2022年ハロウィン作品「ハロウィンを守った僕へ」
御等野亜紀
ハロウィンを守った僕へ
その年の10月半ばも過ぎた頃
僕は不思議な体験をしたんだ
森に入り込み
木の実を集める
遊んでるわけではない
これは学校にも行けない僕の
家での大事な役割
もう少しお金があったら
そう言って
よくお母さんは僕の頭をなでて
ため息をつく
そのため息は僕にも伝染しそうで
僕は勢いよく
木の実取りに飛び出すんだ
もう10歳歳を重ねたら
父が猟銃の使い方を教えてくれると言った
それまでは木の実が大事な食糧だった
父は出稼ぎに出ていて
わずかばかりのお金を稼いで
家に送ってくれるけど
妹2人と母の4人暮らしは厳しかった
木の実を拾っていると
ゴチンっと頭をぶつけた
あれれ
誰かと鉢合わせになったのは初めてだ
顔をあげるとカボチャのくりぬきを
かぶった男の子ぽいのがいる
ごめん、人がいるのも気づかなかった
かぼちゃは首を振った
ボクハ、キミヲ・・・ショウタイ・・・キタ
えーと、片言か・・・
僕より年齢は大きそうなのにな
そのカボチャ外してよ
どこに招待してくれる気なの?
遅くなるとお母さん心配するから
伝えに帰っていい?
シンパイ、イラナイ・・・ジカン、ナガレナイ
はい?
どういう意味だろう
突然、グイっとひっぱられ
かぼちゃのその人の顔がまじかに見えた
中に人の顔はない
人玉のような火玉が浮いてるだけだった
ヒッっと思い離れようとするけど
思うより力は強く離れられない
そして世界はフェードアウトした
昼なのに突然の暗闇
それが数秒後に晴れて
そこは先ほどの場所とは違った
「恩人が来た!祭りを始めよう!」
人ではないだろう
ハロウィンの仮装行列としか思えない人々が
いきなり陽気な音楽に合わせて
輪になっておどりだす
かぼちゃの頭に引っ張られて
ぼくはその踊りにくわわることになった
最初は半分どーとでもなれの気分が
踊っているうちに楽しくなっていく
楽しさで時間を忘れた頃
今度は座り込み
次々と運び込まれる食べ物を楽しんだ
まともにお腹いっぱいの肉を口にしたのは
始めてかもしれない
「なんで僕はここにいるの?
恩人って僕はなにをしたの?」
「まだ、正確にはしていないかな
今日の日を忘れないでほしい
私たちはハロウィンの魂
君はいずれ僕たちを救うことになる」
楽しい宴の後
連れて帰ってもらったのは
家の前だった
いくらかの料理のおすそ分けも貰った
母は僕がどこからか盗んだのでは
と心配したが
話を聞いても信じてくれなかったが
それでも食べ物が盗まれたものではない
という言葉に
次の日もニュースにならないのを見て
信じたようだった
まー地元の安新聞のニュースなんて
欠片ほどしか掲載はされていないのだけど
僕は学校に行けるようになったのは
小5からだった
だけど、飛び級制度があって
高校はみんなと同じに卒業して
大学も特待生として入れた
それから数年後
ハロウィンを無くそうという働きがあった
とてつもなく単純だけど
ハロウィンの騒ぎに交じって
大きな猟奇殺人が起きたからだった
無くそうとする活動は
とても規模が大きくなりつつあったけど
僕のレジスタンス的行動は
組織的になりひとつの保護団体まで成長し
ハロウィンは古より続く
貴重な文化遺産として残すことに成功した
もう貧乏な頃の僕はいなかったけど
思い出す度
ハロウィンを守り抜いた自分への
早すぎるプレゼントだったのだと思う
あの日が無ければ
ぼくはハロウィンを守ろうとしなかったかもしれない
でも僕は大人になった今でも
あのカボチャにまた会いたいと思う・・・
2022年ハロウィン作品「ハロウィンを守った僕へ」 御等野亜紀 @tamana1971
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