ラム酒と彼岸花と探偵と

UNKNOWN

第1話 そうだな、、、Mとでも呼ぶがいい

 夜が明るくなる飲み屋街。

 その通りでさえ暗くなる3時から4時くらい、

 俺はある人を探していた。


 アガサクリスティーの小説に出てくる‘エルキュールポアロ’や、アーサーコナンドイルの小説に出てくる’シャーロックホームズ‘よりも洞察力に優れ、

 どんな難事件も解決する探偵がいるらしい。


 ジャージ姿で走っていた俺は道端にいたをし頭が真っ白なホームレスに教えてもらった道順通り来たのだが、、、


 「おいおい、マジかよ。こんな狭いところに事務所見たいのがあんのか?」


 たどり着いたとこは、男1人通れるかくらいの裏路地で、なんだか気味が悪かった。でも、奥の方で唯一光っている看板があった。その看板を目指し通り抜けると


   『rosarote Spinnenlilie』


 と書かれていた。


「なんて読むんだ?英語ではなさそうだな。ヘイ!

 シ○ーこれ読んで。」


 「ローザローテ シュピネンリーリエです。

 ドイツ語で彼岸花という意味があります。」


「ローザローテ シュピネンリーリエ??

 彼岸花?変な店名だな。なんだ?バーなのかな?」



 そう俺は思い、ドアを開けた。

 目の前には長い階段が地下へと続いていた。

 真っ暗で怖かったが、手に持った写真を片手に降りていくとそこには暖かい光に包み込まれたおしゃれなバーがあった。


 8席くらいのバーカウンターで、マスターらしき人がカウンター内でグラスを磨いていた。


 「いらっしゃいませ。狭いですが、お好きな席へ。」


 言われるがままに目の前の席へついた。


 「何にしましょうか?」


 「すみません。ここにお酒を飲みにきたのではないのです。探偵がここにいると聞いたのですが。」


 マスターは磨いていた手を止めて、奥の席を指差した。


 「あの方でしょうか?」


 そこにはパーカーのフードを被って、お酒を飲んでいる人がいた。カラカラとグラスと氷でメロディーを奏でながらその人は言った。


 「高校三年生が何をしている。」


 聞き間違えか?今俺が高三だと言った。何も言っていないのに。


 「何を驚いている、お前の前にいるのはエルキュールポアロやシャーロックホームズよりも頭のいい探偵だぞ。」


 席から立ち上がり、僕に近づいてきた。

 その人はクルミ色のボブヘアーで透き通る白い肌に茶色の目をした女の子だった。


「あー、今女の子って思ったでしょ。それに男じゃないって。誰だろうね、探偵は中年で渋い男がやるって言ったのは、これでも24の女の子です〜。ホントに見た目で判断すんじゃないよ。見た目で。」


「あ、あの!」


「分かってるって、高校三年って分かった理由だろ。そんなの1+1くらい簡単だよ。まずはね、」


(いや、そこじゃなくてそんなこと思ってないと言おうとしたのに)


 ・その目立たない服

 高三とはいえども、私服で歩いて職質されたら補導だろ、だからそのダッサイジャージを着てる。

 まーこれだけじゃ高校生って判断できないよな、


 ・次はその汗だ

 今の高校は大体が免許を取るのが校則で禁止になっている。そして、チャリを使うと高校のステッカーが貼ってあるから、警察に捕まる。だからここにくるまでに走っていたんだ。でも店に入った時には息は荒くなかった。最近まで運動をしていて体力もある証だな。


 ・最後にその写真だ。

 そこに写っている背の高い女性と小さい男の子。

 多分君のお姉ちゃんだろうな、そして小さい子は君だ。その写真の君は仮面ライダーのベルトをしている、多分ディ○イドだろうね。


 小さい君の身長、10年以上前の作品のおもちゃ、車やチャリも使わない。


「まーこのくらいから君が高三だとしたんだ。あ!探してる人はそのお姉ちゃんでしょ。」


 全てがあっている。この女がとても怖くなってきた。


「お願いです。姉貴を探してください。俺の唯一の家族なんです。」


「いいよその依頼引き受けようじゃないか。

 その代わり条件がある。私のヘイスティングズになりなさい。」


 そう笑顔でいってきた。つまり、相棒になれと。


「俺でいいならなんでもやります。姉貴のためなら。俺の命でもなんでもあげますよ。いいですよ、

 なってやるヘイスティングズに!」


「そうと決まれば、捜査開始だな!おっとその前に君の名前は?」


福寿フクジュ 加籃カナノ、あんたはなんて呼べばいい?探偵さん。」


「そうだな〜よしMとでも呼ぶがいい!」




 そう、これはMさんと初めて会ってから日本中に名を轟かせるバディになる物語だ。でもその前に、

 姉貴の件について進めていこう。



 Mさんはチョコレートを食べながら俺に聞いてきた。


「そーいえば、なんでの位置がわかったの?あそこは地域の人ですら知ってる人がいないんだよ。」


「彼岸花?ですか?」


「あーごめんごめん。あのバーの略称だよ。長すぎる名前だから、日本語訳で略してんだ。」


「そーなんですか。あっ、あの店までの道は眼帯をした白髪のホームレスに教わったんですよ。」


「眼帯をした白髪のホームレス?の知り合いかな?まーいいや。最後にお姉ちゃんを見たのは?」


「一昨日の夜です。実はその日に喧嘩をしてしまって、夜は友達の家に泊まらせてもらったんですよ。そして、今まで姉貴が帰ってこないから今日の朝警察に行ったんですよ。でも取り扱ってもらえなくて、それであなたのことをたまたま耳にしたのです。お願いです。姉貴を探してください。」


「分かった。ではまず君の家に行こう。何か手掛かりがあるかもしれない。」


 Mさんはそう言い、俺の家まで向かった。

 玄関の前に立った時違和感があった。玄関の鍵が開いていたのだ。

 

 中に入ると部屋中がめちゃくちゃになっていた。書類や紙、パソコンに、姉貴が使ってたタイプライター(昔使ってたらしい)とかが散乱していたのだ。

『強盗だ』と思ったときMさんは『強盗じゃないよ』と言った


「強盗じゃないって、どういうことですか」


「そのままのとおりだよ。今散らかっているのは紙や書類、そしてタイプライター。

 金品が入ってそうな箪笥とかは何も荒らされていないだろ。それにこれを見ろ。」


 Mさんが見せてきたのは尻尾がカミソリになっている狐の絵だった。


「これはいったい何なんです」


 俺が聞くとMさんは答えた。


の仕業だよ。君のお姉ちゃん、記者だろ。最近護身用の何かを持っていたと思うが。」


 確かに姉貴は記者であり最近は警察に使い方を学んだ催眠スプレーを持っていた。何の記事を書いているかは、教えてくれなかった。


「君のお姉ちゃんはこの組織について追っていたんだ。そして知ってはいけないことを知ってしまった。」


「そんな、じゃあ姉貴はもう,,,もう助からないんですか。」


 こみ上げる涙をこらえ聞いた。


「いや、大丈夫だ。狐の剃刀にはしっかりとした掟がある。世間一般の人は知らないと思うけど、この組織は日本最大の裏組織だ。そんなでかい組織が掟を破ってまで殺すとは考えられない。」


「その掟っていうのは何なんですか。まだ狐の剃刀と決まったわけでもないし,,,」


「いいや、狐の剃刀の仕業で間違いない。この絵。変な色してるだろ。これはで書いたものなんだ。黒とも言えないし赤とも言えない。これは、血が乾燥してできるような色だ。そして紙は彼ら自身で作っている特別な紙なんだ。」


 そう言いMさんはその紙をコンロにある火に近づけた。

 その紙は燃えなかった。


「原料は知らないが、これができるのは彼らしかいない。そして掟っていうのは

 『45日経つまで、捕まえた捕虜等は殺したり、幹部以外のものが接してはいけない』というものだ。だから安心しろ。まだ時間はある。一つずつ謎を解いていこう。

 私はどっかのアニメの登場人物みたく眼鏡をかけるとすぐに謎が解ける、というような能力はない。地道に情報を集める。ただそれだけが解決への道なんだよ。」


「でも、もし乱暴に誘拐されてけがをしていたら」


「それもないな。さっきコンロを使ったときについ今まで使っていたような油汚れと

まだ少し濡れている食器がある。君はたまたま昨日会えなかっただけで君のお姉ちゃんは、今さっきまでいたはずだよ。冷蔵庫を開けてごらん、今日の夕飯と手紙が入っているはずだ。」


冷蔵庫を開けると確かに昨日の夕飯と手紙が置いてあった。


「もしも乱暴に君のお姉ちゃんが誘拐されたとしたら、作っていたものもこぼれるだろうし、手紙を置くこともできない。誘拐される前に作り終えていた、とも考えれるがその線は薄い。その手紙、タイプライターじゃなくてパソコンだろ。パソコンを開いてそれが書かれた日時を見てみろ。」


言われた通りパソコンを開き日時を見ると3時間前くらいだった。


「3時間前に書かれたとすると君が彼岸花に来たくらいじゃないかな。そこらへんから考えると、君のお姉ちゃんは捕まってしまう覚悟があったんだ。だから構成員が来ても、抵抗せずに捕まったんだ。」


「そうか。けがはしていないんですね。よかった。じゃあ早く助けに行きましょう。」


「それが狐の剃刀はしょっちゅうアジトを変えるんだ。だからどこに行けばいいのかわからない。ならば、地道に情報を集めればいい。手伝ってくれるかい?加藍ヘイスティングズ?」


「当たり前ですよ。姉貴のためなら!」


「よし!そうときたら今日は記念日だ!君と私がバディーになって一仕事終えたね。じゃあrosarote Spinnenlilieに戻るぞー。」




  ー一方その頃ー

街が段々と目を覚ましてきた頃、公園の公衆トイレの電気がついていた。中にはをした男が髪の毛を洗っている。

無造作だった髪の毛をオールバックにし髪の毛を束ね、スーツを着て彼は


 「面白くなりそうだ。」


と鼻で笑うと。まだ暗く寝ている街の方へ向かい歩き出した。


  ーその頃、彼岸花ではー

「師匠!ダイキリオンザロック二つ!」


「Mさん。俺未成年だしこんな朝早くからお酒を飲むだなんて体に毒ですよ。」


「君〜高校生なのに厳しいこと言うのね。いいもん。今を楽しめれば!師匠!ダイキリオンザロック一つね。」


「そのように呼ばないでください。もう昔のことですから。いつものですね。分かりました。」


あまり喋らなさそうなマスターはグラスを拭く手を止めて、お酒を用意した。


「よーし、じゃあまずはしっかりと毎日学校に行きたまえ。加籃君。彼らは弟である君のことも目星をつけているだろうね。だからもう警察に任した雰囲気を出すんだよ。絶対に自分で探している素振りは見せないこと。周りの子にも言っちゃだめだよ。わかった?」


ダイキリオンザロックというお酒を飲みながらMさん言った。俺はその言葉に対し頷くとつづけて言った。


「学校が終わったらまたここにおいで。しばらくは私の家に泊まった方がいいから。」


「え、Mさんのですか?」


「何?嫌なの?」


「いえ、そういうことではなくて、俺今まで女の人の家に入ったことないし、それに迷惑になるだろうし。」


俺がそう言うとMさんは大声で笑いながら言った。


「大丈夫大丈夫。勉強の邪魔はしないからさ。」


(いやそこじゃねえよ)


俺がそう思っていたら、


「それと加籃君、絶対にお姉ちゃんを助けるっていう感情以外に他の感情を生み出しては行けないよ。変に恨んだり、助けられなかった自分を責めたりしてはダメだ。それはいつか生きていく上で大きな足枷となるだろうからね。」


さっきまでふざけていたMさんの目には哀愁が漂っていた。そんな気がした。


「よしじゃあ学校に行ってこい!」


「はい!」


俺は勢いよく彼岸花から飛び出した。

街はもう目を覚ましていた。


白髪の眼帯ホームレス(Xさんとしておこう)がいたところにはもういなかった。


「Xさんどこかに移動しちゃったのかな?お礼が言いたかったのに。」


そして俺はその場から走り去っていった。

そこにはオレンジ色の珍しい花が置いてあった。





   ー加籃の姉貴の処刑まで

           残り44日ー


ちなみにの豆知識!

加籃のお姉ちゃんの名前は

福寿 綾梅アヤメといいます。

正義感の強い人でよく加籃のことを守っています。

加籃の母親代わりであり、綾梅だけが親の顔を知っています。




今回の花言葉(何回かに一回のペースです。)

彼岸花

死の花としてのイメージが強いこの花

実は

悲しき思い出

というもの以外に

情熱

があります。全てを表面で見ては行けませんね。







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