第127話 再びの王都


「ソーマ殿、例のポーションの効果が確認できましたぞ」


「えっ、本当ですか!」


 ミルネさんとジェロムさんやみんなと街で遊んだ次の日、いつも通り治療所へ行くとターリアさんから連絡があって、冒険者ギルドへ呼ばれて話を聞いている。


 どうやら俺がリカバーの魔法をかけた病気を治すポーションを誰かに試したらしい。


「はい。先日の事件でソーマ殿を襲った闇ギルドの者で、現在は鉱山で強制労働を行っていた犯罪者のひとりがちょうどひどい咳の出る病を患ったようでしてな。傷を治すポーションでも治らなかったので例のポーションを試してみたところ、咳が止まったようです。今のところは副作用もありません」


「……なるほど」


 どうやら俺を襲った闇ギルドのやつで人体実験をおこなったようだ。なんとも複雑な気持ちだが、とりあえずは例のポーションの確認ができて良かった。


 ……たぶんこの時代だと刑期を短くするなどといった司法取引なんかもないんだろうなあ。とはいえ、善良な市民で例のポーションを試すようなことがなくて良かったといえばよかった。


「あとは回復ポーションと解毒ポーションのように効力がどれくらい続くのかとその効力も確認しておきたいところですよね。それとどんな病にも効果があるのかは気になるところです」


 ヒールやキュアを込めたポーションの効力は1ヶ月ほどすると少しずつ効力が落ちていくことが確認できている。また、ヒールを使用した者の能力によってポーションの効果が左右されるとこも検証によって確認されている。


 王都で国王様とデーヴァさんが行ってくれた検証によって、通常の治療士がヒールを込めたポーションと男巫であるデーヴァさんがヒールを込めたポーションではその効力が異なるようだ。


 おそらくだが、ジョブが聖男である俺がヒールを込めたポーションの効力はさらに高いかもしれないので、それについても王都へ行った時に検証したいところだな。


「そうですね。こちらのポーションにつきましては捕らえた犯罪者で病気にかかった者や重病人がおりましたら、引き続き検証を続けていきましょう」


「はい。一応今後の検証は俺がすぐに動けるときにお願いします」


 たとえ例のポーションによって病人の身体に悪影響があったとしても、俺が直接リカバーの魔法をかければ治せる可能性が高いからな。


「なるほど、承知しました。今後検証を行う際はソーマ殿が動ける時にしますね」


「よろしくお願いします。とりあえずポーションの効果も確認できてよかったです。それとやることもひと通り落ち着いて、また王都へ行こうと思っていますので、手配をお願いしたいと思います」


「承知しました。同行者につきましては問題がないようでしたら、以前と同じティアのパーティとポーラ殿やイレイ殿に頼もうと思っているのですが、いかがでしょうか?」


「ええ、もちろん大丈夫ですよ。むしろ可能なら以前お願いしたみなさんにお願いしたいです!」


 以前王都まで護衛でついてきてくれたティアさん達のパーティと馬車の御者であるポーラさんとイレイさんの護衛や御者の腕はまったく申し分ないし、以前に一緒だったから信用もあって安心できる。


 他の新しい人よりも、みんなのほうがこちらとしてもありがたい。


「なるほど、承知しました。そのように手配させていただきます。また、先日の事件のこともありましたので、こちらからの護衛とは別に王都からも護衛も一緒になるかと思われます」


「ああ~やっぱりそうなっちゃいますか」


「ええ。やはりこの国で2人目の男巫となりますと、狙われてしまう可能性が今まで以上に上がると思われます。下手をすれば国外の者からも狙われる可能性もありますからね。護衛が多くなって窮屈になってしまうという気持ちも分かりますが、ワシも王都からの護衛を付けてもらうことには賛成ですよ」


 前回王都に向かった時は俺がまだ一介の治療士としか知られていなかったが、今はこの国で2人目の男巫として認知されている。悪徳治療士であったアグリーの脅威は去ったが、それとは別の脅威が出てきてもおかしくはない。


 俺やエルミー達がいくら鍛錬して力をつけて強くなったとしても、どうしても個人の力には限界がある。それこそ多勢に無勢となってしまうので、防ぐにはこちらも数を増やして対抗するしかないからな。


「分かりました。よろしくお願いしますとお伝えください」


「はい、承知しました。王都から連絡があり次第、こちらでも日程の調整をおこないますね」


「いろいろと大変ですが、よろしくお願いします」


 例の事件が起きた際、大きな商店だけでなく騎士団の一部でもアグリーと繋がっていた者が大勢いた。他にも闇ギルドがでてきたりと、事件の直後のアニックの街はいろいろと混乱した。


 そこを街の顔でもある冒険者ギルドがうまく貴族や騎士団や商店の間に入ってうまくまとめてくれたおかげで、事態はある程度迅速に収束できた。これもターリアさんがしっかりと約束を守って、事態の収拾に務めてくれたおかげである。


 さらにターリアさんに負担をかけてしまうのは申し訳ないが、頼りにさせてもらうとしよう。

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