第11話

 モダンな作りの別荘に到着をすると暖炉のあるリビングに落ち着くことができた。その瞬間を待っていたかのように、急に雷雨が始まった。

「私がバスを取ってきますので、それまでこちらでお待ちください」

「こんな雨の中大丈夫ですか?」

「はい、雨合羽もありますし、慣れていますから」

 二渡は素早い動作で別荘を後にした。バスを取ってくるということは、本来であれば歩く必要がなかったのかと、陽介は不服を口にしたくなる。誰もそのことに関しても言及しないということは、それもわかっているということなのか。

「足を冷やした方が……」

 裕太が遠慮がちに言う。

「ちょっと、キッチンを見てくるわ。」

 率先して和香子が動き出す。それに茉莉と太一が続く。将平は浴室と思われるところから大きなバスタオルを持ち出し、留美にかけてあげていた。裕太は黙々と和香子がキッチンで見つけてきた氷嚢で留美の足を冷やしている。

「すみません。皆さん、本当は自分が動くべきなのに……」

 身体が動けない上に気持ちまで沈んでくる。みんなの動きに圧倒される陽介だった。

「いいのよ。動ける人が動けば。陽介さんだってそのうち役に立つでしょう」

 和香子の言葉にほんの少しだが救われる思いだったが、自分が役に立つことは何かと考えても、何も浮かんではこなかった。


 別荘に着いてから一時間以上が経過していた。あたりは真っ暗で、雷と共に雨は激しくなるばかりだった。

「二渡さん、今夜はもうここには来られないのではないかしら」

 和香子が窓の外を見ながら言った。

「そうだな。無理はしない方が良いからな」

「でも、留美さんが……」

 将平の言葉に太一が心配そうな顔をする。

「少し熱も出てきたようです」

 留美の傍についていた裕太が留美の額に手を当てている。

「アイス枕もあったから、持ってきます」

 茉莉がキッチンへと走った。そこに突然、別荘の固定電話が鳴り将平が出た。

「ああ、二渡さん、はい、はい、そうですか、わかりました。みなさんには私からお伝えしますので、はい、はい、こちらは大丈夫ですから、二渡さんもゆっくり休んでください。では、失礼します」

 将平の話の内容にみんなは無言で頷いていた。

「この雨で道路が不通になってしまったそうです。なので今日はもう二渡さんはここには来られないということです。私たちはここに泊まることになりました」

 誰も異を唱えなかった。

「じゃあ、お風呂を沸かしてくるわ」

「それは、私が」

 和香子を制して茉莉が浴室へと向かう。

「それじゃあ、何か食べるものを……と言っても、私、料理は苦手で……」

 和香子が頭をかく真似をしておどけた。

「僕がやります。冷蔵庫に野菜などがありましたから」

 意外にも太一がキッチンに向かう。頼もしい後姿だった。

「お手伝いならできるわ」

 太一に和香子がついていく。

「何か飲み物でも探しますか」

「じゃあ、それは自分が探してきますから、将平さんは座っていてください」

 将平がキッチンに向かうのを陽介が止めた。やっと自分にもできることが見つかったと思うと身体が自然と動いてくれる。陽介がキッチンに行くと、太一が手際よく野菜を刻んでいた。

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