第161話 聖水

【お知らせ】

いつも拙作をお読みいただき誠にありがとうございます(*ᴗˬᴗ)⁾⁾


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 アニックの街にいたみんなが王都まで駆けつけてくれた際にもらったユージャさんからの手紙。


 そこにはポーションに聖魔法の力を付与するために、可能性がありそうな素材や調合方法などのアドバイスが記されていた。元々回復魔法や解毒魔法の力をポーションに付与する検証をずっと一緒に手伝ってくれたユージャさんは永い時を生きてきたエルフで、他の人とは比べ物にならないほどの知識がある。


 ユージャさんからもらったヒントを元に王都にいる研究者たちを総動員して実験や検証を行った結果、ついに俺の聖魔法のピュリフィケーションの効果をポーションに付与することができたのだ。


 そして完成して聖水と名付けたポーションの効果は今見た通りで、傷を再生するカース化した魔物の特性を無効化することに成功した。


「よし! これならいけるぞ!」


「はい、お母さま! これもソーマ様のおかげです!」


「いえ、協力してくれたみんなとユージャさんのおかげですよ」


 カース化に聖水の効果があったことにより、国王様とカロリーヌさん、そして城壁の下にいる味方の士気が一際上がる。実際のところ、この聖水の効果が見られなければ、かなり厳しい戦いになっていただろうからな。


 聖魔法を使用できる治療師などのジョブを持つ者は俺を含めて戦闘に縁のない人たちが多い。聖魔法を使用するにはある程度近付く必要があるため、非戦闘員があのドラゴンに近付かなければならなかった。


 しかし、この聖魔法の力を付与した聖水があれば、聖魔法を使える者たちはドラゴンに近付かなくてもよい。


 聖水の効果がなかった時のために、聖魔法を使用できる人たちは王都の中心にある王城へと集められていたが、これで戦闘に参加する必要はなくなって、死傷者がぐっと減ることは間違いないだろう。


 戦闘に参加している味方はこの世界での戦い方に慣れており、守りに特化した戦い方ができるが、治療師たちはそうではないからな。


「GYAAAAAAA!」


「ダメージを与えられることは分かったがまだ焦るなよ! これ以上進ませないことを優先して戦え! 周囲の魔物を一掃したら、全員で一斉に叩くぞ!」


「「「おおおおお!」」」


 ダメージを受けたことによりドラゴンが再び咆哮を上げるが、ディアーヌ様の指揮の下、味方の部隊は冷静にドラゴンから距離を取りながら牽制をしていく。予定通り、周囲の魔物を一掃してから、全員で一気に叩く予定だ。


「……っ!? お母さま、肌の色が元に戻っていきます」


「うむ……やはり聖水の力は永続的でないようだ」


 ここからだと遠くてあまりよく見えないが、先ほどディアーヌ様が掛けた聖水によって変色していた肌の色が元の黒色に戻ってしまったらしい。


 元々カース化した魔物に対して聖魔法を使用しても時間が経つとその効果は戻ってしまうと聞いていた。


「ですが、効果が消える時間は思ったよりも早いですね……」


「ああ。ソーマ殿が掛けた聖魔法の聖水であれば、その効果もかなりの時間で継続すると思っていたのだが、少し当てが外れてしまったか」


「……もしかするとただのカース化した魔物ではなく、変異種であることも影響しているのかもしれませんね」


 なるほど、カロリーヌさんの言う通り、その可能性は十分にありそうだ。


「ですが聖水の効果があるうちに与えた傷までは回復しないようです。これなら十分討伐は可能に違いありません!」


「うむ! 作戦通り、まずは周囲の魔物を殲滅してからであるな」




「……くそっ、動きは遅えがバカでかくて嫌になるぜ!」


「それに攻撃しても攻撃しても再生するってのはさすがにズルすぎるぞ!」


「GRUUU!」


「うおっ、やべえ!」


「何だこりゃ!」


 大きな巨体のカースドラゴンの変異種が相手をしている騎士団たちに背を向けたと思ったら、その巨体の後方についている大きな尻尾で騎士団たちを薙ぎ払おうとしている。


 キンッ


「あ、危ねえ! ソーマ様の障壁魔法か。おかげで命拾いしたぜ!」


「あんな攻撃もしてくるのかよ……危ないところだった」




「さすがソーマ様です!」


「あれだけの巨体でスピードも遅いので、城壁の上からでも多少は援護ができそうですね」


 動きは遅いとはいえ、あの質量の尻尾に遠心力が加わるわけだから、打ち所が悪ければ一撃で致命傷になっていたかもしれない。


 障壁もなんとか一撃は耐えてくれたが、次の攻撃で破壊されてしまった。やはり質量がある分、その破壊力はとんでもないようだな。


「はい。ですがソーマ様でしか治療できない怪我人もどんどん出てくるでしょう。皆さんを信じて、援護は最低限でお願いします」


「ええ、承知しました」


 城壁の上からでも目に見えている範囲内なら障壁魔法のバリアを張ることができる。しかしカロリーヌさんの言う通り、部位欠損の怪我やポーションでは治せないような大きな怪我は俺にしか治すことはできない。


 今後何があるか分からないわけだし、味方を信じて魔力は多少温存していかなければならない。

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