第10話 アポなし訪問

「ねえ」

「何?」




それはある日の放課後の事だった。

  

教室に忘れ物を取りに戻った時の更新、偶然に会話を耳にする。





「今度、瀏司君の家に行っていい?一人暮らししてるんでしょう?」



「あーいや……」

「遊びに行って良いよね?お願いっ!」



「………………」




「悪い!俺、バイトしてるから!無理!っつー事で本当ゴメン!」




そう言うと、瀏司は教室を後に帰って行くのだった。



「なーんだ。つまんない。じゃあアポなしで突撃訪問しちゃおーっと」





《嘘っ!それはヤバいって!》





「しばらく様子を見て行こうっと」





その日の夜――――




「えっ!?アポなし!はあぁぁっ!?」

「うん…だから気を付けておいた方が良いと思う」

「…マジかよ…」





私達は、ハラハラ、ドキドキの日々を送る子供となり―――――





ピンポーン…




ある日の休日、バイト休みだった私。


部屋中に、インターホンが鳴り響く。



「はーーい」




ガチャ



「えっ?」

「あれ…?菊間…さ…ん?」




ドアの前に立っていたのは、


な、な、なんと、


彼女・麻伊紫さんの姿があった。




「麻伊紫さん」

「ねえ…ここ瀏司君……の…」

「あ、うん…」

「どうして?」

「えっ?」


「菊間さんは良くて私は、駄目なの?おかしくない?」

「えっ?」

「まあ、いいや。お邪魔しまーす!」



麻伊紫さんは、部屋の奥に入っていく。




《うまく誤魔化さなきゃ》




「…あれ…?なんか生活感溢れてない?一人暮らしだよね?」

「う、うん…そう聞いてるけど…」


「カップ2つあるし…お姉さんとか?実は、同居とか?ま、まさか同棲とか?ねえ、菊間さんどう思う?」


「どう思う?って…これが何よりの証拠なんじゃないかな?だけど、私、全然気づかなかった!」


「今度、追求してみよう!で?菊間さん、この後の予定は?良かったらお茶しない?」


「いや、私は…別の用事あって…」


「まさか!二人って付き合ってるとか?」


「えっ!?まさかっ!」


「そう?まあ、今日は大人しく帰ろう!あっ!菊間さん、私が来たこと内緒ね♪日を改めて、また来ようかな?」


「えっ!?」


「あっ!この事も内緒で!」




そういうと、彼女・麻伊紫さんは帰って行った。




その日の夜。




「ただいま」

「…おかえり…」

「どうしたの?」

「今日さ来たよ」

「誰が?」

「麻伊紫 奈都樹」



「えっ!?マジ!?」

「マジもんのマジ、マジ」

「そうか…で?お前、どう誤魔化したわけ?」


「あー…誤魔化すとかより、文句言われた。菊間さんは良くてどうして私は駄目なの?って」


「そうなんだ」


「だけど、彼女が、まあいいや!って、部屋の奥に入って行っては、同居してる人とかいる感じじゃない?って疑ってた。私に付き合ってるって尋ねられた」


「そうなの!って言えば良かったじゃん!」


「はあっ!?あのねー…」




グイッと肩を抱き寄せる瀏司。




ドキッ



「それとも…付き合ってる宣言しとく?と・も・か・」

「な、何言って…」



私は押し離す。




「だって、その方が良くね?」


「それは…確かに、また来られるのも嫌だけど…また、来るって言ってたし」


「はあっ!?来る意味分かんね」


「後、来た事と、来る事は内緒って!」


「もう、この際、付き合ってる事にしようぜ!朋花」


「逆に来る回数多くなるんじゃないの?顔見知りで同級生とか!尚更でしょう?」


「それは…それで面倒くせー…」


「まあ、とにかく、そう言う事だから!」


「わざわざ来なくても…」


「2人きりになりたいんじゃないの?」


「2人きりって…」







同じ部屋


二人だけの部屋



でも時には


一緒にいても


心の中がポッカリあいてる感じ


心がスッキリしないこと


あるよね……?



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