第15話
『結構』
『死神』が、かた、かた、と、骸骨の顎を動かし、上下の歯を鳴らした。
『では、早速『死神GAME』の『予選』に挑んで頂こう』
『死神』が言う。
『『予選』でプレイして貰うゲームの名前は、『死神SHOOTING』』
「『死神SHOOTING』……」
コウは、小さく呟く。
『所謂、縦スクロールの『シューティングゲーム』だ、自機を操作し、敵を打ち倒しながら進んで貰い、最後に待ち受けるボスを倒せばクリアーとなる、無論、自機が敵と接触したり、敵機から放たれる弾に当たったりすれば死亡、となる、因みに、自機からはオートで弾が発射されるので、諸君らにおいてはただ、自機を操作するだけで良い』
『死神』が画面の中から言う。
コウは頷いた。それならば簡単だし、そのタイプのゲームはかつて、かなりやり込んだ事がある。
『ただし』
『死神』が、そこで告げる。
眼球の無い、骸骨の眼科が、こちらに真っ直ぐに向けられる、画面越しなのに、コウはまるで、自分の顔をはっきりと見られているような気がして、思わず身震いしていた。
『このゲーム、いいや……』
『死神』は、そこで軽く首を横に振る。
『『本大会』における、いかなる『ゲーム』にも、『リトライ』や『コンティニュー』という機能は存在しない、つまり一度でも負ければその時点で『失格』という事だ』
『死神』は言い、じっと顔をコウに向ける。
『諸君らの人生が、そうである様にな』
コウは、何も言わない。確かに、人生には、『リトライ』も『コンティニュー』も無い、それは事実だ。そんな機能がもしもあれば、と、コウは何度も思ったものだが……
『それでは、ゲームスタートだ』
『死神』が言うと同時に、画面が切り替わる。
コウは、軽く首を横に振る、今は……
今は、ゲームに集中しないと。
映った画面を、コウはじっと見た。
『死神SHOOTING』。
そう書かれた派手な画面が大写しになっている、真ん中にはタップボタンもある、これを押せば良いのだろう、コウは黙ってボタンを押した。
やがて軽快なBGMと共に、画面に表示されたのは宇宙空間だ。
どういうストーリーなのかは知らないけれど、宇宙が舞台のゲーム、という事だろう。中央には、蝙蝠が翼を広げたような形の赤い戦闘機が一機、どうやらこれが自機の様だ、試しにスマートフォンの画面に指を当ててスライドさせて見ると、それに合わせて戦闘機も動いた、つまりはこうやって自機を動かすのだろう。
その自機からは、扇形に広がる赤い弾が発射されている、これを敵に当てて進んで行く、という事だ。コウは頷く、このタイプのゲームは、随分昔にプレイした事がある、その時にはレバーやコントローラーでの操作だったが、基本は同じだ。
やがて自機が進んで行き、赤い小型の戦闘機が現れる。
どうやら敵の登場らしい。数は二体、コウは画面を見つつ考える。こちらの発射する弾は扇形に広がって行く、ならば……
コウは自機を画面下ギリギリまで下げる。放たれた弾丸は、奥に行くに連れてどんどん大きく広がり、前方の二機の敵機に命中する。弾の当たった敵機はそのまま爆発、四散する。まだ序盤、という事もあって、敵の動きは単純だし、一撃で倒せるのが幸いした。
そこからさらに進んで行くと、やがて画面の上部、つまりは自機が向かう前方から、まるで人間の脳みその様な形の不気味な戦闘機が姿を現した。
正面には大砲が設置され、そこから真っ赤なレーザーが真っ直ぐに放たれる、数は二体。
コウはそれを見て、小さく頷く、つまりは『小ボス』というところだろう。
何も言わず、コウは自機を逆に相手の戦闘機に向けて進ませる、扇形に広がる自機の弾が、近づいた事で相手の機体に同時に命中する、二機の『小ボス』は、横に並んで攻撃してくるから、同時に攻撃するのは簡単だ。
やがて二機は左右に分かれる、コウは別れた右側の機体に向け、自機を移動させる、こいつらは正面にしか攻撃出来ないタイプのようだから、左側の機体は気にする必要は無い。
ダメージが増えていったのだろう、右側の敵機に小さい炎が上がった、そして。
ややあって、ダメージが限界を超えたらしい敵機が爆発して消える。
コウは躊躇いを見せずに左の機体にも敵機を近づける、既に最初の同時攻撃でダメージを受けていた事もあったせいだろう、左の機体からもすぐに炎が吹き上がる。
そして、左の機体も爆発、四散する。
コウは、それを見て軽く笑った。
こういうジャンルのゲームを……
否。
『ゲーム』そのものが、随分と久しぶりだった。
だけど……
敵を倒したときに得られる高揚感。
確実に、ステージの『クリアー』に進んでいるのだ、という感覚。
常に周囲に気を配り、自分がやられないようにしなければいけない、という緊張感。
それらは……全く変わっていない。
そのままステージを進め、コウは次々に現れる敵の戦闘機や『小ボス』達を撃破していく。
やがて、青い大地が広がる惑星に自機が到着する。実際にある惑星がモデルなのか、架空の惑星がモデルなのかは知らないが、その地表には敵の基地が建設されているらしい。
戦闘機に加え、基地のあちこちに設置された大砲や、基地内を走る戦車からの攻撃などにも警戒をしなければいけない、という訳だ、特に敵の大砲は、攻撃をしてくるときにだけハッチが開き、こちらに弾を撃ってくる、という仕掛けになっているらしい、ハッチが閉じ、収納されている間は、こちらの攻撃は全く効かない、という事らしい。
それらをかいくぐりながら進むと、BGMが切り替わり、重い雰囲気の曲となった。
どうやら、『ボスBGM』らしい。
コウは、また少しだけ笑った。
「来い」
小さく呟いて、コウは自機を進ませる。
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