第140話 第一王女と第二王女
「もちろん他の夫たちは愛している。残念ながら今も子宝には恵まれてねえから、毎晩のように愛しているぜ。とはいえ、ソーマ殿のように素晴らしい男性と出会ったなら、女として口説くのが当然だ」
お、おう……どうやらディアーヌ様はかなりお盛んなようだ。いや、国の跡継ぎを産むためなんだから、当然と言えば当然なのか?
「お、お姉様はもう少し慎みというものを持つべきです!」
「まったく甘過ぎる。そんなんだからカロリーヌは未だに男性経験がなんだぞ」
「い、今そのことは関係ありません!」
「いいや、大いに関係ある。いいか、男というものは口ではいろいろと言いながら、自分を口説いてくれる女を待っているものなのだ。自分から積極的にアピールせずにどうする。それにただでさえ良い男は少ないのだ。モタモタしていたら、他の女にすぐに奪われてしまうぞ」
「ううう……」
どうやらカロリーヌさんが劣勢のようだ。まあ、確かにこの世界だと、言っていることはディアーヌ様のほうが正しいのかもしれない。
とりあえず2人の中はそこまで悪いというわけではないらしい。第一王女と第二王女というと、王位継承権を巡って争っているイメージがあったが、憎しみ合っているというわけではなさそうだ。
今のも姉が妹にアドバイスをしているようにも取れる。まあ、内容はあれだが……
「2人とも客人の前ではそれくらいにしておくがよい。まったく、ディアーヌは節操がなさすぎるし、カロリーヌは消極的すぎる。姉妹でありながら、こうも性格が異なるとはな……」
国王様が再びため息をつく。どうやら母親としてもいろいろと大変らしい。
「そうだな、他の護衛の者もいるのに失礼であった。ソーマ殿を口説くのはまた後にさせてもらおう」
「皆様、大変失礼いたしました」
ディアーヌ様とカロリーヌさんが頭を下げる。というか、あとで口説かれるんだな、俺は……
「はい、大丈夫ですよ」
「あ、ああ。こちらも大丈夫だ」
俺とエルミーが答える。ディアーヌ様も礼儀がないというわけではなく、礼儀がある上での行動なんだよな……
それにしても、まさか出会ってすぐにプロポーズされるとは……カロリーヌさんが破天荒な人と言うわけだよ。
「デーヴァ殿、失礼いたしました」
「なあに、構いませんよ。これも若さですな」
ディアーヌ様がデーヴァさんにも頭を下げる。デーヴァさんはまったく気にしていないようで、柔らかな顔で微笑んでいる。ディアーヌ様とは長い付き合いみたいだし、孫でも見ている心境なのかもしれないな。
「それで、ソーマ殿たちは今回どれくらい王都に滞在予定なのだろうか?」
「そうですね、少なくとも明日から2~3日はゆっくりとしていくつもりです。せっかくなので、王都だけでなく、近くを観光してもいいかもしれませんね」
今回の一番の目的は例の病気を治すポーションの報告と、その検証をお願いすることだ。俺が聖男であることは今のところカロリーヌさんにも伝えていないので、このあと国王様と個別で話をさせてもらう予定になっている。
それ以外には特に大きな目的はないが、せっかく遠い道のりを超えて王都までやって来たんだ。また王都の市場や鍛冶屋なんかには寄ってみたい。
そして前回来た時に王都の中は観光したので、今回は王都付近の観光名所なんかを回ってみてもいいかもしれない。
「なるほど。前回王都に来られた時は慌ただしかったからな。ぜひ今回はゆっくりとしていってほしい。この王都の付近にもいろいろと面白い場所もあるぞ」
「ありがとうございます。いろいろと楽しませていただきます」
確かに前回来た時はとても慌ただしかったもんな。
「ソーマ殿、それなら俺も同行してもいいだろうか?」
「えっ、ディアーヌ様がですか!?」
「ああ、前回ソーマ殿が王都に来た時はいろいろと立て込んでいたが、今回はちゃんと予定を空けておいたからな。ぜひ、同行させてほしい」
「ええ~と……」
ディアーヌ様は本当にグイグイ来るな……
この国の王族ということもあってさすがに断りづらい。いや、ディアーヌ様も綺麗な女性だし、断る必要なんてないのかもしれないけれど。
「ソ、ソーマ様、私もご一緒してもよろしいでしょうか!」
ディアーヌ様に対抗してか、カロリーヌ様まで手を上げてくる。
正直に言うと、今回もカロリーヌ様が同行してくれるのかなとは思っていた。しかし、この状況だと、お誘いを断るなんてできそうにない状況だな。当然どちらかのお誘いだけを断るなんてことはできるわけがない。
いや、こんな綺麗な女性2人からのお誘いを断るなんて選択肢はそもそもない気がするけれどね。
「はい、もちろんです。2人ともよろしくお願いします」
「ああ、楽しみだぜ!」
「楽しみです!」
2人とも本当に嬉しそうな笑みを浮かべている。
俺と一緒に出掛けるだけで、これほど喜んでくれるなら、俺の方もとても嬉しい。
「「「………………」」」
……若干エルミーたちの視線が怖い気もするが、それについてはあとで考えるとしよう。
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