第14話

『『死神GAME』へのエントリー、まずは誠にありがとう、と言おう』

 映像の中で、『死神』が告げる。

『これから君には、『死神GAME』への参加にあたり、まずは『予選』に挑戦して貰う』

「……『予選』」

 煌は呟く。

『この『予選』をクリアーした者にのみ、『本戦』への参加資格が与えられる事となる』

 『死神』が言う。

『その前にまずは、プレイヤーである君の名前を入力して貰いたい』

 『死神』が告げた。

『無論、言うまでも無い事だが、この名前、つまりは君の『プレイヤーネーム』は、今後、この大会で何度となく呼ばれる事になる名前だ、それ故に本名などをつける事は禁止する、本名などを入力した場合は即、失格となるのでそのつもりで入力してくれたまえ』

 その言葉が終わると同時に、画面上に白い枠が映る。

 煌は、黙って画面を見る。

「……『プレイヤーネーム』……」

 煌は呟く。

 『ゲーム』の『大会』。

 そんなものはもう……

 もう。

「僕は……」

 煌は目を閉じる。


「おいおい」


 声がする。

 佐紀だ。

 煌は顔を上げ、佐紀の方を見る。

「妹ちゃんの手がかりが欲しいんだろう? だったら躊躇ってる場合じゃないだろうが?」

 佐紀が言う。

「……それは……」

 煌は口ごもる。

「おいおい」

 佐紀がからかう様に言う。

「まさか、『ゲーム』はもう止めたから、なんて言わないよな? 確かに君は、中学を卒業してから引退したけれど、当時は……」

「止せよ」

 煌は言う。

「昔の話だし、それに……」

 煌は軽く笑う。

「もう今の『ゲーム』と、僕の知る『ゲーム』は、色々と『仕様(スペック)』だって変わっているだろう?」

 煌が言うと、佐紀は少しだけ笑う。

「まあ確かに、色々と変わっている部分もあるだろう、だけど……」

 佐紀は、じっと煌の顔を見る。

「君には、『ゲーム』の才能がある、ボクは、君ならば確実に『優勝』出来ると思っているよ?」

「……あのな、僕は別に『優勝』したい訳じゃないんだぜ?」

 煌は言う。

 そうだ。自分は妹が参加したのかどうか、それを知りたいだけで……

「どのみち……」

 佐紀が、じっと煌の顔を見る。

「妹ちゃんの手がかりを探すには、『主催者』に直に会わねばならないんだろう? ならば、『大会』には参加しなければならないじゃないか」

 佐紀が言う。

 煌は、息を吐いた。

 確かに、それはその通りだ。

「……解ったよ」

 煌は言う。確かに……『ゲーム大会』と聞いて、煌の中で眠っていた『心』が、再び揺り動かされたのも事実だ。

「どうせなら、確かに……『トップ』を目指したいしな」

 煌はそう言って。

 口の端を、きゅっ、と釣り上げて笑う。

「……この『大会』の中では……」

 煌は言う。

「『ゲーマー』になるとしよう」

 煌はそう言いながら、枠の中に名前を書き込んだ。

 そう。

 それはかつて、煌が使っていた名前。

 『ゲーマー』としての、名前だ。


 『コウ』


 本名の煌(あきら)の読みを変えただけの、単純なものだったけれど。

 それでも、かつてこの名前は、街中のゲームセンターのランキング表のトップに必ず書かれていた、どんなジャンルのゲームの、どんなイベントであったとしても、だ。

 そして。

 煌。

 否。

 コウは、画面を見た。

 そこに、『死神』が再び映っていた。

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