第148話 聖男印のポーション
「こちらがソーマ様たちのお部屋となっております」
「ありがとうございます、カロリーヌさん」
次の日、昨日まで泊まっていた宿で、食事をいただいてから王城へと移動してきた。そしてそのままカロリーヌさんに俺たちが止まる予定の部屋へと案内された。
案内された部屋は昨日泊まっていた高級宿と同じくらい豪華な部屋だった。さすがこの国の王都にある王城である。
例のカースドラゴンの変異種の動向が分かるまで、俺や護衛のエルミーたちは王城でお世話になる。もちろんただお世話になるだけでなく、万が一戦闘になる可能性も考えて、ポーションを作る手伝いをさせてもらう。
俺がエリアヒールを使うことによってできたポーションは他の治療師がエリアヒールをかけたポーションよりも効果がだいぶ上らしい。おそらくこれも聖男によるジョブの力だろう。
「ソーマ様、本当にご協力ありがとうございます」
「いえ、俺も国王様やカロリーヌさんにはとてもお世話になっていますから。これくらいの協力でしたら、いくらでも任せてください」
「とても感謝しておりますわ。それでは皆さま、こちらお願いします」
「はい」
部屋に荷物を置いて案内された場所は少し広めの部屋になっていた。そしてその部屋には多くの木箱が積まれている。その木箱ひとつひとつの中にはたくさんのポーションが入っていた。
「ソーマ様、こちらがユージャ様とソーマ様のレシピによって作られたポーションとなります。ソーマ様のペースで大丈夫ですので、どうぞよろしくお願いします」
「はい、分かりました。休憩を取りながら順番にエリアヒールをかけていきます」
「よろしくお願いします。何かありましたら、外にいる兵へお伝えください。私はこのあと今後のことをお母さまやお姉さまと話さなければならないので、こちらで失礼いたします」
ぺこりと頭を下げて部屋を出ていくカロリーヌさん。
いつもは可愛らしい様子のカロリーヌさんだが、今日は常に堂々とした態度を取っている。例の魔物に対して、それほど慎重かつ真剣に考えているのだろう。
「さあ、早速始めようか」
「ああ、ポーションを運ぶのは私たちに任せておいてくれ!」
「おう、いくらでも手伝うぜ!」
「私も魔法で運ぶのを手伝う!」
「みんな、ありがとう」
さて、今の俺にできることをするとしよう。
「エリアヒール!」
いくつものポーションが入った木箱を中心に範囲型の回復魔法を放つ。
「……よし、こっちのポーションは大丈夫だから、あっちに持っていくぜ」
「こっちのポーションも発光しているな。問題なさそうだからあちらへ運ぶぞ」
ユージャさんのレシピ通りに作ったポーションへ回復魔法を使用すると、発光現象が起こる。木箱の蓋を開け、中に入っているポーションがすべて発光していることを確認してから、エルミーたちが確認した木箱を所定の場所へと移動する。
そして念のために30分ほど休憩した後に再び新しいポーションへ回復魔法をかける。一度エリアヒールをかけると多少だが疲労感はある。
聖男のジョブの力により、やろうと思えば休まずに何回か使うことができる気もするが、アニックの街で治療をしている時と同じで、念のため間にしばらく休憩を挟んでいる。連続で使用して効果量が落ちてしまっては困るもんな。
「ソーマ様、夕食のご用意ができました」
「ありがとうございます、カロリーヌさん」
「……すごいですね。もうこれほどの回復ポーションができていらっしゃるなんて」
「お役に立てたようで良かったです」
夕方になるとカロリーヌさんがこちらの部屋へ迎えに来てくれた。
「カロリーヌ様、例のドラゴンのほうはどのような様子ですか?」
「……あまり良い状況ではないようです、エルミー様。どうやら例のドラゴンは付近の村に進行方向を取っている可能性が高いとのことです。幸い進行速度の方は遅く、村の者はすでに避難を始めております」
「ということは、変異種の習性により、人がいる方へ進んでいる可能性が高いということ……」
「はい、おそらくはフロラ様の言う通りかと思われます。村の者が避難すれば、別の人が多い村や街を目指して再び進行を始めるでしょう」
「ちっ、面倒な相手だな……」
どうやら人の多い場所を狙って移動するという変異種の習性を持っているらしい。唯一ありがたいのは進行速度が遅く、事前に避難することができることか。これで空を飛べたり進行速度まで早ければ、一瞬で国が滅びていた可能性まである。
「そういえばカース化した魔物や変異種になった魔物の知能はどれくらいあるの? 人が多い方に進む習性があるなら、うまく誘導して這い上がれないような高い崖に落としたり、海に落とすとかできないのかな?」
ふと疑問に思ったことを口にしてみた。もしも知性がほとんどないようなら、そういった手段を取ることもできると思うのだが。
「これまでの記録によると、知能については元の魔物の知能に準ずることが多いようです。調査部隊の報告によりますと、障害物を避けるような知能はあるようです。とはいえ、調査部隊はかなり遠くから観測しているので、詳細についてはまだ分かりません」
「なるほど、分かりました」
さすがにそこまで単純な話ではないか。とはいえ罠を仕掛けるのは有効かもしれない。シンプルだけれど、落とし穴に落として、上から一方的に聖魔法と攻撃を加えるとか。
まあ、それくらいだったらすでに国王様達が考え付いているかもしれないけれど。
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