第13話

 名うての『ゲーマー』。

 それならば、確かに妹のところにこんな物が届けられたとしても、まあおかしくは無いだろう、妹も十分に『ゲーマー』と呼べるだろうし、煌は今、どんな『ゲーマー』がいるのかは知らないけど、佐紀の話や、時々見たネットゲームのランキングなどを見れば、妹の実力が相当のものである事や、ゲーム内ではかなりの有名人である、という事くらいは解る。

 だが問題は……

「一体、何処の団体がこの大会を開いているんだ?」

 煌は問いかける。

 そうだ。

 この『招待状』には、そういう事が一切書かれていない。

「解らない」

 佐紀は首を横に振る。

「だが、実際既に何人もの『ゲーマー』が、この大会に参加したらしい、という事は、既にネットなどで確認済みだ、どんな大会で、何処で開催されて、そしてどんな『ゲーム』で勝負をするのか、などという事は、とにかく色々な情報が飛び交っていてちっとも解らないがね」

 佐紀は言う。

「……確かめる方法は、たったの一つしか無い、という事か」

 煌は言う。

 つまりは、このQRコードにアクセスして、参加するしか無い、という事だ。

 煌は、スマートフォンを取り出した。

「おい」

 佐紀が横から声をかけて来る。

「どんな大会かも解らないのに、うかつにアクセスするのは危険だぞ」

 佐紀が言う。

 煌は黙り込む。

 確かに、そうかも知れない。

 実際、この『大会』に妹が参加した、という確かな証拠も無いのだ、事実、一昨日の晩、妹の部屋に行った時に、こんな『招待状』は無かった。

 少なくとも、煌が見た範囲では、だ。

 妹の事だから、自分がゲームの大会に出る、などと言えば、兄に反対されると思って隠していたのかも知れない。

 解らない。

 だが。

 今は……

 今は、ごく小さな事でも構わない。

 手がかりが、必要なんだ。

「危険でも、今僕は……」

 煌は言う。

「妹を見つけるための手がかりが、少しでも欲しいんだ」

 煌は言いながら、QRコードをスマートフォンで読み込んだ。

 ぴぴっ、と。

 スマートフォンがQRコードを読み込む音が、静かな部屋の中に響いた。

 煌は、じっと。

 じっと、スマートフォンの画面を見た。

 ややあって。

 何かが、画面に表示された。


『ようこそ』

 声が、響く。

 感情も、抑揚も無い、まるで機械の様な声だったけれど、それは紛れも無く、誰かが実際に喋っている肉声だ。

 煌は画面を見る。

 画面の中には、何処かの森の、開けた場所が映し出されている。

 風がよほど強いのか、木々が風に煽られ、ざわざわと不気味な音が響いているのが、スマートフォンの画面越しでもはっきりと見える。

 そして。

 画面の右側。

 そこに、大きな建物の影が微かに見える。

 だが、残念ながら壁の一部しか映し出されておらず、外観をはっきりと見るのは不可能だった、一体……

 一体、どんな建物なのだろう? そして……

 そしてあそこは、一体。

 一体、何処なのだろうか?

 煌は黙って画面を見る。

 ややあって。

 画面の真ん中に、すうう……と。

 黒い、影が現れた。

「っ」

 煌は思わず目を剥いていた。

 その影は……

 まるで、近くの暗闇の中から浮かび上がってきたように、突如として画面の中に現れたのだ、CG、なのだろうか?

 解らない。

 煌はそいつをじっと見る。

「……これは……」

 煌は呟いていた。

 真っ黒なフードのついたマント。

 手に持った、大きな鎌。

 そして、骸骨の顔。

「……『死神』」

 煌は、呟いた。

 そこに佇んでいたのは。

 紛れも無く。

 『死神』だった。

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