第5話
「先輩はどうしたいんですか?」
「渡したい。何なら明日夜、静岡のちょっといいレストラン予約したんだ」
「…むしろ私達に何を相談しに来たんですか?と問いただしたいですね」
「霊斗はどうやってプロポーズしたんだ?」
「は?言わねぇよ恥ずかしい」
「霊くんは私が二十歳になる前日にデートを申し込んできて、夜遅くまで色んなとこに行ったんです。最後に海岸で海を見てるときにこんな話をしました」
「待ってやめて許してください雪菜サン!!」
―――――――回想――――――――
「最後は海なの?」
「そうだよ。ここはある意味俺にとっては思い出の場所だ」
「海が思い出…?」
「初めて釣りをした場所。夜斗が車を買った時に初めて来た場所。夜斗が元カノに捨てられたときに慰めた場所。そして」
霊斗はポケットから箱を出した
「初めてプロポーズする場所」
「え…?」
「結婚してください」
「…はいっ!」
――――――――――――――――――――
「ああああああああああ!!」
「うるせぇな…。つかなかなかロマンチックなプロポーズだな。あれ今の回想の中で俺ちょっとネタにされてた?」
「細かいことはいいんですよ。まぁ要するにこんな感じでした」
「殺せぇ…!いっそ殺してくれぇ…!」
「いいじゃねぇか。誰かの入れ知恵かと思うくらいロマンチックなプロポーズだが」
「嬉しかったですよ」
「ユキが喜んでくれて何よりだけどあのときの俺は若かったんだァ…!」
「今も若いわ。やめろ、お前がそれ言うと俺が余計に老いて見られる」
参考程度にとメモする夜斗
霊斗は机に突っ伏したまま顔を上げない
「雪菜もわりとロマンチストだよな」
「好きですよそういうの。じゃなきゃあんな小説書きませんし…。うっ頭が…」
「なんで自分で埋めた地雷自分で踏みに行ったんだよ」
二人が机に突っ伏したため夜斗は二人が落ち着くまで紅茶を楽しむことにした
匂い、味、後味と順に楽しんでいると、ようやく霊斗が復活した
「おう起きたかロマンチスト」
「やめろ心にくる…。んで、参考になったのか?」
「まぁ多少は。あとは明日の俺が考えるだろうということにして、今はもはや優雅なティータイム」
「まぁ別にいいけどよ。現実逃避しても明日は来るんだぜ?」
「うぐ…」
「契約結婚だから当然受けてくれるだろうけど、惚れてるかどうか確認する目的なら計画は練っとかないと後悔するぞ。特にお前計画立てるの得意なんだし、やっとけばよかったとか絶対に思うぞ」
「何も言い返せねぇ…」
「先輩にかかれば大丈夫です。根拠はありません」
「そうだな謎ジレンマ」
「うっ!」
「なにそれ」
「なんでもねぇよ」
雪菜が書いていた恋愛小説のタイトルを言ってみると中々面白い反応が返ってきたためそれで終わりにした夜斗
「さて、じゃあ相談に乗ってくれたお前らに飯を奢ってやろう。何がいい?」
「「焼肉」で」
「肉食系め…。んじゃあ車出せよ、雪菜」
「はい。先輩どうします?」
「俺はバイクで行く。煮詰めたハチミツみたいな甘ったるい空間にいられるほど強い心は持ってないんでな」
「現地でいいのか?」
「ああ。いつもの店で」
「了解です。私たちは準備してくるので、先輩はなんか適当に待っててください」
「ういよ」
2階へとあがる二人の背を眺めて、フッと笑う夜斗
「強くなったんだな、バカ共が」
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