第10話
『なんだよ…まだ十時だぞ…』
「悪いが緊急通報がきた。手伝ってくれ」
『はぁ?何事だよ…』
「わからん。けど、俺と煉河だけじゃ手が足りない気がするんだ。巻き込まれてるのは弥生、天音、紗奈の三人は確定してる」
『天音が…。どこだ?』
「清水のショッピングセンターだ」
『なんだと!?そこには今ユキが…すぐに合流する!』
急に慌て始めた霊斗が通話をぶった切り、夜斗は切断音に顔をしかめた
「霊斗は?」
「来るってよ。なんか、雪菜もそこにいるらしい」
「ほんっとあの4人が行く場所被るといいことないな。前は非常用発電機から出火したろ、沼津のショッピングモールで」
「そんなことあったな。その程度のことならいいが…」
緊急通報は夜斗が弥生と紗奈に持たせた小型の端末から発報されるものだ
形状はスマホ用のキーホルダーだが、防犯ブザーのようにストラップを引き抜くと夜斗の端末に通知が飛ぶ
「ナビによれば渋滞はない。15分程度で着く」
「ああ…。落ち着けよ…」
「夜斗こそ」
「わかってる…。わかってるが…」
(ま、かくいう僕も落ち着いてるとは言えないか)
煉河の手は小刻みに震えている
夜斗は震えこそしていないが、所在なさげに視線がウロウロしていた
「…まさかテロ、なんてことは…」
「ないとは言い切れない。俺たちがどう動くかはその時に決める」
「…了解」
煉河は無理矢理手の震えを押さえつけてハンドルを握る力を強めた
20分後、合流した夜斗・霊斗・煉河の三人は、外から中を覗き込んでいた
中央の広場に人が集められており、銃を持った4人が周囲を囲んでいる
「テロ、だな」
「最悪の事態ってとこか。…大丈夫か霊斗」
「だだだ大丈夫だ。ゆゆゆユキが無事ならそれで」
「ダメそうっすね。煉河、霊斗。裏から入るぞ」
「警備がいるかもしれないだろ」
「大丈夫だ。鍵のかからない警備室の目の前の扉だが、入るとは思わん」
夜斗の道案内で裏口から侵入した三人
ここからどうするか、と裏方で話し合う
「っ!誰だこんな時に…」
夜斗のスマホに着信が入った
その発信者は…
「…冥賀…?」
夜斗は通話に応答することにした
少しだけ希望を胸に…
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