第5話 ヤンチャな男の子とあおい

「理人様。あのくらまさんの何に皆は、恐いとしていたのですか?

私にはわからないのです。」


あおいからの突然の質問に理人様は、

「これから、きっとわかるに違いない。」

そのように言われただけでした。



居間にて理人様とあおいが過ごしておりますと、結月様が何やら知らせにきました。


「お客様です。まだ、お若いお姫様と男の子なのですけど、あおいのお友達でしょうか?

お通ししても?」


理人様は直ぐに誰かがわかります。


そうなのです。あおいの級友である、くらまさんとお姉様です。


お二人は居間に通され、結月様と共にお座りになりました。


お屋敷のお世話をしてくれる方が、お茶を用意頂く間に、会話が始まります。


「私は、しのと申します。この度は、弟のくらまが、大変失礼を致しました。また、お世話をおかけ致しまて、ありがとうございます。」


しのという、女性の横で、バツの悪そうな表情のくらまさんを、あおいは、じっと見ていました。


理人様は優しくお二人を迎え、

「いえ、無事に園へ行かれるようになったとの事。真に良かったです。」


結月様はその経緯を理人様から以前にお聞きになられており、こちらのお二人がその方々なのだとわかりました。


しのさんは、くらまさんにもご挨拶をと、促しますが、どうも、ふてぶてしいくらまさんです。

それをまた姉のしのさんが、叱るのでした。


理人様はその場をなだめ、あおいと仲良くしてもらえるようにお願いをしました。


あおいは、ずっとくらまさんから、目が離せない様子です。

じーっと見つめておりますと、くらまさんと目が合います。


驚いたのはくらまさん。

なぜ、そんなに見つめられるのかが、全くわからず、またそんな経験もなく、だんだんと、照れくさいかのように、お顔が、赤くなるのです。


「な、、なんだよ!、、み、見るなよ!!」


「こらっ!また、この子は!」

しのさんからのお叱りうけるくらまさん。

その様子を見ているあおいの姿を微笑ましく見ている理人様なのでした。



お二人がお帰りなり、その夜、あおいは、ずっと気になるのでした。

くらまさんの何処に皆は、恐がるのか・・・なのです。

考えても、全くわからないあおいなのでした。。。。



そうして、園に通い始めてあおいは、すっかり級友とも仲良くなり、日々楽しく過ごしておりました。


庭にでて、木の木陰で一人書を読んでおりますと、上から何やらハラハラと舞い落ちてきます。


勿論、開いている書の上にもです。


「あら?」

あおいは、上を見ますとそこには枝を片手に木の上にいるくらまさんが見えました。


あおいは、くらまさんが何を見ているのかが気になります。

そして、くらまさんの表情が気になりました。

あおいには寂しげなくらまさんに見えたのでした。


あおいは、くらまさんに声をかけてみることに。

「あの!、、何がみえるのですか?」


くらまさんにはあおいの声が聞こえないのか、全く気がついてくれません。


あおいは、また声をかけます。

「あの!、、そこから何がみえるの?」


「な、、なんだよ!なんで俺に話かけるんだよ!、、」


くらまさんはあおいに気がつくと、驚きます。なぜ、自分に構うのか?

ほっといて欲しいと思うのです。


しかし、そんなことは、あおいには通じませんから、

「そこからは、何が見えるのですか?」


くらまさんは、あおいに悪態をつきます。

「べつに。。何もないよ!!」


「私も見たいです!!」


益々くらまさんは驚きます。


「何にもないから!ほっといてくれ!」


あおいは、くらまさんの悪態などそっちのけでなんと、木に登ろうとし始めたのです。

それに益々焦るのは、そう、くらまさんでした。


「ち、ちょっとまて!、、な、、何で来るんだよ!登れるわけないだろ!!」



すると、

「あおいさん!!危ないから、降りてきなさい!」


あおいが木に登り始めて半分位の地点に来た時、他の級友が気が付き、先生を呼んで来たのです。



先生は、あおいを止めます。しかし、あおいは、くらまさんの見ているものが何かを知りたく先生に向けて言うのです。


「先生!きっと素敵なものが見えるんです!だから、見てきます!!」


これにはくらまさんもタジタジです。慌てて木から降りようとし、あおいを降ろす事を始めましたが、あおいは、足を踏み外し、落ちてしまいました。

しかし、落ちたはずなのに、痛みがさほどありません。


そうです、くらまさんの身体の上にあおいは乗っかる状態だったのです。


「いててて、、、」くらまさんが痛がっていると、先生も級友達が集まってきました。


そうして、叱られのは言うまでもありません。


しかし、なぜか、くらまさんがあおいをそそのかして、木に登らせたと皆が考えていたのです。


先生は、あおいだけではなく、くらまさんを叱ります。


「貴方が、彼女を登るように言ったのですね!」


「はぁ?、、言ってねぇよ!勝手に登って来たんだろ!!」


あおいは先生に自分が登ったことを話しました。

これには、皆が驚きを隠せません。

なぜ、そのような事をするのか、誰も理解できませんでした。


後に級友は、あおいに話すのです。

くらまさんには近づかないようにと。

彼は、やはり恐い人だからと。


皆がなぜくらまさんを嫌うのか、全く理解できないあおいなのでした。


そうして、今回の事は勿論、理人様に伝わる事になります。先生が、理人様からも注意を呼びかけたのでした。


そして、くらまさんには、しのさんにです。こちらには、頻繁に注意がなされておりました。


それだけ、くらまさんは、皆様からは、ヤンチャで、目立つ存在だったのです。


今回の事を反省するあおいなのでした。。。

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