死の気配
クラウスが初めての依頼を完了した二日後の朝、彼はローザと共に町の北側の外れを訪れていた。
そこでは不敗の刃の面々が集まっており、クラウス達を待っていた。
「クラウス。待ってたぜ!」
リーダーであるコンラートが手を挙げて二人を迎える。
クラウスも手を上げてそれに応える。
コンラート以外のメンバーがクラウスとローザに興味深げな視線を向けていた。
それに対して笑みを浮かべながら、クラウスは自己紹介をする。
「クラウスだ。こっちは俺の雇い主のローザ。今回二人で同行させて貰うことになった。よろしく頼む」
「初めまして。ローザよ。よろしくね」
「ああ、二人ともよろしく」
コンラートが笑顔を浮かべて歓迎の意を示す。
そして不敗の刃のメンバーも口々に挨拶を返して、自己紹介を始めた。
メンバーは全部で五人。
戦士でリーダーのコンラート。
同じく戦士のボリス。
斥候のマルク。
そして魔術師のエルネスタと治癒術師のマヌエラ。
その全員の自己紹介が終わった後に、クラウスが口を開いた。
「実はもう一人いるんだが……」
「もう一人?」
「ああ、俺の相棒だ」
そう言って、クラウスは腰の剣を剣帯から外して持ち上げて見せた。
しばらく共に行動する以上、クドゥリサルの事は伝えておいたほうがいいだろうと、前日に三人で話し合ってそう結論を出していたのだ。
「おう、俺はクドゥリサルだ。よろしくな」
「今のは……?」
「剣が喋ったのか?」
クドゥリサルの声を聞いた不敗の刃の面々が驚きの声を上げる。
「えっ、スゴイ……すみません、その……す、少し見せて貰ってもいいですか?」
そう言って魔術師のエルネスタがクラウスのほうに近付いてくる。
興奮しているのか、その声は僅かに震えていた。
「おう、俺みたいなのを見るのは初めてか?」
「えっ、あ、はい、初めてです。……凄い! これ、とんでもない価値がある剣なんじゃ……どこで手に入れたんですか?」
「友人に譲って貰ったんだ」
頬を上気させ、上ずった声で尋ねてくるエルネスタに、クラウスは笑顔を浮かべて答える。
すると、今度はコンラートが恐る恐ると言った体で声を掛けてくる。
「なあ、その……良かったら少しだけ持たせて貰えないかな?」
「俺はかまわんが、どうだ?」
「おう、別にかまわんぜ」
彼らに持ち上げられて気を良くしたのか、クドゥリサルはそれを快く承諾する。
クラウスは鞘を手にして、剣の柄をコンラートに向ける。
「え? 抜いてもいいのか?」
「勿論だ」
コンラートは柄を掴み鞘から剣を引き抜く。
彼が手にしたクドゥリサルの刃には、傷一つ無い。
まるで鏡のようなその刃に、彼はしばらく見入っていたが、やがて溜息を吐く。
「……スゲーな。なんだか手にしてるだけで強くなったような気分になるよ」
「おう、そうだろう、そうだろう」
クドゥリサルが上機嫌で答える様子を、クラウスは笑みを浮かべながら眺めていた。
やがてコンラートが名残惜し気な表情で剣を差し出す。
クラウスはそれを受け取り鞘に戻した。
「ありがとう。俺もいつかこんな剣を持てるように頑張るよ」
「おう、頑張んな」
相変らず上機嫌なようすで、クドゥリサルが言葉を返す。
コンラートはそれに笑みで応え、大きく息を吐く。
そして、意識を切り替えたように表情を引き締めた。
「聞いてるとは思うけど、依頼内容はちょっとした調査なんだ。森の中に入ったきり戻ってこない村人がいるらしくてさ。その調査の依頼を俺らと同じ銅の位階のパーティが受けたんだけど、そいつらも帰って来なかった。で、今度は俺らがそのパーティの捜索依頼を受けたのさ」
捜索依頼を出したのは冒険者組合だった。
依頼内容としてはまず、行方不明となったパーティに何があったのかを調べること。
さらに余裕があれば、元々の依頼内容である村人の捜索も行うことになっているのだそうだ。
それら、依頼内容等の簡単な確認を終えた一行は、ボルンの村に向けて出発した。
おそらく夜になる前に村には着けるだろう。
街を出てしばらくして、コンラートがローザに遠慮がちに声をかけてきた。
「そういえば……ローザは魔術師なんだよな?」
「ええ、そうよ。魔術師らしくないかしら?」
「いや、なんて言うか……なんだろうな? うまく言えないけど、魔術無しで戦っても相当強かったりしないか?」
「まあ、それなりに戦える自信はあるわ」
そう言って笑うローザの顔を見て、コンラートは何かに気付いたかのような表情を浮かべる。
「ああ、ええと……もしかしてローザさんって呼んだほうが良かったりするかな?」
「どうして?」
「ああ、いや……なんとなく、そうしたほうが良かったりするかもなって、思ってさ」
「今のままでいいわ。同じ冒険者でしょう?」
「ああ……うん、わかったよ」
笑顔で答えるローザに対し、コンラートは何かを思案するような表情であいまいな返事を返す。
そのまま黙ってしまったコンラートに代わり、今度は魔術師のエルネスタがローザに話しかけてくる。
「あの……ローザさんは杖は持ってないんですか?」
魔術師用の杖は使用する術の効果を高めてくれる。
魔術師であれば普通は持っているものだ。
だが、ローザはその類の物をどこにも持っていなかった。
「持ってないわ。私のやり方では普通の杖は邪魔になる事のほうが多いから」
「やり方っていうのは戦い方の事ですか?」
「ええ。一人で行動することが多かったからね。魔術の発動に集中するわけにもいかなくて。普段戦闘で使う魔術も簡単なものがほとんどよ」
「前衛の援護無しで魔法を使うからって事ですか?」
「そうね」
「でも、杖以外の武器も持ってないように見えるんですけど……どうやって戦うんですか?」
「拳で戦うの」
そう言ってローザは握った拳を持ち上げて、笑みを浮かべて見せる。
小柄で華奢な見た目のせいで、冗談を言っているようにも見えた。
「強そうに見えない?」
おどけたような表情でローザは問いかける。
それに対して不敗の刃の面々は顔を見合わせ、何と答えていいものか迷っているようだった。
ローザが本気で言っているのか、冗談なのか判断できないようだ。
その様子を見たローザは楽し気な笑みを浮かべたまま、クラウスのほうに視線を向ける。
「どう? 強そうに見えないかしら?」
「身のこなしを見れば、相当に鍛錬を積んでることはわかる。少なくとも弱そうには見えないな」
クラウスのその言葉に、他の面々は驚きの表情を浮かべる。
「え? もしかしてホントに拳で戦うんですか?」
「もちろん、本当よ」
「魔術師なんですよね?」
「ええ、格闘術の心得もあるってだけよ。でも、これを言うとみんな驚くのよね。そんなに変?」
「そりゃあ……強そうだとは思ったけど、まさか素手で戦うとは思わないよ。敵に拳で殴りかかっていく魔術師なんて聞いたこと無いからな」
コンラートが呆れたような声を上げる。
「勿論、近接戦の要員がいるときには使わないわ。今回も披露する機会は無いでしょう。頼もしい騎士様がついてるからね」
そう言ってローザはクラウスに視線を向ける。
クラウスはそれに苦笑を浮かべながら答える。
「ああ、それが俺の仕事だからな」
そんな雑談をしながら、彼らは日中を通して歩き続けた。
そうして日が傾き始めた頃、目的地であるボルンの村に到着した。
その日、彼らは丸一日歩き詰めであったその疲れを癒すため、到着してすぐに村長宅で宿を借り、体を休めた。
そして次の日の朝に、今回の依頼の調査対象である森に向けて出発した。
森の中に入ってからは斥候のマルクが先頭を歩き、調査の手掛かりとなる痕跡を探しながら歩いていく。
「マルク、何かわかるか?」
「いくつか足跡は残ってるけど、それが前に来た冒険者の物かはわからない」
「そうか。とりあえずその足跡を追ってみてくれ」
マルクが痕跡を追い、コンラートに報告を上げ指示を仰ぐ。
そうやって、二人で進路を決めて進んでいく。
他のメンバーも皆それに付いていく。
クラウスとローザも彼らの判断に口を出したりはしなかった。
そうして調査を始めてから二時間ほど経った頃。
「足跡がはっきりしてきた。五人分だ」
「行方不明になったパーティと数は合うな」
「ああ、多分当たりだと思う」
マルクの足取りは先程までと比べて早くなっていた。
それだけ痕跡がはっきりして追いやすくなったということなのだろう。
「注意しろ相棒、嫌な空気だ」
クドゥリサルがクラウスだけに聞こえる程度の声で語りかけてくる。
その言葉に、クラウスは前を歩くマルクの様子を確認する。
先頭を歩くマルクは他の面々から、少し離れた位置を歩いている。
クラウスは何があっても対処できるように、そのすぐ後ろをついて行った。
そうして進んでいるうちに、一行は開けた場所にたどり着いた。
「これは……」
そこには、冒険者の装備らしきものが落ちていた。
魔術師のものらしきローブや杖、戦士の物らしき剣や鎧、そして弓や矢筒などが転がっている。
マルクが歩いていき、落ちていたローブを拾い上げた。
それを持ち上げる途中で何かが落ちる。
「……冒険者証だ」
それを拾い上げたマルクの言葉で、その場に緊張が走る。
マルクはさらに、その場にある他の鎧や衣服等を調べ始めた。
やがて彼は、その手に五つの冒険者証を手にして戻って来た。
その顔には厳しい表情を浮かべている。
「五つ……名前も一致する。前に来たパーティの物だ。どうする?」
判断を求められたコンラートは、険しい表情で全員を見回してから口を開いた。
「これは……何があったと思う?」
「わからない。なんで服や装備だけ残ってるんだ?」
皆黙り込み、それ以上意見を出すものはいない。
ここで何が起こったのか、誰にもわからなかった。
重苦しい沈黙が辺りを支配する。
その様子を見たローザが、沈黙を破るように声を上げた。
「これだけでは流石に情報が少なすぎるわ。何があったのか、もう少し調べてみたほうがいいでしょうね」
そう言ってローザは、判断を促すようにコンラートに視線を向ける。
その視線を受けたコンラートの表情が苦悩するように歪む。
そしてしばらく俯き、思案に耽っていたが、やがて顔を上げ、意を決した様に口を開く。
「ローザ……これは、俺らの手には負えない状況のように思うんだ。前のパーティが無事でいるとは思えない。何があったのかも全くわからないし、この先どれ程の危険があるかもわからない。そんな状況に仲間を連れてはいけない」
「それは、ここで撤退したいって事?」
「……そうだ」
コンラートが言いづらそうに、そう口にする。
その決断を、臆病であると叱責されるとでも思ったのかもしれない。
だが、ローザはそれに笑みで答えた。
「そうね。あなたの言う通りだわ。一旦撤退しましょう」
「いいのか?」
あっさり自身の言葉を受け入れたローザに、コンラートは驚きの表情を向ける。
「もちろん。これはあなたたちの依頼で、私たちはただの付き添いだもの。あなたの判断に従うわ。それに、あなたの判断が正しいと私も思うしね。この先どうするかは戻ってから話し合いましょう」
「そうか……ありがとう」
そう言って、コンラートが安堵の表情を浮かべたときだった。
クラウスは何者かの気配を感じて、振り向いた。
彼の後ろにはマルクが立っている。
そのマルクの背後に、奇妙な黒い不定形のもやのようなものが漂っているのが見えた。
「ああ、クソッ……コイツは……」
クドゥリサルの呟きが聞こえた。
そのもやのような物はゆらゆらと揺らめきながら、徐々に大きくなっていき、人のような形を取り始める。
「そいつから離れろ! マルク!」
「えっ?」
切羽詰まったような調子でクドゥリサルが叫ぶ。
マルクは突然のことに反応できず、その場で立ちすくんでしまっていた。
クラウスがマルクの服を掴んで、そのまま彼を他の仲間たちのいる方向に向かって勢いよく投げ飛ばす。
その体をコンラートとボリスが二人がかりで受け止めた。
彼らは一体何が起こったのかと、その顔に戸惑いの表情を浮かべている。
「ローザ! 小僧どもを連れてここから離れろ! 急げ!」
クドゥリサルは尚も強い口調で警告を発する。
「行きましょう! さあ! 早く!」
ローザは即座にクドゥリサルの言葉に従い、コンラート達を叱咤して元来た道を退いていく。
一人残ったクラウスの前で、影は人間の女のような姿をかたどり始める。
その顔に当たる部分に、真っ赤な血のような色の裂け目が生まれた。
それは笑みを浮かべているようにも見える。
その人型の影の足元の地面が闇の色に染まり、それが円状に広がっていく。
その円の範囲に入った草木が急速に萎れ、遂には塵となって跡形もなく消え去っていく。
そして女の姿をした影は、ゆっくりと歩を進めるようにこちらへと近付いて来た。
「前に出ろ、相棒! こいつを小僧どもに近づけるな!」
クラウスはクドゥリサルの言葉に従い、前に出て地面を覆う闇の中へと踏み込んだ。
そして、そのまま黒い影に向かって斬撃を見舞う。
その一太刀で女の影は煙のように掻き消えた。
どこか遠くから、嘲るような笑い声が聞こえてきた気がした。
あたりが静けさに包まれる。
地面を覆っていた闇も消え去っていた。
クラウスはクドゥリサルを鞘に戻してから、言葉をかける。
「なんだ、今のは?」
「あれは死の女神の眷属だ。周りの木が枯れちまったのは死の領域って呼ばれてる権能だな」
「権能?」
「死の女神とその眷属が持つ能力だよ。あの闇の範囲内にある者の生命力を奪い去り、塵へと返す。見ての通りだ」
先程の闇に覆われた場所にあった草木は全てが一瞬で枯れ、塵となって消えてしまっている。
それなりの大きさに育っていた木ですら、わずかな時間でしなびて塵となっていた。
「俺が何とも無いのはなぜだ?」
「ああ、あの手の力は強力な代わりに色々制限もあってな……魂の位階って聞いた事があるか?」
「聞いた事はあるが、どんなものかは知らんな」
「まあ、なんて言うか……その位階が自分より上の相手には通用しねえんだ。簡単に言えば……自分より強い相手には効かねえってことだ」
「……良くわからんが、あの影よりも俺の方がその魂の位階が上だったって事か?」
「まあ、そうだな」
「コンラートたちがあの中に入ったらどうなってた?」
「そこらに生えてた木と同じようになってたさ」
「……そうか」
クラウスはもう一度辺りを見回す。
闇の広がっていた地面の上にあるのは、先程発見した冒険者の装備だけだった。
この冒険者たちも、あの闇に囚われ命を落としたのだろう。
「しかし……神の眷属か。初めて見たよ。それにしても、あんなのがウロウロしてるとは、随分と物騒なんだな?」
「いや、あんなのがそこら辺をうろついてるはずがねぇんだが……何か理由があるはずだ」
「まあ何にしても、一旦戻ってローザに報告しないとな」
「報告か……なんて報告する? あれは死の女神の眷属だった、なんて言ったところで信じるかどうか……」
「だとしても、正直に話すしか無いだろ? 信じて貰えなかった時はまた考えればいい」
「まあ、そうなんだけどな……」
クラウスが先に退いていた仲間たちの元に戻ると、彼らは声を上げ、クラウスのもとに駆け寄って来た。
「クラウス! 無事なのか? 大丈夫なんだよな?」
「ああ、大丈夫だ」
そのコンラートの言葉に笑みを返すと、彼は安堵したように溜息をついた。
「それにしても、さっきのあれはなんだったんだ?」
「それについて、ローザと二人だけで話したいんだが……大丈夫か?」
そう言って、クラウスはローザを見る。
その言葉を聞いたローザは、ほんのわずかの間クラウスの目をじっと見つめてから、コンラートたちに向き直った。
「いいかしら? コンラート」
「ああ、勿論大丈夫だけど……」
「じゃあ、少し席を外すわね。何かあったら大声で呼んで。すぐに駆け付けるから」
不敗の刃の面々から少し距離を置いた場所で、クドゥリサルがローザに先程出会った者の正体について説明していた。
そのクドゥリサルの言葉を、ローザは訝しげな表情を浮かべながら聞いていた。
「あれが死の女神の眷属だったっていうのは間違い無いの?」
「ああ……やっぱり信じられねえか?」
「そうね……正直信じ難いわ。そんなものが出るなんて……何か根拠はあるの?」
「これも信じて貰えるかわからんが……昔、見たことがあるんだよ」
「見たことがある?」
「ああ、前にも話した俺の主が、ああいった連中と何度もやりあったことがあってな」
そのクドゥリサルの言葉に、ローザは一瞬驚いたような表情を見せてから、考え込むように俯いた。
そして十秒ほどして顔を上げ、クラウスに視線を向ける。
「一つ聞いてもいい?」
「なんだ?」
「あなたの友人……クドゥリサルの元の持ち主の名前を教えて欲しいの」
「ああ、アディメイムって名だ」
その名を聞いたローザは眉を寄せ、厳しい表情を浮かべながら、大きく息を吐き出した。
「銀髪金眼で名前はアディメイム。それで間違い無いのね?」
尋ねながら、ローザは些細な表情の変化も見逃すまいとするかのように、じっとクラウスの顔を見つめている。
「ああ、間違い無い」
「そう……わかった。冒険者組合に応援の手紙を出すわ。それから、コンラート達にも話をしないとね」
そう言った直後、ローザの髪と目の色が、黒から元の銀髪金眼に戻っていた。
戻って来たローザの姿を見た不敗の刃の面々は、皆驚きの表情を浮かべていた。
「えっと、ローザ……なんだよな?」
「ええ、もちろん」
「ああ、じゃあやっぱり……白金の位階なのか?」
「ええ、そうね」
そういって、ローザは申し訳なさげに笑みを浮かべる。
コンラートはその答えに苦笑しながら頷きを返す。
「ああ……まあ、ローザって名前の魔術師で、位階を隠してるって時点でなんかおかしいとは思ってたんだよ」
「コンラート、気付いてたのか?」
「もしかしたら……とは思ってたけどな。改めて言われるとやっぱり驚くよ」
「じゃあ……ローザさん、皇族なんですか? その、私たち随分と失礼な態度を……」
「それは気にしないで。今は冒険者として行動してるんだから、急に態度を変えられても困るわ」
その会話を聞いていたクラウスがローザに視線を向ける。
「皇族だったのか?」
「いや、知らなかったのかよ?」
そう尋ねるクラウスを見て、コンラートは呆れたような表情を浮かべる。
「上位の冒険者だって話は聞いてたけどな」
「いや、そんな……七人しかいない白金の位階の冒険者なのに? しかも皇女様だぞ? 知らない奴を探すほうが難しいくらいだってのに……」
ローザはそのやり取りを聞いて苦笑を浮かべたが、すぐにその表情を引き締め、コンラートに向き直る。
「コンラート。少し仕事の話をしてもいい? あなた達にお願いしたいことがあるの」
ローザの真剣な表情を目にした不敗の刃の面々は身を固くして、ローザの言葉に耳を傾ける。
「あなた達には一旦ホルツドルフの街まで戻って欲しいの。後で手紙を渡すから、それを組合の長に渡して貰いたいのよ」
「組合の長に?」
「ええ、組合の助けが必要な状況なの。これは私からの依頼よ。このあと村に戻ったら、すぐにホルツドルフに向かって欲しい。休みも無しで大変だとは思うけど、その分報酬は弾むわ。どう?」
「そこまでするってことは、やっぱりさっきの変な影はよっぽどの相手だって事なんだよな?」
「ええ。詳しくは言えないけど、相当な脅威となる相手よ。その対処のために応援が必要なの。お願いできる?」
コンラートは仲間達に視線を向ける。
その視線に応えるように、不敗の刃の仲間たちは頷きを返した。
「わかった。その依頼引き受けるよ」
「ありがとう。じゃあ急いで村に戻りましょう。村の人達にも備えをしてもらわないといけないわ」
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