第137話 何もなかった(?)


「そ、それでは私はこちらのベッドで寝させてもらいましゅね……ゴホンッ、ますね!」


 結局今夜はカロリーヌさんと高級宿の同じ部屋で寝ることとなった。人数の都合上前回とは異なり、カロリーヌさんとエルミーたち3人と俺は一緒の部屋で、ティアさんたちは隣の部屋にいる。


 エルミーたちとは何度か一緒の部屋で寝ているが、カロリーヌさんと一緒の部屋で寝るのは初めてだ。さすがの俺も緊張している。


 ……というか言い出しっぺであるカロリーヌさん自身もだいぶ緊張しているみたいだ。顔を赤くしながら、いつも以上にソワソワしているように見える。今も噛んでしまっていたし、こういう女の子らしいところはとても可愛らしい。


「はい、それではお休みなさい、カロリーヌさん」


「お、お休みなさい、ソーマ様!」


「「「………………」」」


 アニックの街からの旅路を超えて、おいしい料理をお腹いっぱい食べて、お風呂に入って汚れと共に疲れを癒したこともあって眠気はもう限界だ。


 カロリーヌさんと同じ部屋で寝るとはいえ、周りにはエルミーたちもいて、高級宿なこともあってベッドも大きくて間隔が離れているため、そこまで緊張することはない。


 そしてなにより野営とは異なり、屋根もありセキュリティが万全で、ふかふかのベッドということもあって、緊張もあったがすぐに俺の意識は消失した。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ふあ~あ……」


「お、おはようございます、ソーマ様!」


「うわっ、カロリーヌさん!?」


 ベッドで横になったまま目を開けると、隣のベッドで横になっているカロリーヌさんと目が合った。


 そうか、昨日は王都の宿に泊まってカロリーヌさんと同じ部屋で寝ていたんだっけな。目が覚めたら隣には美少女とか、さすがにビックリしたぞ。


「おはようございます、カロリーヌさん。んん~とてもぐっすり眠れました。本当に柔らかくて気持ちがいいベッドでしたね」


「そ、それは良かったです! わ、私もぐっすりと眠れました!」


「………………」


 ぐっすりと眠れたという割にはカロリーヌさんの目の下には少しクマがある。もしかしたらあまり眠れていなかったのかもしれない。


 俺は旅の疲れがピークだったし、野営でみんなと隣で寝たことも何回かあったから、その辺りはあまり気にせずすぐに寝てしまったが、異性の隣で普通に寝られる人はこっちの世界でもあまりいないだろう。


 特にカロリーヌさんは王族だし、男性と一緒の部屋で寝ることなんて、今までなかっただろうからな。


 ……さすがに一晩中見つめられていたわけじゃないよね?


「おはよう、ソーマ。んんっ、昨日はぐっすりと眠れたな」


「やっぱりこの宿のベッドは寝心地が違うぜ」


「疲れもだいぶ取れた」


 どうやらみんなを起こしてしまったようで申し訳ないな。とはいえ、俺と同じでエルミーたちもぐっすりと眠れたようだ。日々の見張りもあったから、俺以上に疲れていたに違いない。


 俺の方も疲れと眠気が取れて頭がスッキリしてきた。


 ……冷静に考えると、綺麗な女性4人と一緒の部屋で寝ていたのか、俺は。眠気と疲れで頭が回っていなかったからよかったが、冷静だったらまともに寝られなかった可能性が非常に高い。まさかカロリーヌさんは今日も同じ部屋に泊まるとか言い出さないよね……




「おはようございます、カロリーヌ様、ソーマ様」


「お、おはようございます!」


「おはようございます、カミラさん」


 下の階の食堂に降りたところ、すでに騎士団のカミラさんたちが起きて俺たちを出迎えてくれていた。護衛部隊のみんなは昨日も交代で宿を護衛してくれていたからありがたい限りだ。


「昨日はごゆっくりお休みになられたでしょうか?」


「え、ええ、眠れました」


「はい、おかげさまでゆっくりと休むことができましたよ」


 カロリーヌ様はちょっと怪しいけれどね。


「それは何よりです。本日は予定通り、国王様とお会いしていただいても大丈夫でしょうか?」


「はい、大丈夫ですよ」


「かしこまりました。国王様にはそのようにお伝えしておきます」


「よろしくお願いします」


 どうやら、俺の予定を最優先にしてくれるたらしい。一国の国王様なのにそこまで俺に気を遣わなくても大丈夫なんだけれどな。


 まあ、前回王都に来てデーヴァさんを治療した時に、俺が聖男であると明かしたわけだから、仕方がないと言えば仕方がないのか。




 おいしい朝食をいただき、豪華な装飾が付いた座り心地の良い馬車に揺られて王城へとやってきた。


 相変わらず立派な王城だ。王都のシンボルにもなっているお城だから立派なのは当然か。


「ソーマ様、本日は私のお姉様もいらしております」


「えっと第一王女様ですか?」


 確かカロリーヌさんには姉の第一王女様と、弟の第三王子の2人の家族がいると聞いていた。前回王都に来た時の食事会では、一番年が近いという理由でカロリーヌさんだけしか参加していなかったんだよな。


「はい。ですが、その……お姉様は少し……いえ、かなり破天荒な性格なので、ソーマ様に失礼を働いてしまうかもしれません。もちろんその際は私も全力で止めます!」


「な、なるほど……」


 どうやら第一王女様は破天荒な性格をしているらしい。う~ん少し不安ではあるかもな……

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