第139話 第一王女様
「この国の第一王女のディアーヌだ。よろしくな」
国王様の紹介により席を立つこの国の第一王女様であるディアーヌ様。背が高くてスタイルも良く、正装である紳士服がとても似合っている美しい女性だ。
カロリーヌさんがとても可愛らしい女性であるのならば、彼女は綺麗な女性である。だいぶタイプは違うが、顔立ちは似ているので、姉妹であることはよく分かる。
「初めましてディアーヌ様、俺は――」
「知っているぜ、ソーマ殿。というか、もうこの国であんたの名を知らねえやつはいねえだろ。この国で2人目の男巫、そして治療師の回復魔法をポーションに込めることを発見した第一人者。そして非公式ではあるが、同じ男巫であるデーヴァ殿の病を治してくれた男だ」
「はい、ソーマと申します。よろしくお願いします」
「まずはデーヴァ殿を救ってくれたことについて礼を言わせてくれ。俺は以前デーヴァ殿に命を救われたことがある。それにデーヴァ殿にはいろいろと良くしてもらっていた。大恩あるデーヴァ殿を助けてくれて感謝するぜ!」
そう言いながら、俺の前へとやってきて頭を下げるディアーヌ様。俺もそれに対して席を立つ。
なんだ、カロリーヌさんはディアーヌさんが破天荒な人だと言っていたが、とても常識のある立派な人みたいだ。自分の命の恩人であるデーヴァさんを助けてもらえたことがとても嬉しいらしい。
「とんでもありません。どうか頭をお上げください、ディアーヌ様。俺もデーヴァさんを助けることができて本当に嬉しいですから」
「……噂通り本当に良い男だな。これだけの功績を上げながらも決して驕り高ぶることなく、必要以上の報酬を決して受け取らない。そりゃ巷では天使と褒めたたえられるわけだ。もちろんその容姿もとても美しい」
「おほめに預かり恐縮です」
ディアーヌ様がようやく顔を上げてくれて、こちらを真っ直ぐ見てベタ褒めしてくる。カロリーヌ様と同じ透き通るような青い瞳は本当に澄み切っていて美しい。最近では褒められまくっている俺でも照れてしまうほどだ。
「ソーマ殿、俺と結婚してくれ!」
「………………は?」
「はあ!?」
「ん、んな!?」
「ちょっ!?」
空耳……というわけではないよな。その証拠にフェリス、フロラ、エルミーの3人は驚愕の表情を浮かべている。
なんか突拍子もなさ過ぎて、言われた張本人である俺の方が冷静になっている。
「ええっと、失礼ですけれど、今日初めてお会いしましたよね?」
いくら俺でもディアーヌ様のような人を忘れるはずがない。今日が初対面で間違いはないはずだ。
「ああ、今会ったばかりだ。だが、そんなことは関係ない」
「………………」
いや、関係あり過ぎだろ! さすがに初対面でプロポーズされても困る……
「お、お姉様!」
「はあ……やはりこうなったか……」
いきなりの展開にカロリーヌ様は驚き慌てふためいている。そんな姿も可愛らしい。
そんでもって国王様はため息をついている。なんかこうなることを予想していたみたいだ。
「ソーマ殿、あんたに一目惚れしてしまった。どうか、俺と結婚してくれ!」
……いや、たとえ一目惚れだったとしても、さすがにいきなり求婚されても困る。しかも普通の人ならともかく、ディアーヌ様はこの国の第一王女様で次期国王候補ということになる。
いくらディアーヌ様が綺麗な女性であったとしても、すぐにOKできるわけがない。
「申し訳ございません。ディアーヌ様とは今出会ったばかりなので、さすがに今すぐ結婚することはできないです」
「……そうだよな。ではまずはお互いのことを知っていこうじゃないか。このあと一緒にお茶でもどうだ? なんだったらそのままベッドでも構わないぞ!」
構うわ! いくら俺でもそれくらいの節操は持ち合わせているぞ。
っていうか、ディアーヌ様がめっちゃグイグイ来るんだけど!?
ああ、でもディアーヌ様は美人だし、いつの間にか握られているその手は柔らかいし、はっきりと断りづらい!
「ディアーヌ、ソーマ殿が困っているであろう。一度こちらに戻って来るがよい」
「お、お姉様! は、はしたないです!」
「……ちっ」
ディアーヌ様は残念そうに俺の手を離して、自分の席へと戻っていった。
ふう~どれだけこっちの世界の女性と触れ合っても、それに慣れることはない気がする……
「まったく、ディアーヌはもう少し控えたらどうだ。ソーマ殿がこの国にとって、どれだけ大切な者かちゃんと説明しておいたであろう」
「お言葉ですが母上、男性の魅力に身分や立場などは関係ございません。女として生まれてきたからには、良い男がいればすぐに口説くのが道理であります」
「……まったく、確かにその通りであるが、お前はもう少し節操というものを持て。良い男を見つけるや否や、すぐに求婚して、すでにお前には5人も夫がいるであろう」
おう……どうやらディアーヌ様には5人もの夫がいるらしい……
まあ、国の第一継承権を持っているなら複数の伴侶を持つのは当然のことなのかもしれないが、元の世界の常識を持っている俺にとって、さすがに6人目の伴侶になる気はないぞ。
あまりにもグイグイくるので、少し危ないところだった……
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