第2話 猫の里

ブォン…ブォン…

1tのハンマーを振り回しながら里の出口で、ももにゃんが待っている。


「あっ!ももにゃん、お待たせなのだ!」


「やっと来たわね。もぉ遅いから素振り1000回しちゃった。」


「甲子園でも目指してるのかにゃ?」


「違うわよ!行くわよ。いざ久遠様の元へ!」

太陽に向かってハンマーを空高く振り上げる。


「予告ホームランみたいでカッコイイにゃ」


「そんなことより、どこに行くかちゃんとわかってるわよね?」


「わかってるのだ。三毛ノ森を抜けた先にある猫神様の洞窟のなのだ。」


「そうそう。お祭り以外であの洞窟に行くなんて変な感じね」


「よし!じゃあ出発にゃー」


「にゃんまる!」


「なんにゃ?」


「そっちは逆。」


「はにゃ!?」

そう。彼は方向音痴である。


猫の里は人間界と遮断されるほど深い森で覆われており、森の名前は「三毛ノ森」と言われている。

森は外側が白ノ森、中間層が赤ノ森、中心部に黒ノ森と3層が人間界と猫の里を分けている。

自然豊かで穏やかな白ノ森。

野生動物が多く住み着きほとんど人も訪れない赤ノ森。

ほとんど日の光も入らず魔物が出ると言われてる黒ノ森。


人間界から来ても猫の里から入っても白→赤→黒の順になっていて、黒ノ森に入ろうとする人はほとんどいない為、猫の里を訪れるものはいない。


猫神様の洞窟は猫の里側の赤ノ森にあり、祭事や弔事(ちょうじ)に使われる猫たちにとっては神聖な場所になっている。

猫の里で猫たちは100歳(人間の歳でいう10歳)を迎えると見習いの儀という洗練を受け忍者を目指す修行が始まる。

その儀式を行うのが『久遠』という猫で神様に近い存在なのである。


「それにしても久遠様ってどんな方なのかしら?」


「わからないのだ。生まれた時に会ったみたいだけど覚えてないから楽しみなのだ」


「そうね。わたしも覚えてない。きっと素敵な方だと思うわ。大人の色気があって包容力のわだかまりだわ。きっと」


「ももにゃん、それを言うなら、かたまりにゃ」


「うっさい、殴るわよ!」


「ひぃぃぃ」


「にゃんまるはどんな方だと思うの?」


「ん〜そうだなぁ?いかにも仙人みたいでエッヘンって感じだと思うにゃー」


「なるほど。まぁその線もあるかもね。とにかく早く会いたいわ」


「急ぐにゃー!」


「にゃんまる。こっちよ。」


「んぐっ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る