第138話 再びの謁見


「おお、ソーマ殿。この度は遠路はるばる王都まで足を運んでくれ、とても感謝しておるぞ」


「お久しぶりにございます、国王様。この度はお招きいただき、とても感謝しております」


 以前と同じ、とても豪華な内装の大広間にて、国王様との謁見が行われている。光り輝くシャンデリア、壁に飾られた絵画や美術品、敷き詰められた赤い絨毯。相変わらずとても豪華で煌びやかな広間だ。


 俺の横には第二王女であるカロリーヌさん。そして後ろには護衛としてエルミーたちがいる。もちろん武器はこの大広間の入り口で騎士の人たちに預けてある。今回も申し訳ないが、ティアさんたちはお留守番だ。


 国王様の隣には護衛のジャニーさんと相談役のおばあさんであるコレットさん、反対側には男巫であるデーヴァさんがいた。デーヴァさんももう元気になったらしく、自分の足で歩いている。前回治療をした時には病は治ったが、体力は治っていなかったので、床に伏せたままだったから、その時に比べたらだいぶ良くなったみたいだ。


 そしてジャニーさんの隣にいる長身の女性。カロリーヌさんと同じ美しい金髪と宝石のような色をした美しい碧眼、背丈はカロリーヌさんよりもだいぶ高いが、顔立ちは国王様とカロリーヌさんの面影があることから、彼女がこの国の第一王女様で間違いはないだろう。


「うむ、元気そうで何よりである。それではみなの者、席を外してくれ」


「「「はっ!」」」


 国王様の号令に従い、両側に控えていた騎士たちがこの部屋を出ていく。そしてこの大きな広間に残されたのは俺たちだけとなった。


「……よし、もう大丈夫か。まったく、王として振る舞うのはやはり面倒であるな」


「「「………………」」」


 前回と同様に、兵士たちが部屋を出た瞬間に肩の力を抜く国王様。相変わらず堅苦しいのは苦手なようだ。俺も堅苦しいのは居心地が悪いからとても助かる。


 ならこの謁見の儀みたいなのは必要ない気もするが、形式美というやつだろうか。あるいは、城にいる兵士たちへ王様らしい姿を見せるためなのかもしれない。


「国王様も以前とお変わりなさそうで何よりです」


「ソーマ殿も以前と変わりないようで安心したぞ。なにやらアニックの街では大変であったらしいな。力になれずに申し訳なかった」


「とんでもない。やはり国王様が言っていたように、あの時にお願いしておけば良かったです。すべて自分の甘さが招いたことですよ。それにおかげさまで、アグリーのやつは逮捕されましたし、あの街の悪人たちは一掃できましたから、むしろ良かったかもしれません」


 以前に国王様と謁見した際に、証拠がなくてもアグリーのやつを逮捕しようかと提案されたが、俺自身が断ってしまった。完全に自分の甘さが原因の自業自得だ。


 とはいえ、俺が拉致されたことによって、アグリーに組みしていたアニックの街にいた悪人を一掃できたし、デジアナの妹さんを助けることもできたから、そこまで悪いことではなかった気もする。


「そう言ってくれると余も助かるな。何にせよ、ソーマ殿がご無事で本当に何よりだ。さあ、まずはこんな堅苦しいところで立ち話もあれだ。簡単な軽食でもつまみながら、いろいろと話を聞かせてほしい」


「はい」


 そんなわけで場所を変えて、お菓子やパンなどが置いてある席へと移動する。正直に言ってずっと立ち話はしんどいと思っていたから助かるな。




「ソーマさん、お久しぶりです」


「デーヴァさん、元気になられたようで本当に良かったです」


「ええ、ソーマさんのおかげで、前よりも調子が良いくらいですよ」


「それは本当に良かったです。病み上がりなのにいろいろと検証に付き合っていただいたみたいで、本当にありがとうございます」


 男巫であるデーヴァさんは難病に臥せっていたが、聖男のリカバーの魔法によって、その病を治療することができた。その後の経過は順調で、今ではもうすっかり元気になっている。


 そして例のポーションの検証も手伝ってくれた。デーヴァさんのおかげで、他の治療師が作ったポーションの効果の違いなどいろいろな新しい発見もあった。


「とんでもない! これも私を助けてくれたソーマさんのおかげです。それにこのポーションのおかげで、多くの人が救われました。そのお手伝いができて、私もとても誇らしいですよ」


「デーヴァさん……」


 相変わらず素晴らしい人格者である。常にエロい誘惑に負けそうになってしまっている俺とはえらい違いだ……


「ソーマ殿とデーヴァ殿、そしてアニックの街にいるユージャ殿、皆のおかげでこの国だけでなく、他国のポーションの歴史まで変えたと言っても過言ではない。本当に感謝しておるぞ」


「国王様にそう言っていただけて、俺も光栄です。もちろんユージャさんも国王様から栄誉ある誉をいただいて、とても喜んでおりましたよ」


「そうであるか、少しでも感謝の気持ちを表せたのならなによりだ」


 今回ポーション屋のユージャさんは王都に来られなかったが、国王様にお礼を伝えてほしいという伝言を預かっている。このポーションができたのもユージャさんのおかげだからな。


「……なるほど、噂通り、他の治療師のように驕ることない人格者というのは本当みたいだな」


 国王様の隣に座っている第一王女様が初めて口を開いた。


「おお、紹介が遅れてしまったな。余の娘のディアーヌである」

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