第7話 ぼったくり店
「私って役に立てているのかな?」
「たってないな」
ケイジ先輩は即答してきた。分かってはいたけどはっきり言われると腹が立つ。私だって現場に駆けつけて・・・ と思ったところで今までの行動を振り返ってみた。
う~んと、先輩たちが脅すのを隣で聞いているだけのような気がする。
もしかして本当に役にたってないかもと自信がなくなってきた。
「なんで私って雇われているんだろう」
ルカの独り言のようなつぶやきに面白くなさそうにケイジ先輩が答える。
「社長がクビにしないということは何かしら理由があるんだろ」
「えっ、何かな?」
「知るか」
ルカを置いていきそうな勢いでどんどん進んでいく。社長に必要とされていることが分かって少し機嫌が良くなったルカは慌てて後を付いていった。
「そういえばタイガ社長って、やっぱり社長やるくらいだから凄く強いんですか?」
ケイジ先輩の背中に向かって呼びかけるようにしてたずねてみた。
「いや。めちゃくちゃ弱いぞ」
なぜと疑問に思ったルカのスマホが警報音を出した。SOSの音だ。
これは会員になるとスマホアプリのボタンを押すだけでゴクアク警備会社に通報が行くシステムのものだ。
毎月500円で3万人の会員がいるそうだ。これだけでも1500万円の収益だ。
録音モード、通話モードも付いて、スマホに耳をあてるとSOSを発信した人とお店側とのやり取りが聞こえる。どうやらぼったくりのお店に引っかかってしまったようだ。
GPSをチェックして向かうことにした。
お店側の男達もケイジ先輩に負けないくらいのイカツイ奴だったが、警報を受信して近くにいた先輩たちが次々と駆けつけることで話も優位に進められた。
10万円の飲食代請求も、呼び込み時に言われた金額の3000円の支払いで済んだ。
「ゴクアクの会員かよ。めんどくせえな」
店員の一言が耳に残る。もし会員でなかったら半強制的に払うしかなかったのだろうか。
私も会員になっておこうかなとルカは思ってみた。
帰り道にふと思った疑問を聞いてみた。
「そういえばこういった店とかでヤクザが出てきたらどうするんですか?」
「ヤクザとはやり合わない。警察に通報するよ」
少し臆病のような感じもしたが、確かにそこの一線をちゃんと守っているからこそ会社として成立しているんだろう。この絶妙なバランス感覚を保てていることが一番難しいことのように思えた。
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