第9話 二人の恋愛話

「ねえ、裕香。転入生の彼女どう思う?」

「どう思うって…私、そっちの趣味じゃないし!」


「いや、分かってるから!実は、瀏司に聞いてみたら興味ないとか美人は嫌いとか言ったんだよね?」


「へぇー。まあ、そういう人もいるんだろうね」


「でも、そういう奴ほど、実は、そっち系、好きだったりとかする気がしてならない!」


「そう?」




実は、瀏司の件は、裕香に話をした。


勿論、瀏司に許可を貰い話しておいたのだ。


1人でも知っている人がいる方が気が楽だと思ったから。


そんな瀏司も、バイト先の先輩の1人に教えていると言っていた。


アイツもアイツなりに信頼出来る人には伝えておきたかったのだろう。


まあ、1つは私が例の彼との件もあってか話す事にしたのかもしれない。




「そうだよ!」

「あっ!ねえ、今度遊びに行っていい?」

「うん、良いよ。来なよ」

「ヤッタ!」




そして、ある日の休日、私がバイト休みの日遊びに来た。



私達は女子トークで盛り上がる中、




「ところでさ、朋花。あんたの中で、瀏司君への特別な想いとかないの?」


「えっ!?いやいや、絶対に有り得ないんだけど!?」

「24時間一緒にいるのと変わらないのに?」


「うん。友達、クラスメイト、同級生、同居人。それ以外の何もないし!」


「そうなの?」


「そうだよ。まあ、しいて言うなら…友達以上恋人未満?それもどうかと思うけど…一緒にいるのは楽しいし、居心地良かったりもするけど…」


「そうなんだ」


「うん」




そんな楽しい時間も、あっという間にすぎた。 

    




ある日のバイト帰り――――





「あー、疲れたーー」

「ねえ、彼女」




私に声を掛けてくる男の人。



「何ですか?」

「一人?」

「はい」




グイッと肩を抱き寄せられた。



「ちょ、ちょっと!な、何?」


「ねえ、1日に、これだけ稼げるバイトあるんだけど話だけでも聞いてみない?」



「2万円?」

「まだ、上」

「まだ、上?」

「じゃあ、2億!」

「結構、思い切り言ったね」



「いや、上って言うから。つーか、そういう話、一切興味ないんで他当たってもらえますか?」




私は帰り始める。




グイッと引き止められた。




「何?」

「じゃあ、1日体験しに来なよ。これ渡しておくから。連絡頂戴」




そう言うと、私に名刺を渡し帰って行く。




「……………………」




そして、夜。



瀏司とテーブルを挟み、出来事を話す。




「へぇー、ヤバイの見え見え。つーか、2億って宝くじじゃねーんだから」



笑いながら瀏司は言った。



「分かってるよ。面倒って思ってさ思い切り言っただけ」

「でも、それで本当に貰えるならすっげーよな?」

「2億ってヤバイよね?」


「確かに。つーか、もし2億とか当たったら、お前どうする?バイト続ける?」


「私?あー、しなさそう。即効、辞めるかも」


「えっ!?辞めるの!?」

「うん。えっ?瀏司は続ける?」


「もちろん。だって使うとなくなるわけじゃん。それに、税金かかんだぜ?」


「税金?」


「つまり所得税ってやつ?大人になればそういう知識とか色々、俺達の知らない社会的なものがあるから。所得税が高ければ高い程、税金がかかるって事。当たるのは嬉しいけど、お金ってこえーからな」


「まあ…あっ!そういえば、瀏司って麻伊紫さんと親しいよね?」


「あー、何?妬いてんの?」


「いや、妬くと言うよりも、あんたを狙ってる気がしてならないから」


「いやいや、俺はその気ねーし!受け付けねーな」


「だとしても、今度、瀏司君の家に行ってみたーいとか言ってきそうじゃない?」


「…そうなると…ヤベーだろ?」


「当たり前でしょう!?確かに、裕香には言ってるけど、私、あの人だけは知られたくない!つーか、何か企んできそうだし。それに私、あの人、美人だから裏ありそうだし!絶対に連れて来ないでよ!」


「はいはい。俺達の愛の巣だからな」


「うん、そう……って!違うから!」


「ぷっ…」



吹き出しクスクス笑う瀏司。



「わ、笑わないでよ!」

「悪い、悪い。つーかさ、お前ってモテ系だよな?」

「えっ?」

「で?どんだけの男と付き合ったの?」

「は?何?いきなり恋愛の事を聞くわけ?」

「別に良いじゃん!同居してんだぜ?相手の事を良く知らねーと」


「いや、知る必要ないし!」

「じゃあ、お互い二人の恋バナどうよ?」

「恋バナ?えーー、やだよ」

「良いじゃん!」




私達はお互いの恋愛話をしたのだった。











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