第141話 デート


「おはようございます」


 そして次の日、今日は久しぶりに王都を観光するということで、高級宿を出て待ち合わせ場所へとやってきた。ちゃんと待ち合わせ時間よりも前にやってきたのだが、すでにカロリーヌさんもディアーヌ様も待ち合わせ場所で待っていた。


「お、おはようございます、ソーマ様!」


「おはよう、ソーマ殿。昨日の正装も似合っていたが、今日の私服もとても素敵だぞ」


 今日の俺の服装は昨日の正装である服装とは異なって、王都の街を歩くための多少ラフな格好をしている。


 男性である俺よりも早く待ち合わせ場所で待っており、すかさず俺の服装を褒めるあたりはさすがに何人も夫がいるディアーヌ様だ。今回みたいに男性と出かけることも多いのだろうな。


「ありがとうございます、ディアーヌ様。ディアーヌ様も今日は昨日とは違った雰囲気の服装ですが、とてもお似合いですよ。もちろんカロリーヌさんの服装も可愛……格好良くてとてもよくお似合いです」


 今日のディアーヌ様とカロリーヌさんの服装も昨日の正装とは異なり、多少はラフな格好をしている。ディアーヌ様は防具と武器を身に着けているし、戦闘もできるのかもしれない。


 カロリーヌさんはいつもの髪を下ろした髪型ではなく、後ろに髪をまとめたポニーテールにしているため、とても新鮮だ。今日のためにおめかしでもしてきてくれたのかと思うと、とても可愛らしく思えて、ついうっかり可愛いと褒めてしまいそうになった。


 こちらの世界では女性は格好良いと褒められた方が嬉しいということをついつい忘れてしまいそうになる。


「あ、ありがとうございます! ソーマ様もとてもお綺麗です!」


 褒められたことが嬉しいのか、俺を褒めたのが恥ずかしいのか、顔を赤く染めているカロリーヌさんは相変わらず可愛らしい。うっかり可愛いと言わないように気を付けないといけないな。


「さて、それじゃあ早速お店へと移動しよう。デートはすでに始まっているのだからな」


「デ、デート!?」


 ディアーヌ様の言葉にうろたえるカロリーヌさん。というかこれってデートなのか……


 女性2人と一緒に出掛けるのをデートと呼んでいいのだろうか? その辺りは前世で一度もデートなんてしたことがない俺にはよくわからないが、向こうがデートと言うのなら、デートということにしておこう。俺もデートの方がテンションは上がるもんな。


「「「………………」」」


 ……相変わらず無言のエルミーたちの視線が少し怖い。


 いつものようにエルミーたちは俺の護衛についてきてくれている。ディアーヌ様とカロリーヌさんの護衛もカミラさんたちを含めた20人近くいるし、今日は結構な大所帯だ。さすがにこれだけの護衛に囲まれていれば、ちょっかいを出してくるようなやつはいないだろう。


 一応昨日の夜にエルミーたちにはディアーヌ様のプロポーズには応える気はないと伝えてある。さすがに一国の王女かつ、何人も夫がいるディアーヌ様と結婚をするのは元の世界で童貞男子高校生であった俺にとってはハードルが高すぎる。……まあ、一人の女性としてみたら十分すぎるほどに魅力的なんだけれどね。


 ちなみにティアさんたちはティアさんで、別行動で王都を楽しんでいる。相変わらず同じパーティのルネスさんとジェロムさんとは仲が良いようだ。




「それじゃあ、まずは鍛冶屋に行くんでいいんだな?」


「はい。よろしくお願いします」


 昨日のうちに俺が行く予定だった場所は伝えてある。前回エルミーたちの付き添いで行った鍛冶屋や魔道具屋は結構楽しめたからな。どちらかというと、みんなのためであったけれど、俺も普通に楽しみだ。


 それと護衛を含めてかなりの人数だからな。今日は前回楽しんだ市場での買い物はさすがに迷惑になるからなしだ。アニックの街へ帰る際のお土産を買う必要もあるし、市場はまた別日に行くとしよう。


 大勢を引き連れて、ディアーヌ様が案内してくれる鍛冶屋へと歩いていく。俺はディアーヌ様とカロリーヌさんに挟まれた


「き、今日はいい天気ですね、ソーマ様」


「ええ、雨が降らなくて良かったですね。さすがにこの人数では雨に降られると大変ですから」


「そ、そうですね!」


「それにしても王都の街もしばらく見ないうちにいろいろと変わりましたね。活気も出ているようでなによりです」


「そ、そうですね!」


「………………」


 ふむ、どうやらカロリーヌさんは少し緊張しているようだ。先ほどディアーヌ様がデートだと言ったことを意識してしまったのかもしれない。そういうところもとても可愛らしいよね。


「それもソーマ殿のおかげだぜ。以前にソーマ殿が来た時に闇ギルドをいくつか潰してくれたのと、例のポーションのおかげで、王都全体の景気がだいぶ良くなったからな」


「そうなんですか。それは俺としても嬉しいですね」


 何気なく振った話題だが、以前に王都へ来た時よりも活気が良くなっていたのは俺の気のせいではなかったようだ。いろいろと貢献できていたのならなによりだ。

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