第154話 見えてきた希望


「それで、ギルドマスター。なんでデジアナがここにいるんだよ?」


「こいつは街の騎士団預かりのはず」


 フェリスとフロラがターリアさんに詰め寄る。


 ……フロラもこいつ呼ばわりは止めようね。


「うむ。儂らや他の冒険者のいない間は街を副ギルドマスターと騎士団に任せてきたのだ。本来ならば騎士団長のルベルも王都まで来たがっていたのだが、今騎士団長が抜けるとまずいという話になり、代わりに街の方を任せてきた」


 確かに騎士団はアグリーの事件によって、副団長や大勢の騎士団員が処分にあったため、まだ内部がゴタゴタしている。ここで騎士団長のルベルさんが街から離れるとかなりまずいだろう。


「その際にこの者がどうしてもソーマ殿の元へ行きたいと言ってな。騎士団からここ数か月の働きは聞いており、日ごろの行いも問題なく、強さも十分であると判断した。アニックの街の孤児院には妹がいるから逃亡の恐れもなく、何より本人が強くソーマ殿の元へと来たいと言っておったので同行を許可したのだ」


「少しでもソーマ様のお力になりたく参りました!」


 どうやらターリアさんや冒険者が不在のアニックの街は騎士団のルベルさんたちが守っているらしい。デジアナもアニックの街から駆けつけてくれたようだ。


「2人とも本当にありがとうございます。まだカースドラゴンの変異種が王都に来るまで少し猶予があるらしいので、今日はゆっくりと休んでくださいね」


「うむ、先ほど城の者からもそう聞いている。大急ぎで王都まで来たから、さすがの儂もだいぶ疲れておる。宿でゆっくりと休ませてもらうとしよう」


「……ソーマ様はこちらで休まれるのですか? 私もソーマ様の護衛をさせていただきたいのですが」


「ソーマの護衛には我々がいるから大丈夫だ!」


「ソーマは私たちが守るから、これ以上の護衛は必要ない!」


「デジアナも疲れているんだろ? 早く宿へ戻って休んでおけって!」


 なぜか俺の代わりにみんながデジアナに答えた。


 まあ、確かにみんなの言う通り、ここは王城の中だし、護衛はみんながいれば十分過ぎるほど十分だ。


「護衛はみんながいるから大丈夫だよ。デジアナもアニックの街から急いで駆けつけてくれたみたいだし、ゆっくりと休んでこれからに備えたほうがいいよ」


「ソーマ様が私ごときの心配を……ありがとうございます! 何かありましたらすぐにソーマ様の元へ参りますので、いつでもどこでもお呼びください!」


「う、うん……その時はよろしく頼むよ」


 相変わらず俺に対して忠誠心が高すぎる……というか、最初に出会った時と性格が変わり過ぎだよなあ……


「おっと、そうであった。ソーマ殿、もうひとつお伝えしなければならない大切なことがあります」


「大切なことですか?」


「こちらがユージャ殿から預かっている手紙となります。王都から連絡がありましたが、なにやら例のポーションのように聖魔法の効果をポーションなどに付与できないかを試みると聞きました。もしかしたらすでに完成されてしまっているかもしれませんが、こちらの言伝をどうぞ」


「ユージャさんからですか! いえ、実はまだ行き詰っているところなんですよ」


「おお、そうですか。ユージャ殿によると、魔鉱結晶のような魔力に反応して効果を底上げするような素材や、それ以外の可能性のありそうな素材のリストを作ってくれたようです。ユージャ殿の店にある素材は一緒に持ってきておりますので、明日王城まで届けさせましょう。他の素材については王都なら入手できるだろうとのことです」


「本当ですか! それはとても助かります」


 ユージャさんは100歳を超えるエルフで、素材や薬などの知識がとてつもなくある。それこそ例のポーションはユージャさんの協力なしには完成させることができなかっただろう。


 そのユージャさんが可能性のある素材をリストアップしてくれたのだ。もしかしたら、行き詰っているこの状況を打開してくれるかもしれない!


「それじゃあ、早速その素材を集めに……」


「ソーマ、身体を壊さないように休むと言ったばかりだろう」


「素材の方は城の人たちに用意してもらう」


「そうだな、大至急用意してもらえば、明日の朝までに多少の準備はできるだろ」


「……そうだね、今日は俺もゆっくりと休むよ」


 本当なら今すぐにでも検証をしてみたいところだが、確かに今の状況で焦っても仕方がない。このリストに書かれている素材を集めるのにも多少の時間は掛かるだろうし、今日は俺もゆっくりと休むことにしよう。


「残念ながら、冒険者ギルドや騎士団にはカース化と変異種が重なった魔物についての情報はありませんでしたな。ですが、アニックの街からだけでなく、他の村や街からも大勢の者がこの王都に集まっております。きっとなんとかなるでしょう!」


「はい! なんだか、希望が見えてきました。明日から頑張りましょう!」


 みんなが支えてくれるということで、なんだか先ほどよりもだいぶ希望が見えてきた。


 敵は未知のカースドラゴンの変異種だが、みんながいてくれれば、きっとなんとかなるに違いない!




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