CryptoNyanco~千猫物語~
ミャース
はじまりの巻
第1話 吾輩はにゃんまる
忍者の里のさらに奥地に猫が住み着く里があった。
トントントントン、軽快な朝のリズムが鳴り響き、美味しそうな匂いに包まれて優しい声が聞こえてくる。
「にゃんまる〜起きなさ〜い、ご飯だよ〜」
ドタンバタンピョーン。慌ただしく黄色い猫が、まるで落ちるかのように降りてくる。
「にゃははは。もう起きてるのだぁ〜」
勢いよく椅子に座ったと同時にパクパクご飯を食べ始める。
「まったく相変わらず慌ただしいわね。そんなに急いで食べるとノドに詰まるわよ」
「ムシャムシャ…そんなの平気。大丈夫なの…んぐっ…」
「ほら。言わんこっちゃない」
姉がトントンとにゃんまるの背中を叩く
「ふぅ苦しかった。今日は特別な日だからワクワクが止まらないのだ」
にゃんまるは目をキラキラさせて姉を見つめる。
「久遠様は逃げたりしないからゆっくり食べなさい」
この里に住む猫達は人間の1/10スピードで成長する。長生きの猫だと何百年も生きるという不思議な猫。
そして人間年齢で10歳の誕生日を迎えると久遠という昔から生きている伝説の猫の洗練を受ける儀式を行う習わしがある。
この日は今年10歳の誕生日を迎えたにゃんまるが久遠の洗練を受ける日だった。
「姉ちゃん、久遠様ってこわいの?」
「久遠様は優しい方よ、少し変わってるけど、もう長いこと生きているから目が合うだけで全てを見透かされる感じがするわ」
「そうにゃのか。まぁこわくないならいいや」
「にゃんまる〜」
家の外から女の子が呼んでいる。
ドンドンドン…バキッ
「あっ!この音はももにゃんだ。またドアが壊れたにゃー」
壊れたドアの穴からももにゃんが話しかけてくる。
「にゃんまる準備出来た?遅刻しちゃうから早く行くわよ」
「えっ!もうそんな時間?まだ朝の6時だけど」
「あれ?おかしいなぁ?私の時計は9時12分だったから急いで来たんだけど…」
「9時12分?…ももにゃん、どこで時計みた?」
「えっ?ベットで寝ながらみて、9時過ぎちゃってたから焦って急いで出てきたのよ」
「…ももにゃん、それ時計を横から見ちゃってるのだ」
「………えっ!?」
そう。彼女は天然である。
「ところでももにゃん、後ろの大きな荷物はなんなのだ?」
「えっ?これ?久遠様に会いに行くからお菓子とお弁当と、泳ぐかもだから着替えに、お祭り用の浴衣、寒いと困るからこたつと、落とし穴の仕掛けと鍋……」
姉(……久遠様と何をする気なんだろう)
「ももにゃん久遠様を食べる気なのか?」
「たっ…食べないわよ!もぉ!」
叩かれたにゃんまるが弧を描いたように木に刺さった。
「あれ?にゃんまる、どこ?」
...プシュー
「こっ…ここなのだ…」
「何やってんのよ!木に刺さって遊んでないで早くご飯たべなさいよ!」
「わ…かっ…たの…だ、ガクッ……」
「あれ?にゃんまる?また寝ちゃったの?里の出口で待ってるから、ちゃんと準備してきなさいよ!」
桃色で一見可愛い彼女は怪力の持ち主なのである。
包帯でぐるぐる巻きのにゃんまるが再び食事に戻る。
「姉ちゃんも久遠さまの修行を受けたんだよね?」
「そうよ。懐かしいわ。あの頃はまだ雑賀にいたのよ。みんな元気にしてるかなぁ?」
「修行って大変だった?」
「そうね。初めは忍者としては右も左もわからない状態だったから苦労したわよ。とはいえ私もまだまだ修行の身。CryptoNinjaになってからが本当の修行の始まりって感じかしら。」
キラキラした目で姉を見つめるにゃんまる
「かっこいいにゃ〜」
CryptoNinjaというのは忍者の中でも特に秀でた忍者の呼び方で、この世界では憧れの存在になっている。
忍者は見習いから始まり下忍、中忍、上忍と位を上げ、上忍の中でも限られた選ばれし者にCryptoNinjaの称号が与えられる。
「ごちそうさまでした。それじゃ、行ってくるにゃー」
「いってらっしゃい。無理しないでね。」
「一人前の忍者になってみせるにゃー!!!」
「にゃんまるー」
「なんにゃー?」
「そっちは逆よー」
「はにゃ!?」
そう。にゃんまるは方向音痴であった。
…あの子、大丈夫かしら…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます