第2話 あの、、、もしかして甘い物好きですか?

 探偵助手になったためこれからは俺が事件記録をまとめていくこととなった。しかも早速事件が起きていた。


 2月14日 火曜日 晴 

 事件名 社長殺し

 詳細


 書類が散らかっていた部屋も綺麗になり、

 俺はキャリーケースに必要最低限の荷物を詰めた。

 昨日、探偵助手になった俺は姉貴を探すためだけで

 大学の推薦を蹴ったのだ。

 空っぽになった小さな部屋に別れを告げて、俺はMさんの家に向かった。


 Mさんの家は彼岸花あの小さなバーの隣にあるバカでかいタワマンの最上階らしい。そこまで行く途中にケーキ屋さんがあるから、ケーキを買って行った。


 さぁ、タワマンに着いた、、、のだが、

 エントランスに入る前からそのオーラに血の気が引いた。あの人は一体何者なんだ


「おっ、加籃君ではないか〜。そんなキャリーケース一個でいいのかい。お気に入りのものとか持ってくればよかったのに。」


「そんな人の家に上がらせてもらうのに、自分勝手できませんよ。」


 Mさんはハッとした顔になって言った。


「ごめん。言い忘れてたねテヘペロ。安心して。あの最上階のワンフロア、全部私のだから。君専用の部屋もあるよ。」


 おいおい、ますますあんたが何もんか気になってきたんだけど。


「そういえば加籃君、学校はどうしたの?約束は守らないと。」


「今日は家庭学習日です。みんな大学の2次試験で忙しいですから。」


「君は大学に行かないの?」


「姉貴を探すために推薦を蹴ったんですよ。」


「えぇー何やってんの!せっかくのキャンパスライフ楽しみなさいよ。」


「いいんですよ。姉貴の方が大事です。あっ、あとこれ。あそこのケーキです。これからお願いしますの気持ちを込めて。」


 とケーキを差し出した瞬間、Mさんはめっちゃ喜んでいた。声には出していないが、耳をピンと立て、尻尾を千切れんばかりに振っている犬みたいに見えた。


「わざわざすみませんね〜。気を利かせてしまって。これはもしかして、ここら辺にあるケーキ屋のやつじゃない。これ食べたかったんだよ。めっちゃ嬉しい。」


「あの、、、もしかして甘いもの好きですか?」


 俺がそう聞くとMさんはハッとして我に帰り


「いやそんなわけないでしょ、私が好きなのはダイキリだけだよ。変なこと言わないで!」


 あっ絶対好きなやつやん。

 Mさんは少し怒りながら、俺を最上階まで案内をしてくれた。


「もしものことがあるかもしれないから、君の部屋は私の部屋の前ね。必要最低限の家具は置いてあるから安心して。あーあともう一つ。絶対に奥の部屋には入っちゃいけないよ。絶対だからね。」


「分かりました。気をつけます。」


「じゃあ早速ケーキ一緒に食べよ。」


 俺はモンブラン、Mさんはショートケーキとチョコケーキとフルーツタルトを食べていた。


「うぅ、うまい!うますぎる!このフルーツタルトめっちゃうまいよ加籃君!美味しー!」


 やっぱり好きなんだ甘いもの。


「それはよかったですね、、、そういえばMさん。何であなたは俺を助手なんかにしたんですか?」


「うぅーん、それをいうのはまだ早いかな。いずれわかる時が来るよ。甘いもの食べたから、コーヒー飲みたくなっちゃった。」


「コーヒーでしたら駅前に新しいカフェができたみたいです。行ってみますか?」


 結局聞きたかったことをはぐらかされてしまった。

 この人は謎に包まれすぎていてどこか怖いオーラもあった。それはまるで人を殺したサイコパスのようなオーラでもあった。


 駅前のカフェに向かっている時に、大きな広告モニターに映画の宣伝が流れていた。


『空に浮くカフェアンドバーで不可解な事件が、

 何と管理人兼ここまで案内してくれた人が毒殺されていたのだ。犯人はここに招待された10人の中にいる。次々に人が消えていく謎に新人探偵が挑む!

     ー空島ー

             近日公開    』


「へー面白そうじゃん。まー私ならすぐに犯人わかるかもしれないけどね。」


 Mさんは笑いながらその広告を立ち止まって見ていた。


「でも、毒殺と言えばやはり青酸カリですよね。」


 俺は歩きはじめてそう尋ねた。


「どうだろうね。まず青酸カリを入手するのさえも難しいと思うけど、一応なんで死んじゃうか説明してあげる。」


 あ、、、スイッチを入れてしまったな。授業が始まるよ。



 ・そもそも青酸カリはシアン化カリウムと言う人工物である


 ・致死量は0.15~0.3と言われているな


 ・ネズミを殺すのとか船を作る中で使ったりする


 ・人が飲むと30分くらいで死に至る


 ・青酸カリが胃酸と反応して発生したガスが体を回ってまーちゃんちゃんだな。呼吸困難とかの反応が起こる



「こんな感じ。だからあまり殺人には向いてないかもしれないね。」


 そんな物騒な話をしている中、ようやく目的地に着いた。


「ここだよここ!知ってるかい加籃君。ここのタルトめっちゃ美味いらしいいんだよ!それにシェフは有名レストランで働いていた、二つ星シェフで幼馴染でもある今の店長と、みんなに幸せを届けたいという思いからこのカフェを立てたんだって。」


 また尻尾を振っている犬のように見えた。静かにしてれば大人びていて綺麗なのに。


「コーヒーを飲もうとしたのにタルトにいっちゃうんですねMさん。さっきケーキ二個食べませんでしたっけ?。」


「加籃くん。デザートは別腹なのだよ。」


「ハハ、そうですか。」


 俺が愛想笑いをして店内に入った途端怒号が飛んでいた。


「どういうことだ!時間を間違えて1時間早く来てしまっただと。私が待つことが嫌いなのは知っているだろう!全く何のために君を秘書にしたんだと思っているのだ。白鳥!」


「大変申し訳ありません。鷲田社長。最近スケジュールが立て込んでおりまして、私の不手際です。本当にすみませんでした。」


 社長みたいな人が秘書らしき人を叱っていた。

 何もこんな公共の場でやることもないだろう。あのって社長見るからに老害だし。

 そんなことを思っているとMさんは言った。


「気にすることはないよ。私たちには関係のないことだ。それはさておき加籃君、ここはプリンタルトが人気らしいよ。上には焦カラメルが乗ってるんだって。あのほろ苦さとプリンの甘さ。考えるだけで最高だな。」


 本当にこの人は、探偵として役に立つのだろうか?


「ねーここのプリンタルト美味しいね。」


「そうかな?少し苦すぎない?」


「何言ってんの守。全然苦すぎじゃないよ。あんた鼻詰まってんじゃない?」


「そうかな。吐き出してもいいくらいだけど。苺の舌は信じれないけど、あっでもプリンめっちゃ甘い。」


「でしょう。,,,ん?今馬鹿にした?」


 隣に座っていたカップルがそう話していた。

 また奥の方では


「どう。ここのプリンタルト、美味しいって聞いてたから、霞の口にも合うかもしれないって思ったんだけど。」


「うん。美味しいよ!桜さん!でも少し苦いかも。」


「それが大人の味だよ。」


 少し歳の離れたカップルもそう話していた。

 でもまた老害の声が店中に響いた。


「何なんだ。この菓子は!」


 その老害はタルトを手づかみで食べていた。


「この店で一番人気のタルトです。」


「そうか、これを作ったやつを呼べ!」


 そう言って、白鳥産が渡した氷の入った水を飲んだ後がっついて食べていた指を舐めていた。店員さんがくるとまた叫んだ。


「何なんだこれは。この上のやつが苦すぎるではないか。こんなもの食えたもんじゃない。それにお前はシェフではないだろ。」


 そう言って、飲み終わった水の入っていたコップを床に叩きつけて割ってしまった。


「大変申し訳ありません。シェフは今仕事が立て込んでおりますので、お口に合わなかったでしょうか。本当にすみません。お題は結構なので。」


「ふん。そのくらい当たり前だろ。この常識しらずの底辺人間がよ。お前はあれとそっくりだ?。私の前の役立た」


「大変申し訳ありませんでした。」


 店員さんは遮るように答え、数回まばたきをした。額を拭うその手首にはみたこともない腕時計があった。名前は、若鷺というらしい。(ネームプレートにかいてあった)その時Mさんは言った。


「加籃君。あの店員さんが嘘言ってるって分かる?」


「嘘ですか。そのようなようには見えませんが。」


「いいかい、これから探偵助手として働くんだ。

 人間観察の一環として教えてあげる。まばたきを連続でしている時や普段より長く目を閉じた時は嘘の可能性が高い。あくまで統計的な考えだから正しくはないけど、そうかもしれないね。」


 そうなんだ。この人普通に探偵してんじゃん。

 でもMさん普段は優しそうなのに真面目になった時少し怖いんだよね。


 それからMさんはコーヒーを飲みながら小説を読み始めていた。


      ー30分後ー

 やっと取引相手が来たような鷲田社長はビジネススマイルを作って、固い握手をしていた。

 しかし、急に喉を抑えて苦しみ出した。

 そして隣にいた守という子や奥にいた霞って人も同様に苦しみ出した。Mさんは急に叫んだ。


「皆さん!食べるのをやめてください。口に入れたものは吐き出して、もう食べてしまっているならできるだけ多くの水を飲んでください。急いで!

 加籃君救急車と警察呼んで。警察には彼岸花って言って。」


 Mさんは倒れた鷲田社長の近くにいた白鳥さんに近づいた。


「白鳥さんですよね。」


「はい。でもなぜ私の名前を?」


「店に入った時に聞きました。私は常に情報を聞いたり見たりしてますから。白鳥さん、鷲田社長にアレルギーなどはありますか?」


「いえ特にないはずですが、」


 動揺しているのか手を胸にあてていた。手首には高そうな腕時計をしていた。


「そうですか、今店にいる方たち!決して店から出ないでください。殺人です!」


 そう叫んで周りはパニック状態だった。

 でもMさんはを握りニヤリと笑った。


   ー30分くらい経ったー


 警察がカフェに着いた。


「あらあらまた殺人?平和な世の中になるには、まだまだ時間がかかるな。そしてどーだい、何か分かった?まん」


「Mって呼んでください、白詰さん。今はそう読んでもらってるんです。」


「Mだって?それじゃあまるであの人」


「その話もしないでって前にも言いましたよ。それと私の助手となった福寿加籃君です。」


「初めまして、加籃です。探偵助手をしています。」


「探偵助手か、Mも出世したな。私の自己紹介がまだだったね。白詰しろつめ亜蝶あげは警部補です。M君が関わるときは私が担当します。覚えておいてくださいね。」


「早速ですが、白詰さん。倒れている人の解剖とあとこのタルトの分析をしてください。なるはやで。」


「相変わらず人使いが荒いことだな。了解しました。」


 そういうと亜蝶さんは科捜研に指示をしていた。

 たぶん分かるまでは時間がかかるだろう。


 結果が届くまでの間Mさんは事情徴収を始めていた。


「そうだな。加籃君。まずは白鳥さんからいこう。」


      社長秘書 白鳥

 ・秘書になったのは1年半くらい前


 ・腕時計は社長からのプレゼント(何でも言うことに従わせるために無理矢理渡されたらしい)


 ・普段から鷲田社長は癇癪持ちでものもよく壊していたらしい。


「Mさん、この人ではないですか?十分アリバイはあると思うのですが。」


「加籃君。できないよ。他の二人が犠牲になった理由もないだろう。じゃあ、次は桜さんと苺さんの話を聞こう。」


       桜さんと苺さん

 ・鷲田社長との面識や互いについても会ったことはない


 ・最近ではパートナーとのもめごともなかったらしい


 ・薬をタルトに入れる隙もなかった。(それは俺たちも見ていたから間違いはない)


「この二人は完全に白ですね。じゃあ、犯人が分からないじゃないですか。」


「いいや。あと一人、薬を入れることが可能な人物がいるだろ。」


 その時に白詰さんが結果を持ってきた。


「M。君の言うとおりにやったのだがね。守さんと霞さんのタルトからは青酸カリが出たのだが、鷲田社長のタルトからは検出されなかったんだ。」


「やっぱりな。そうだろうと思った。犯人が分かった。犯人はあなただ。鷲田社長にしつこくからまれたウェイターさん、いや元秘書の若鷺わかさぎさん。それと現秘書の白鳥さん。」


 ・しつこいパワハラやセクハラ


 ・癇癪による暴力


「あなたたち二人は、社長が癇癪でものを壊すことを知っていた。だから他の方法で毒を飲ませた。そして無差別殺人と思わせるために2人も殺した。さぁ加籃君他の方法とは何かな?」


「、、、水の入ったコップとか?」


「その通り、まずいものを食べさせれば水を飲んでコップを壊すところまで計画した。コップの中に薬を入れれたのは白鳥さんしかいない。」


 すると若鷺さんが口を開いて答えた。


「それはあくまで推理。証拠がないでしょ。それに私じゃなくて他の人でもできましたよね。他のウェイターとか、シェフだっていますし。」


「そうですね。確かに今は証拠不十分だ。でもシェフは殺してない。相当強い思いでこの店のシェフになったみたいだし、この人が犯人なら一つだけ他の方法で毒を入れるなんてことできない。なんせ、今は一番繁盛する時間帯でそんな時間とれないしね。」


「じゃあ、私と白鳥さんの関係も推理ではないですか。」


「その関係については簡単ですよ。その腕時計、

 メーカーとしてはデェア・ゴ・スティーニですよね。でもそんな腕時計ないんですよ。。そうそれは社長秘書をやる上での特注品だ。おそらく横の方に刻印があると思う。」


 二人は黙ったままだった。白詰さんが聞いた。


「溢れた水を拭いたタオルとかはどこに隠した。」


「大方、キッチンの奥のごみ箱とかだろ。」


「なんでもお見通しですね。探偵さんには。」


「ちょっと若鷺先輩、何を言ってるんすか。」


「しょうがないのよ。もう復讐は終わったの。ありがとう、計画を立ててくれて。」


 若鷺が言った通りゴミ箱からは濡れたタオルが出てきた。完全な計画的犯行だったがこれで事件は解決した。




 と思っていたら、また驚くような情報が入った。

 タオルには青酸カリの成分が入っていなかったらしい。白鳥は目を丸くして驚いていた。


 事態が混乱していく中、またMさんは胸を握り楽しそうにしていた。


「白詰さん。もしかして解剖は手とかはみてないのですか?」


「あぁ、緊急のことだったから死因しか調べてもらってない。もしかして水じゃないのか?」


「水は水でも、少量ですよ。どう思う加籃君?」


 なぞなぞみたいなことを聞かれ、焦りはしたが少し考えてみた。


   水は水でも少量

 ・コップの中の水とは違う


 ・Mさんは手を見ていないのか?と聞いていた。


 ・あの時鷲田社長は、、、


「もしかして指に青酸カリが塗ってあったとか?」


「惜しい。でも違うんだよ。加籃君。正解はコップの外壁さ。二人は鷲田社長の性格を知っていた。手で食べれるものなら、手で食べるというせっかちさ。怒ると物を壊すというところもね。そして真犯人は心優しい人なんだろうね。」


 ますますわからなくなってきたが、Mさんは続けて言った。


「白鳥さんは誰も殺していない。全て若鷺さんの犯行だ。コップの外壁に薬を塗っておけば、結露した水に含まれて手につきやすくなる。確かに白鳥さんも計画を立てるとこまでは一緒にやっていた。でも、後輩を守りたかったんですよね。」


「本当になんでもわかるんですね。白鳥ちゃん。犯罪を犯したことは変わりないけど、あなたは何も悪くない。あなたが入れたのは青酸カリじゃないわ。殺人補助にはなるかもしれないけど、そこまで重い刑罰はないと思うわ。だから力強くこれからも頑張って。」


白鳥さんは何か言いたげな顔をしたが、少し間があいて彼女は「はい」と返事をして

笑った。


「若鷺 つぐみ 殺人及び無差別殺人の容疑で現行犯逮捕する。またあなたにも署に来てもらいますよ。白鳥さん。」


 これで短いようで長かった1日が終わった。初めての仕事にしてはヘビーすぎたと思う。でも気になったことがある。どうやって青酸カリを手に入れたのだろう。Mさんは手に入れるのは難しい(殺人に使ったときに警察がすぐに足取りをつかめれるからだそうだが)って言ってたし、何か裏で糸を引く者がいるのだろうか。


                福寿 加籃 







 事件が解決し終わった時1人の男が店を出た。

 桜と呼ばれていた人だ。その人は携帯を取り出して話していた。


「一応上手くクスリを使ったみたいだ。あぁ。

 またそんなこと言うのか夏水。あいつとは同じ名前じゃない。俺のは簡単な漢字だ。それより今回もなんで俺に行かせる。一応俺も偉い立場だと思うが、まだ新人は役に立たないだって?使ってみろよ。もしかしたら。俺を上回る力があるかもしれないだろ。ハハ、冗談だって。あぁこの命。」





    福寿 綾梅の処刑まで

             あと43日

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