳じゃないけど……いや、僕には好きって感情はあったんだけどさ。 それよりか、その……そういうことの方が気持ち良かった……っていうのか……修斗と離れてからも自分一人でやってみたんだけど……何か足らなくて……やっぱ、相手がいないと気持ちよくなれなかったんだ……」

「そうだったんだね。 何だか、やっと、気持ちが一つになれて嬉しいよ。 あの頃はただやりたいだけだったのかもしれないけど……今は違うよ。 薙のことが好きで薙のことを抱きたいって思ってるんだけど……いい?」


 その修斗の言葉に薙は頭を頷かせる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る