一番の戦士

 その日、いつものように丘の上にやってきたティルヤは一人では無かった。

 彼はその後ろに五人の同族を連れていた。


「どうしたんだ? いつもとは違うみたいだな」

「ああ、二人に頼みがあるんだ」

「それは後ろの連中にも関係があるのか?」

「そうだ。俺と一緒にこいつらにも剣を教えて欲しい」


 それを聞いたクラウスは、ティルヤとその後ろに立つ亜人たちを見回した。


「何があったんだ?」

「部族の中で力試しをした。誰も俺の相手にはならなかった。剣でも組打ちでも、俺に敵う者は部族の中にはいない。それで皆に頼まれたんだ。戦い方を教えて欲しいと。だが、教わるなら俺よりも二人に教えて貰ったほうがいいと思った」


 そこまで言って、ティルヤは後ろの仲間たちを振り返った。


「そう言ったんだが、皆二人を恐れているらしい。この五人だけがついてきた」


 クラウスはアディメイムを見た。

 彼はいつもの穏やかな笑みを浮かべ、頷いた。

 クラウスも笑みを浮かべ、ティルヤに向き直る。


「俺らはかまわんが……お前相手にやってるのと同じようにやればいいのか?」

「もちろん、それでかまわない」


 そのティルヤの頼みを二人は受け入れ、相談したのちに、まず一人一人の動きを見てみることにした。


「ティルヤ、一人ずつ相手をしてみて貰えるか? 皆がどの程度の腕前なのか確認したい」

「わかった。軽く打ち合って見ればいいか?」

「ああ、それでいい」


 ティルヤは頷き、亜人の一人に木剣を手渡した。

 それから、皆から少し離れたところまで歩いて行く。

 二人はそこで向かい合い、木剣を構える。


「合図はいるか?」

「いや、大丈夫だ」


 クラウスの問いに答えた後に、ティルヤは対峙する亜人に向けて言葉を掛ける。


「さあ、始めよう」


 ティルヤがそう口にした次の瞬間、亜人は手にした木剣を振りかぶって前に出た。

 だがティルヤはするりとその脇を抜けて背後に回り込み、後ろからその首筋を打つ。

 打たれた側は、首を押さえ、痛みを堪えるように顔をしかめる。


 一瞬で勝負がついてしまった。

 相当に実力の差があることがわかる。


「ティルヤ、次は手を出さずに防御に徹してみてくれ」


 クラウスの言葉にティルヤは頷きを返し、再び相手と対峙する。


 ティルヤと対峙する亜人は、今度はいきなり飛び掛かったりはしなかった。

 先程一瞬で敗れてしまったせいか、手を出しあぐねているように見える。

 ティルヤはクラウスの言葉を守って、自分から手を出そうとはせず、相手の亜人の様子をじっと見ていた。


 やがてしびれを切らしたのか、様子見をしていた亜人は、間合いを詰めながらティルヤに打ちかかる。

 ティルヤはそれを後ろに下がりながら躱す。

 相手はそれを必死に追いながら木剣を振りまわすが、ティルヤには届かない。

 ティルヤはある程度後方へと移動したのちに足を止めた。

 そして今度は斜め前方へと踏み出して、彼を追う相手の側面に移動し、そのまま背後へと回り込む。


 相手は慌てたようにキョロキョロと周りを見回し、それから後ろを振り返った。

 その様子を見る限り、いつ背後に回り込まれたのか、分からなかったのだろう。


 ティルヤはそのまま三分ほど相手を翻弄し続け、一太刀も受けること無くその攻撃を躱し続けた。

 相手の亜人は疲れ果てたのか、肩で息をしている。

 ティルヤはと言えば、平然とした表情をしており、息一つ乱していない。

 クラウスが二人に声を掛け、そこで立ち合いを止めた。


「じゃあ相手を交代するか。お前はまだ疲れてないよな?」

「もちろんだ。問題無い」


 クラウスの問いにティルヤは自信に満ちた頷きを返す。

 その後、ティルヤは五人全員を順に相手にしていった。

 見たところ、五人の亜人たちの力量は皆似たようなものだった。


 皆、体を動かす事には慣れているのだろう。

 運動能力は高そうだが、戦う為の効率化された動き方を知らないせいで、ティルヤに軽くあしらわれてしまっていた。

 移動時の足運びは緩慢でドタドタとしており、その動作のせいでいつ攻撃してくるか丸わかりになってしまっている。

 攻撃も単発で大振り、木剣を振るたびに身体が流れており、初撃を外した後のことなど考えていないように見える。

 また、必要以上に力んでしまっており、動きが固くなっている。

 ティルヤの緩急のある流れるような動きと比べると、滑稽な程にぎくしゃくした動きに見えた。

 視線も常に攻撃する箇所に向いているため、どこを攻撃しようとしているかも丸わかりだ。


 その亜人たちの様子を見ているうちに、クラウスはティルヤに初めて技を教えたときの事を思い出していた。

 当時のティルヤはまだ子供だった。

 そのせいで、今の彼らよりも酷い有り様だった様に思う。

 その子供が、ここまで強くなったのだ。

 本当に良くここまで成長したものだと、感慨深くなる。


 クラウスがそんな事を考えていると、ティルヤが戸惑ったような表情を浮かべながら首を傾げ、視線を向けてきた。


「なぜ笑うんだ?」

「ん? ああ、昔を思い出してたんだ。強くなったもんだと思ってな」


 それを聞いたティルヤは、それが自分の事なのだとわかったのだろう。

 その顔に苦笑を浮かべる。


 クラウスは、五人の亜人たちに再び視線を向けた。

 最初は皆こんなものなのだろう。

 それは仕方が無い。

 彼らは自身に足りない物を身に付けるためにここに来たのだ。

 たゆまず鍛錬を積み重ねていけば、いずれ戦いに適した動きが出来るようになる。

 あとはやる気の問題だ。


「まず基本的な動作を繰り返して体に覚えさせないと駄目だろうな」


 言いながら、アディメイムに視線を向ける。

 そのクラウスの言葉に同意を示す様に、アディメイムは笑みを浮かべ頷きを返してくる。


「やはりそうか」

「まあ、最初はな。お前もそうだったろ?」

「ああ……もうずいぶん昔のことのような気がするよ」

「七年前だったか? 俺には昨日のことのように思えるけどな」


 七年という月日は決して短いものでは無いだろう。

 だが今のクラウスにとっては、本当についこの間の事のように思えていた。

 そんな事を考えながら、この七年間の出来事を思い返していたクラウスは、ティルヤの声で現実に引き戻された。


「二人に頼みがあるんだが、聞いて貰えるか?」

「何だ?」

「皆の前で、二人の勝負を見せて貰えないか?」

「俺らの勝負を? まあそれは別に……いいよな?」


 そう言ってアディメイムに同意を求めると、彼は静かに頷いた。


 クラウスはアディメイムと目を合わせたまま苦笑する。

 対するアディメイムは、そのクラウスの表情の意味を尋ねるように眉を上げ、わずかに首をかしげて見せた。


「いや……教え子に無様な姿を晒さなきゃいけなくなったんでな」


 クラウスはそう口にして笑みを深くする。

 アディメイム相手では、ほぼ勝ち目が無い。

 さっきまで、ティルヤ達には偉そうに色々と言っていたが、今から自身が無様に負ける様を彼らに披露しなければならなくなってしまった。


 アディメイムと出会ったばかりの頃に比べれば、相当に強くなったつもりではいる。

 あの頃は三十回に一回勝てるかどうかと言う程度だった。

 今は十回に一回程度は勝てるようになっている。

 当時と比べたら、随分とその差を縮めることが出来てはいるが、それでもまだまだ遠く及ばない。


 クラウスは大きく一つ息を吐いて、アディメイムと向き合った。

 今から新しく増えた弟子たちの前で、無様な姿を晒さなければいけない。


 それを考え、苦笑を浮べたクラウスの表情を見て、アディメイムもまた困ったような笑みを浮かべていた。


「気遣いは無用だ。いつも通りでやってくれ」


 その言葉に、アディメイムは笑みを深くして頷きを返す。


 大きく息を吸い、そして吐き出す。

 彼我の力量の差は、これ以上無いほどに理解している。

 余計なことを考えている余裕など無い。

 毎日毎晩、そのようにして彼に挑み続けてきた。

 いつも通りに、眼前のアディメイムの動きに全神経を集中させる。


 先に動いたのはどちらであったか。

 二人はほぼ同時に剣を繰り出していた。


 クラウスの剣はアディメイムの肩をかすめ、アディメイムの剣はクラウスの左胸を貫いていた。


 膝をついたクラウスは、自身の胸から刃が引き抜かれるのを、痛みに歯を食いしばりながら眺める。

 傷は一瞬で消え、それと共に痛みも消える。

 クラウスは大きく息を吐き出し、それから立ち上がって笑みを浮かべた。

 そうして再びアディメイムと向かい合う。


 二人は三度手合わせをした。

 クラウスは運良くそのうちの一回に勝利する事が出来た。


 亜人たちの反応が気になり、彼らの様子を窺う。

 傍から見ていた彼らには、つまらない勝負に映ったのではないだろうか?

 派手な技や攻防などはほぼ無い。

 二人の勝負のほとんどは、一瞬で決着がついてしまう。


 彼らが見たところで、何をしているのかも理解できないだろう。

 片方が剣を一振りしたら相手が倒れた……その程度の認識しかないのではないか。

 長い間二人と手合わせをしてきたティルヤであればともかく、彼らではそこから何かを学び取ることも出来ないはずだ。

 彼らの顔を見ると、案の定ぽかんと口を開けて、二人が何をしたのか理解できている様子はない。

 あっけなく終わった……くらいに思っているのだろう。


「ティルヤ、これで良かったか?」

「ああ、大丈夫だ」

「あまり参考にならなかったんじゃ無いのか?」

「いいんだ。何をしているのかもわからない程に、技量の差があるんだって事がわかればいい」

「それもわかって無さそうだぞ?」

「俺があとで説明しておく」

「そうか」


 クラウスは苦笑し、アディメイムに目を向ける。

 彼もまた、楽し気な笑みを浮かべていた。


「立ち方や動作の基本なんかは、お前も教えてやれ。戻ってからも空いている時間があれば練習出来るだろ? 最初はひたすらに反復して身体に覚えさせることが大事だってことを教えてやってくれ」

「ああ、わかった」


 そうして、五人の仲間たちと共に帰ろうとするティルヤに向かって、クラウスが声を掛けた。


「じゃあな、先生」

「先生?」

「あいつらにとってはお前も先生だろ?」

「ああ……」


 クラウスのその言葉にティルヤは苦笑する。

 そして、その場で立ち止まりクラウスとアディメイムの二人に交互に視線を向けた。


「クラウス、アディメイム……ありがとう」


 ティルヤが突然口にした感謝の言葉に、クラウスとアディメイムはお互いの目を見合わせた。


「なんだ? 急にどうした?」

「俺は二人にまるで歯が立たない。だから自分の強さがどれ程のものなのかわからなかった。だが知らないうちに、部族の誰よりも強くなっていた。これまで二人に鍛えて貰ったおかげだ」

「まあ……俺たちも手助けはしたがな。強くなったのはお前自身が真剣に鍛錬に打ち込んだからだ」


 アディメイムも、クラウスのその言葉を肯定するように頷く。


「じゃあ、また明日な」

「ああ、また明日」


 クラウスとアディメイムは手を上げてティルヤを見送る。

 ティルヤもそれに手を上げて応え、仲間たちの後を追って帰っていった。




 その日から、五人の亜人たちもティルヤと共に丘の上にやって来るようになった。

 新たに来た五人には、ひたすらに素振りや運足うんそく等の基本的な動作を繰り返させた。


 彼らは実戦に近い打ち合いばかりをやりたがった。

 もちろん、そういった鍛錬もやらせてはいたが、それよりも基本的な動きを身に付けさせることを優先した。


 打ち合いの最中さなかであっても、教えた動きが出来るようにと言い聞かせた。

 彼らもまた、意識して教えた通りに動こうとしているようだが、流石にまだ難しいようだ。

 また、相手を目の前にした状態で、自身の動きを気にするほどの余裕もまだ無いのだろう。


 何千回、何万回と繰り返して身体に覚え込ませ、無意識の内に身体が動くようにしなければならない。

 先日始めたばかりの彼らに、いきなりそんな事が出来るとは思っていない。

 だが、このまま地道に鍛錬を続けていけば、いずれその動作を体が覚えて、その動きも洗練されてくるだろう。

 彼らからすれば単調でつまらない鍛錬かもしれないが、それらの動きが身に付き、その効果を体感出来るようになれば意識も変わるだろう。




 そんな日々が半年程続いた、ある日の午後。

 五人の亜人たちの動きも良くなり、最初の頃の拙さがほとんどなくなった頃。

 いつものように丘の上にやってきたティルヤは、その後ろに十五人程の仲間を引き連れていた。


 クラウスは笑みを浮かべ、その一行を迎え入れた。


「なんだ? 今日は随分人数が多いな」

「ああ。こいつらにも指導をしてやって欲しいんだが、多いだろうか?」

「まあ、俺らは大丈夫だが、一人一人を見てやれるほどの余裕はさすがに無いかもな」

「もちろん、それで構わない」

「それにしても、また何かあったのか?」

「あの五人も皆強くなった。それを見て、この丘の上に来たいという奴が増えた。未だにこの丘に近付くのを恐れている者も多いが、それでもこの先ここに来たがる奴は増えると思う」


 その言葉を聞いてクラウスは笑い、アディメイムに視線を送る。

 彼もまた楽し気な笑みを浮かべていた。

 まだ増えそうだと言う事だが、最終的にはどこまで増えるのだろうか?

 流石にこの丘の上を埋め尽くしたりすることはないだろうが。


「そうか。そりゃまた、忙しくなりそうだな」


 そうして、二人の住む丘の上を訪れる亜人たちの数は少しずつ増えていった。

 数が増えるにつれ、彼らに直接指導する機会は少なくなっていったが、皆が切磋琢磨して技を磨き、その上達を競い合うようになった。

 その中で、ティルヤは一人飛び抜けた強さを持っており、皆からは敬意を払われているようだった。




 そうして、また時は過ぎていった。

 ティルヤと出会ってから、既に十五年の時が過ぎていた。

 アディメイムと打ち合い、その合間の時間に景色を眺め、亜人たちに剣を教える。

 クラウスとアディメイムは、今も変わり映えのない毎日を過ごしている。

 変わった事と言えば、丘の上へとやって来る亜人たちの数が増えたこと。

 そして、ティルヤに新しい家族が出来たことだろう。


 ある日の夕方ごろ、鍛錬を終えて帰ったはずのティルヤが再び丘の上にやってきた。

 その後ろには、赤ん坊を抱いた女の亜人を連れている。


「どうした? 何かあったのか?」

「家族を紹介したくて連れてきた」


 その言葉にクラウスは驚き、ティルヤの後ろに立つもう一人の女の亜人に目を向ける。

 その亜人は静かに頭を下げ、口を開いた。


「ティルヤの妻サフラブです。お二人にお目にかかれて光栄です」


 その言葉にクラウスは再度驚き、ティルヤを見て、再びサフラブと名乗った亜人に視線を戻す。


「ああ、なんだ……知ってるかもしれないが、俺はクラウスで、こっちはアディメイムだ」


 何故か動揺しながら、クラウスは自己紹介をする。

 それに対し、サフラブは再び二人に向かって頭を下げる。


「はい、夫からいつも聞いて存じております」


 クラウスは再びティルヤに視線を向けた。


「お前結婚してたのか? 初めて聞いたぞ? じゃあ、その赤ん坊はお前の子か?」

「そうだ。ルトゥラと名付けた。この子を抱いてやって欲しい」

「よろしいでしょうか?」


 ティルヤの言葉に続いて、サフラブが近付いてきて、伺うようにクラウスを見る。


「ああ、ああ……勿論だ」


 相変らず動揺したまま、クラウスは差し出された赤ん坊を恐る恐る受け取り、その腕に抱く。

 クラウスは子供の頃に過ごしていた孤児院で、赤ん坊の世話をした事があった。

 亜人の子を抱くのは初めてだったが、人の子とさして違うわけでも無い。

 静かに眠るその姿は弱々しく、無防備なその姿を見ていると、うっかり傷付けてしまいはしないかと心配になってしまう。


 そうして赤ん坊を抱いているクラウスの姿を見たティルヤが、驚いたような表情をその顔に浮かべる。


「慣れてるんだな。俺は最初間違った抱き方をして怒られたんだ」


 意外そうな表情で語るティルヤに、クラウスは笑みを返す。


 そうしてしばらく抱いた後に、そばに立つアディメイムに赤ん坊を手渡した。


 アディメイムは慣れた手つきで子供を抱き、あやす様にゆらゆらと揺らす。

 その顔には、いつもの穏やかな笑みを浮かべていた。

 いつもと変わらない筈のその表情が、何処か悲しげに見えたのは気のせいだろうか?


 ふと、昔聞いた英雄アディメイムの物語を思い出す。

 彼には二人の子供がいたが、その子らは幼くして命を落としてしまったと言われている。

 それ以降、彼はおかしくなってしまったのだと伝えられていた。


 クラウスの知る英雄の物語は、どこまでが本当の話なのだろうか?

 いつも穏やかな笑みを浮かべている彼を見ていると、おかしくなってしまっているようには見えなかった。

 あるいは、この世界に来てから変わったのだろうか。


 そんなことを考えているうちに、アディメイムが抱いていた子供をサフラブに返していた。

 母親の腕に抱かれた子供は、静かに眠り続けている。


「男の子なのか?」

「ああ、そうだ」

「将来は戦士にするのか?」

「ああ、出来ればそうしたい」

「そうか。小さいうちからあまり厳しくするなよ。嫌々やらせてもいいことは無いからな」

「大丈夫だ。この子には、二人の戦士の事を話して聞かせようと思ってる。俺が憧れ、俺を鍛えてくれた戦士の話を……俺が見てきたままに伝えるつもりだ。そうすれば、きっとこの子も戦士を目指すだろう」


 そのティルヤの言葉を聞いたクラウスは、苦笑する。

 二人の戦士というのは当然、クラウスとアディメイムのことだろう。


「勘弁してくれ。大袈裟に話し過ぎて、実際に顔を合わせたときに幻滅されたりしたらどうする」

「大丈夫だ。きっとそうはならない」


 そう言って、ティルヤは楽し気に笑う。


 あの日、恐る恐る近付いてきた子供……あの弱々しかった子供が逞しく成長し、いつの間にか父親になっている。

 さまよい人であるクラウスたちとは違い、亜人達は皆成長し年を取って行く。


 クラウスはもう一度、母親に抱かれて眠るルトゥラを見た。

 この子はどんな大人になるのだろう?

 ティルヤの言う様に、戦士を目指してこの丘にやってくるのだろうか?

 父親のように、皆に慕われる存在になったりするのだろうか?


 時は瞬く間に過ぎてゆく。

 この子の成長もあっという間なのだろう。

 きっと父親と同じように逞しく育つに違いない。




「あの震えてた子供が、いつの間にか父親になってたとはな」


 ティルヤが家族と共に帰っていく後ろ姿を見送りながら、クラウスは呟く。

 アディメイムに目を向けると、彼もその顔に感慨深げな表情を浮かべていた。

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