第129話 護衛部隊
「お久しぶりです、ソーマ様! 再びソーマ様に会うことができて光栄の至りです。先日の事件のことはお聞きしましたが、ご無事で何よりでした!」
「お久しぶりです、カミラさん。そうか、王都までの道のりはカミラさんたちが護衛してくれるんですね」
背が高く、ピカピカの銀色に輝く鎧を身につけ、腰にはロングソードを携えた女性には見覚えがあった。王都に滞在している時に俺の護衛をしてくれていた騎士団のひとりだ。
まさに女騎士という凛とした立ち振る舞いをしているカミラさん……しかしこの世界で女騎士はオークにくっころされることはないのである。
「はい! 過分な評価をいただきまして、今回私がソーマ様の護衛部隊の隊長を務めさせていただくことになりました! 先日の王都での失態を自らの手で挽回し、ソーマ様にかばっていただきましたご恩を返したいと思います!」
カミラさんは王都での護衛の際に俺がジョブの力によって操られていた子供によって襲われた際の責任を取らされそうになったんだよな。
あれは完全に無警戒だった俺が操られていた子供の前にのこのこ出ていったことが悪いし、操られている子供たちには殺気がなかったので防げなくても仕方がなかった。それに回復魔法ですぐになんとかなったからね。
「あの時のことは気にしないで大丈夫ですよ。それよりもカミラさんたちが王都までの護衛についてくれるのなら安心です。よろしくお願いしますね」
俺はカミラさんに右手を差し出した。
「こ、光栄でございます! 今度こそ私の命に代えましてもソーマ様を守ってみせます!」
「……はい。でも命には代えないで下さいね」
俺が差し出した右手を跪きながら恭しく両手で握りしめるカミラさん。……普通に握手しようとしただけなんだけれどな。
それにしてもこの世界の女性は命をかけすぎである。まあ俺も男として生まれたわけだし、一度くらいは女性の前で自分の命に代えても守ると言ってみたいけどな。
「そしてこちらが副隊長のルスリエとなります」
「ルスリエっす! 男巫であるソーマ様の護衛部隊の副隊長に選ばれて光栄っす! どうぞ、よろしくお願いします!」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
長身のカミラさんの隣には少し小柄な女性がいた。この人もカミラさんと同じような鎧を身につけ、背中にはその小柄な背丈の倍くらいはある長い槍がある。
「カミラ隊長は澄ました感じで言っていますが、ソーマ様が王都を去ったあと、ものすごく頑張っていたっすよ。その頑張りが認められて今回の隊長に選ばれた時はものすごく嬉しがっていたっす!」
「おい、ルスリエ、やめろ!?」
どうやらカミラさんも俺が王都を出てからの数か月で相当頑張ったらしい。そうだよね、一度失敗した評価を覆すのってそう簡単じゃないもんな。
「……コホン。大変失礼しました。それではどうぞよろしくお願いします」
「それにしても改めて見てもすごい護衛の数だね……」
見送りに来てくれていたみんなに挨拶をしてから、王都への道のりを進み始めた。この馬車の前にはティアさんたちが乗っている馬車、さらに前には騎士団の馬車が2台、そしてこの馬車の後ろにはカミラさんたちの馬車が2台ある。
合計馬車6台の大所帯となっている。まるでどこかの街の貴族か大きな商人の気分だ。
「そりゃまあ、この国で2人目の男巫になるわけだからな。俺もそれを聞いた時は驚いたぜ。ただまあ、ソーマの旦那がっていうのは納得できたけれどな」
「ポーラさんやイレイさんには黙っていてすみませんでした」
この馬車の御者は前回王都に行った時と同じでポーラさんだ。前回王都に行った時はポーラさんやイレイさんたちには言っていなかった。
「ああ、そんなことは当たり前だから気にすんな。それよりも、前回とは違ってあのうまい飯が食えなくなるのはちと残念だ。さすがに男巫様に料理なんてさせるわけにはいかねえもんな」
「いえ、料理はいい気分転換になるので今も普通にしていますよ」
「おっ、マジか! そりゃ今晩の飯は楽しみだな! あれからイレイのやつとも何度か会ったが、やっぱりあの王都に行った時の飯は忘れられないってよ」
料理のほうは今でも続けている。というより、今では家事をするというよりも趣味となっている部分が大きい。この世界は娯楽が少ないから、自然と凝った料理を作りたくなってしまうのである。
「にしても懐かしいな。前回はいろいろとあったが、今ではいい思い出になってるよ」
「まあ、あんときはいろいろとあったからな」
「今回はしっかりと準備を整えてきているから大丈夫だ。一応フロラの力で護衛部隊の中によからぬことを考えている者はいないことは確認したが、それでも警戒はしておかないとな」
「常に警戒は怠らない」
残念だけれど、その可能性も考えなければならないよな。聖男の障壁魔法が無敵ではないように、フロラの精霊による嘘を見破る能力を無効化する能力があってもおかしくはない。俺も含めてエルミーたちも今回はかなり警戒しているようだ。
そんな俺たちの警戒をよそに無事今日宿泊予定の場所に到着した。
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