第11話 外泊

「瀏司君」

「うわっ!」



突然背後から抱きつかれ驚く俺。


振り返る視線の先には、


彼女・麻伊紫 奈都樹がいた。




「ねえ、瀏司君、今度の日曜日、遊びに行っていいよね?」 

「えっ!?今度の日曜日?あー、悪い!バイト入ってんだ」


「いつも、そうやって〜。バイト先にも聞いてるんだから言い逃れ

出来ないよ?」


「えっ?」




《マジかよ…》



「今度の日曜日は入ってないって話だし」


「いや、バイト入ってなくても、急な呼び出しあるわけだし悪いけど来るのは…」


「じゃあ、バイト入ったら帰るから!それなら良いでしょう?」


「いや……」


「じゃあ、そういう事で宜しくね〜」




彼女は、そう言うと去って行った。





その日の夜。





「えっ!?えーーっ!!裕香が来るって…」

「じゃあ、やっぱり断……」

「…良いよ…裕香に事情話して私達、外出するから」

「朋花…」

「本当、麻伊紫さんには参っちゃうよね?」

「…そうだな」




そして私達の都合は狂い、裕香と私は街に出てブラついていた。






その日の夕方――――――





部屋に帰宅。




「えっ…?靴…?嘘…つーか…一人じゃなくない?」




玄関先にある靴、4〜6足はあるようだ。


私は部屋を後に出かける事にした。




「…最悪…しかも…天気怪しいし……」






「ねえ…そろそろ帰った方が良いんじゃないかな?天気怪しいし」




俺は、彼女に連れと帰るように促すも




「その時は泊まる」

「えっ!?」


「ねえ〜〜」


顔を見合わせ言う彼女達。


男女問わず彼女は引き連れてきている状況なのだ。


来た瞬間、何も聞かされてなかった俺は、一人じゃない訪問客に驚くも常識知らずにも程がある。


そう思った瞬間だった。





「いや…それは…」


「だって一人暮らししてるんでしょう?カップとかはお揃であるけど見せかけだけみたいだし」




「…………………………」






《まずいな…アイツそろそろ…》





その時だ。




俺の携帯のがバイブで震えた。



ブー、ブー……


『どういう事!?まだ彼女帰ってないじゃん!』

『つーかさ、天気怪しいんですけど!』



ブー、ブー……


『悪い。つーか、お前、一回帰ってきたの?』




ブー、ブー…… 


『帰って来たよ!どうにかして!』




ブー、ブー……


『天気怪しいって言ったら泊まるとか言って…』




ブー、ブー……





『はあぁぁっ!?あっ、そっ!そうですかっ!?分かりましたっ!分かりましたよっ!じゃあ、野宿をしろとでも言うのですかっ!?瀏司君!!どうなのっ!?』




ブー、ブー……


『悪い!!マジっ!本当、済まないっ!』





ブー、ブー……


『…もう良いよ…私は実家に帰らせて頂きますっ!さようならっ!』





私は携帯の電源を切った。





「もう何なわけ!?マジムカつく!」






✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕



「朋花…」






私は携帯の電源を一旦入れ




「あっ!ママ?ねえ、今日そっちに行って良い?」

「どうしたの?急に。瀏司君と喧嘩でもした?」

「いや…今日、瀏司の友達が来ていて」


「そう…だけど、今日は用事あるし今は何かと物騒で、最近、こっちの近所で空き巣が入って…一人じゃ留守番は何かと危ないわよ」



「えっ!?でも誰もいない方が逆にヤバいんじゃないの?」

「それが、そうでもないみたいでね」

「えっ!?」

「人がいても、いなくても目を盗んで入って来るみたいで」

「…そう…なんだ…」


「ともかく、こっちには来ない方が良いわよ。友達にでも当たりなさい!協力的じゃなくてゴメンね」



電話が切れる。



「そんな〜…最悪…」



私は裕香に電話をする。




「ごめんっ!無理っ!」と、裕香。


「えっ!?そ、即答ーーっ!?」

「本っ当っ!ゴメンっ!今日、パパの大事なお客さんが来るから」

「…そっか…分かった…ごめん…」

「ううん。私こそゴメンね…」






私達は携帯を切るのだった。





「はあ〜〜〜っ」



私は大きいため息を吐く。


そして、空から雨が降ってくる。




「…雨…か……」






✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕




「あーあ…雨降って来ちゃったよー」と、麻伊紫が言った。


「本当だー」





《朋花…大丈夫かな?アイツ…実家に帰るって言ってたけど…》





「ねえ、ねえ、瀏司君、泊まって良いよね?」

「えっ!?でも着替え…」

「平気平気」




そして、麻伊紫さん含む5人の友達は帰る事なく泊まるのだった。





一方私は、公園の土管にいた。




「あーあ、何してんだろう?ばっかみたい……寒っ!」



ブー…ブー…


『朋花、今、何処にいる?』




「…瀏司…」



私に一通のメールが入ってくる。




ブー…ブー…


『実家にいるよ』



嘘のメールを送る。




ブー…ブー…


『本当に?』



瀏司が入ってくる。




ブー…ブー…

『うん。だから大丈夫』


そう返信する。




ブー…ブー…


『そうか…本当、悪い』


再び返事がくる。




チリーン……


鈴の音が鳴り響き



「ニャーオ」と、鳴き声が聞こえた。



ビクッ

驚く私。






「…仔猫…可哀想に…あんたもずぶ濡れだね?私と一緒じゃん!」




「ニャーオ」




「でも…可愛い〜♪風邪引くよ」




ゴロゴロ…


喉を鳴らす仔猫。


そして雨が止み辺りが暗くなった時――――――





「リーオーー、リーオーー」



男の人の声で名前らしき呼ぶ声が聴こえてくる。



チリーン…

反応する仔猫。



「あんたの飼い主?」



チリーン、チリーン…


走り去って行く仔猫。




「あっ!リーオー、お前心配したぞ!」


抱きかかえる。



「よし!帰るぞ!」



「ニャーオ」



仔猫は飛び降りる。




「お、おいっ!リオ?どうした?」




チリン…チリン…


鈴の音が近付いてくるのが分かった。




「…?」




チリーン…




「どうしたの?御主人様の所」




すると―――――






「リオ!?」





ドキッ



《うわっ…ちょ、ちょっと…ヤバ…》





「うわっ!ビックリした!君、何してんの?」

「えっ!?あ、あー…雨宿りを…」

「土管で?」



《…ヤバイ…かなりイケてんだけど…》




「…あっ…はい……まあ……ちょっと事情ありで…行く宛なくて…あ、でも、もう帰るし。それでは失礼します!仔猫可愛いですね?それじゃ」




ゴンッ


頭を土管にぶつける私。




「った!」

「……ダッサ…!」

「…っ……痛い……」



「ねえ、君、名前は?」

「はい…?名前…?…朋花です」

「朋花ちゃん」

「はい」

「家に来れば?」

「…えっ!?あ…いや…大丈夫です…」



「えっ?でも、行く宛ないんでしょう?」


「いや…それは…でも…事情があって…訳あって…帰れないだけでで…」


「うん、それが行く宛ないって事でしょう?」


「…それは…えっと…」




クスクス笑う男の人というより…男の子。


余り変わらないような年齢にも思える。




「もう暗いし危険だと思うけど…家に来なよ」

「い、いいえ…本当に大丈夫です!」

「そう?じゃあ、今日は土管で野宿してお泊りだね。それじゃ…リオーー帰るぞーー」



「ニャーオ」



私の元から去る仔猫……リオ。




「……………………」




去って行く男の子とリオ。



「…かなり…イケてたな……彼女…いる…んだろうな…いくつだったのかな…?」


「17歳」




ビクッ




「きゃあっ!」




土管の穴から顔を出す男の子。




「朋花ちゃんに何かあったらいけないから一緒に帰ろう!俺ん所に。何するってわけじゃないし。むしろ、ここにいた方が危険過ぎるって。リオも帰ろうとしなくて。それにリオもなついてるみたいだし」



「……………………」



「まあ、信じろっていう方が無理か……」


「そ、そんなの当たり前です!今の世の中、何があるか分からないし」


「だったら…!尚更じゃない?そんな世の中だからこそ女の子一人じゃ危ないよ。初対面だから抵抗あるかもしれないけど心配で仕方がないよ」




「………………」



「事件に巻き込まれたとかなると…何かあったら遅いから」




私は迷うも彼について行く事にした。



「大丈夫?寒くない?」



男の子は、優しく気にかけてくれていた。




「あ、はい…大丈夫です」



私達は色々と話をしながら移動した。



























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