陰キャだったせいで、義妹が陰口を叩かれていたので、努力してカッコよくなったらモテてしまった~事故で義妹とキスしてからクラスの美少女たちの様子がおかしい~
第四話 妹が可愛くなった、クラスの女子が怖くなった
第四話 妹が可愛くなった、クラスの女子が怖くなった
「くぅ……くぅ……」
スマホのアラーム音で、目を覚ますと、俺の隣で妹が寝ていた。
「……オーケー、落ち着こう。まだだ、まだ慌てるような時間じゃない」
そのまま急いで、布団をめくったが、お互いに服を着ていたので問題はなかった。どうやら、俺の知らない間に、一線を越えてたとかじゃないようで安心した。
「いや、もう一線は超えているのか……」
俺の服をつまみながら、眠っている雫の頭を撫でながら昨日のことを思い返す。その際、雫がピクッと動いたような気がしたが、気のせいだろう。寝息を立てて、眠っているんだし。
「色々、ありすぎただろう……」
人前で雫にキスされて、雫にほっぺにキスされて、雫に告白されて……。
「なんてラノベだよ……」
ちなみに、雫に告白されてからのことはあまり記憶にない。確かオンラインで、秀明とゲームしてたような気はするが、それだけだ。
気持ちよさそうに眠る雫を見て思うのは、俺は雫を家族だと思っていたが、雫は俺を異性として見てたということだ。どうしよっか……色々と考えないといけないことはたくさんある。
それでもだ。
「ありがとうな。まぁ、人生で初めての告白が妹とは思わなかったけどな。雫は不服かもだけど、可愛い妹に好きって言ってもらえて俺は嬉しかったよ」
そう呟いた瞬間、雫の顔が急激に真っ赤になった。ついで、ぷるぷると小刻みに震えていた。
「お、お前──」
「う、うぅぅっっっ………そんなこと不意打ちで言うなし……」
ガバッと起き上がった雫は、まるで耐え切れなくなったように、
「ま、ママー!」
そう叫びながら、一階のリビングに走って行った。
「ほわぁー! 待て待て待て!」
同じベットで寝てる兄妹。
顔を真っ赤にしてた妹。
普通に考えてヤバイ。
頭の中に浮かんだ言葉は、家庭崩壊だった。
確かに、義理の兄妹は結婚できるのだが、そういう問題でもなくて、慌てて雫を追いかけた。
何とも心臓に悪い朝だったとだけ言っておく。
※
「は? 嘘だろ……母さん」
口に運ぼうとしたご飯が、箸から落ちてしまった。ついでに、開いた口がふさがらなかった。
「何よ、別に変なことは言ってないでしょ。雫と付き合い始めたのかって、聞いてんのよ?」
「なんで知って……いや、付き合ってないんだけどさ」
ハッと気づいて雫を見ると、頬を真っ赤にしながらも、恨めしそうに母さんを見つめていた。
「何よ、雫ったらだらしないわねぇ……私が学生の頃なんて──」
嬉しそうに頬に手を当てながら、母さんは昔話を始めようとしたので慌てて止めた。
「親の恋愛事情なんて聞きたくないよ!」
「ママもいい加減にしてよ!」
親の恋愛話なんて地獄でしかないし、親に自分の恋愛事情を知られるのも地獄だ。ただ、話から察するに雫から漏れたような気がしないでもない。
そうなってくると、昨日の母さんが言っていた『ゴ──いえ、それは余計なお世話よね』って言うのが、とんでもない下ネタになってくるわけで……。
「もうやだ……」
※
それから、朝食を片付けて、雫と一緒に登校した。
玄関で雫が俺を待っていたのだ。まぁ、仲直り(?)したのなら一緒に登校することになるわな。
「ねぇ、おにい。私と一緒に登校できて嬉しい?」
いたずらっ子のような表情で、雫はからかうように聞いて来る。
「おにい、おにい、おにい~♪」
雫は、自身の頭で俺の肩を小突くようにぐりぐりとこすってくる。
「お前なぁ……!」
嬉しいのはそっちだろ、とは聞けなかった。
告白されたこともそうなのだが、雫の態度が昨日までと違いすぎて、落ち着かなかった。勿論、今の雫の方が可愛らしいし、こーう……雫らしいというか、素のままでいるような気しているのだ。
今に思えば、俺が雫に感じていた反抗期的というか不安定に思えた態度は、俺を避けていたからなんだと分かる。無理をしていたんだろうな。今の姿は、小学校の頃と同じ、甘えん坊な雫だった。
そんなことを考えながら、雫をボーッと眺めている時だった。
「あ、おにいもこれ食べたい?」
ハムハムと小動物のように食べていたお菓子──パッキーを見せてきた。
「よくもまぁ、朝ご飯を食べてからお菓子も食えるのな?」
「いいじゃん別に、お菓子は別腹だし、大好きなんだもん」
「そんなに食ってたら太るぞ」
「うっわ、おにいサイテー!」
そのまま、ゲシゲシと俺の脛を蹴ってくる雫。
「いたい、痛い! 悪かったって!」
甘えん坊な所は変わらないけど、やっぱりちょっと反抗期気味だ。
「太ってたって別にいいもーん。その時は、おにいにもらってもらうだけだから」
ニシシと、嬉しそうに笑いながら雫は肩を寄せてくる。
嬉しそうに、楽しそうに笑う雫を見ていると、何だか俺も少しだけ嬉しかった。
「もーう、おにいってば、何で笑ってるのっ! 言っておくけど、冗談じゃないんだからね」
頬を膨らませた雫が、不機嫌そうにパッキーで俺の頬を突いてきた。そんな風に、雫と談笑しながら登校している時だった。登校中の同じ学校の生徒達が、こっちを見てひそひそと話をしていた。
何か嫌な感じだ。
「?」
雫も気づいた様子だが、全く心当たりが無いようだった。
「おっす、鷹矢! 雫ちゃんもおはよ」
振り返ると、友人の秀明がやってきた。
「なぁ、秀明?」
「ん、ああー、これか」
周囲の生徒達に向かって、指さす秀明。その瞬間、生徒達はさっと顔を逸らして、足早に登校していった。デリカシーの欠片もない行動だったが、秀明らしかった。
「お前なぁ……」
「別にいいだろ。あいつらどっかに行ったんだし。安心しろよ、何かあったら、いつでも助けてやっから。約束だ」
ニカッと笑う秀明がイケメンに見えて、仕方なかった。
あいつ、こういう時だけはかっこいんだよなぁ……。
「中村さん、あれは……」
秀明に、雫が質問しようとする。
「ああ、そうだったな……ってかさ、昨日自分たちが何をしたのか覚えてる?」
「「あ」」
そうだった! 生徒達の前でキスしたんだった!
そりゃあ、俺達を実の兄妹だと思ってる周囲の生徒達は、そういう態度になるわな。嫌な感じとか言ってごめんね! 多分、キミ達の反応が普通なんだよね! 血が繋がっていないとか、知りませんもんね!
とはいえだ。
雫の方は大丈夫なのか? キスは雫からだったし、変な噂が立ってクラスでの居心地が悪いなんてことになったら、兄としては嫌だぞ。
「だから、周囲の奴らは実の妹に手を出した鬼畜兄貴って感じになってるんだよ」
「なんで、俺から手を出した事になってんだよっ!」
色々とおかしいだろ。
「方やモテモテの美少女。片や、ある時期から急にあか抜けた陰キャ男子。普通に考えて、そうなるだろ」
「た、確かに……」
嫌だけど、何か納得してしまった……あわわわ、どうしよう。
だが、一つ気になることがあった。
「雫ってモテてたのか……?」
俺のそのリアクションに呆れたようにため息を吐く秀明。
「雫ちゃん。今まで何人の男子に告白されたのか言ってやれ……ついでに殴ってもいいと思うぞ」
「え? えーと……十人超えたくらいから数えてないです……」
その辺に、石ころが落ちていたようなテンションで話す雫。
十人ってすげーな……もしかして、うちの妹ってかなり凄いのでは……?
「だ、大丈夫からねっ、おにいっ! 全員、興味ないって言って断ったから!」
勘違いして、慌てた様子の雫が慌てて俺に説明してくる。
ま、まぁ……周囲から見て、雫は被害者的な感じに落ち着ているならいいのか……? けど、そんな鬼畜兄貴を受け入れた妹って構図になるわけで……もう考えるのはやめよう。
セイッ!
俺は分からない問題を、一本背負いで放り投げた。
※
学校に到着すると、校門の右端と左端に、非常におっかない表情をした中世古遥香と五十嵐美咲が立っていた。まるで、神社とかにある怖い顔をした仏像のそれだった。
何て言うんだけ……そうそう、阿修羅とか不動明王みたいな奴だ。
そんな風に現実逃避しながら、気づかない振りをした。
だって、俺を見つけた瞬間、二人とも眉間に深いしわが刻まれたから。怒ってるのは分かる。そのうえで、良くないのは、怒ってる理由が分からないことだ。
二人に気づかないフリをしながら、校門をすり抜けようとしたら、
「グエッ……!」
遥香に後ろから襟を掴まれてしまい、断末魔のような声が漏れてしまった。
「ちょっと、鷹矢。何、逃げよとしてんのよ? 私が何で怒ってるか分かるわよね?」
ほらぁ、そうなると思った!
こっちは分からないから嫌だったんだよ、というか、その質問に答えられないのを分かってて、聞いてきてるだろ。
「ねぇ、鷹矢君。私達に気づかないくらい、妹さんと仲良かったんだね?」
こわい、こわい、こわい。
ニコッと微笑む美咲だけど、その実、私のことを無視するなんていい度胸してるね、みたいな意味を含んでそうだ。
「ねぇ、おにい。この人たちは誰?」
俺の腕を抱きながら、雫が文句を言ってくる。
秀明の姿を探したが、いつの間にかいなくなっていた。
あの野郎! 何が『何かあったらすぐに助けてやっから』だよ。一瞬で見捨てやがって!
あー、早く帰りたい……。
それから、三人にそれぞれを紹介するということで、一応の決着はついた。
いや、ついてないかも……むしろ、これからか……。
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最後まで読んでいただきありがとうございました!
フォローやレビュー、本当にありがとうございます。
モチベーションに繋がっており、楽しく書くことができています。
次回でございますが、腹黒ヒロインちゃん、五十嵐美咲の恋心になります~
この回を挟むと、明後日の回が凄く面白くなるのです……ゴゴゴ
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